第34話 護身術
22:53分
順調にグリミー大森の一回目の“横持ち”と発送が終わった。
それにしても蒸す。湿度が高い。
そういえば、車検の代車としてあった最新式のフォークに乗ったら、後ろに誰もいないし、何もないのにセンサーが反応した。
“妖怪 湿気” センサーには反応するらしい。
「仁田さん、OKですよね。」
「はい、そうですね。」
二人は休憩室に行った。やっぱり涼しい。
「仁田さん、大沢君から連絡行ってますね。来週の火曜からパレットの組み換えはしないようにしますから。」
と、草加部は昨日下書きした書面を見せた。仁田は読み出した。
“清書は土曜の夜にすれば間に合うな。”
“あとは、備えだよな。”
仁田さんが読み終えた。
「これを、火曜の朝礼で所長から説明してもらいます。」
「わかりました。」
「その日からグリミー達が反発勢力になる可能性がある。グリミーをなめたらヤバい。そこで今日から護身術を訓練します。」
「そうですね。必要ですね。」
「胸ぐらを掴まれた時、首を絞められた時、殴りかかってきた時、銃を突きつけられた時、ナイフで襲ってきた時、鉄パイプで襲ってきた時などを想定して、今日から訓練を毎日5分ずつ行います。」
草加部は続ける。
「まず、今日は胸ぐらを掴まれた時の訓練です。仁田さん、ここに立ってもらえますか。」
「こうですか?」
「はい、胸ぐらを掴んできて下さい。」
仁田は、草加部の胸ぐらを掴んできた。
と思ったら、
草加部が掴んだ手を両手で固定したかと思った時には右足を後ろに45度回し上半身も綺麗に真横を向いた。その時、草加部の左肩が胸ぐらを掴んだ腕の肘あたりに当たる。
仁田さんは掴んだ手が捻られた感じになりよろける。「うわー」
「こういう感じです。気を付けなければいけないことは怪我をさせないようにすることです。よろけた隙に逃げればいいです。戦意を喪失させれば成功です。」
「難しそうですね。」
「日々鍛錬です。じゃあ仁田さん次は私が掴みますから。」
草加部は掴んだ。
仁田さんは、両手で掴んだ手を捻るように固定した。
「仁田さん、そうです。そしたらこのまま体を下っ腹を中心に回転してみて下さい。」
仁田は、言われるままにやってみた。クルッと。
草加部がよろけた。
「OKです。そしたら逃げて下さい。じゃあもう一回やりましょう。投げようとしないで、固定して回転することに意識して下さい。」
草加部が掴む。仁田は固定して回転する。
「OKです。今度は逆の手で掴みます。逆を練習しましょう。」
逆も同じように練習した。
「今日はこれで終わりにしましょう。疲れちゃいますから。」
「これを、毎日。休みの時は?」
「イメージトレーニングして下さい。想定して反応して逃げることが重要なんです。」
「わかりました。」
「じゃあ、秘密裏に情報収集はお願いしますね。」「わかりました。メールで連絡します。」
「それと、もう一つあるんですけど、構内にクワガタ虫がいたら、それを子供にプレゼントするってどうですか?ナイトワーカーズとしての活動として。小説の感想を書いてくれたらプレゼントみたいな。ただ、我々がナイトワーカーズというのは知られてはいけませんよ。バレたら、あからさまに反発されて、改善がやりづらくなりますから。」
「子供が小説読みますか?」
「グリミー宇宙からの襲来だよ。SFだよ。読まない?」
「俺は読まない。」
「じゃあ、お母さんに頑張ってもらおうよ。クワガタもらえるんだから。」
仁田が考えてる顔をしたまま言った。
「アイデアはありですよね。ただ無理くりすぎる。」
「認める。」草加部はあっさり認めた。
「でも、クワガタをあげるのはありですよね。」
「ありです。クワガタでグリミーを世に広める。もう少し練ってみましょう。」と仁田は真剣に言った。
「情報の共有だけはお願いしますね。」と、草加部は最後はまとめたかのようにした。
草加部は喫煙所に向かった。
“パレット組み換えはしない(第一弾)”
“線引きの全体像をつくる。”
“情報収集。(屁理屈の内容分析)”
“カケルさんへの仕返し。”
“グリミーのキャラクター化。”
“クワガタ虫。”
“ダイエット。”
よしっ!同時進行だ。
草加部はタバコを吸い終わり、次の北日本便がくるまで、構内をウォーキングすることにした。
ーつづくー
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