第19話 チンピラ一味の残党とデータの活用。
草加部は、タバコを消して休憩室に向かった。
さっきまでいた、トサカ頭のグリミー3号こと能見の姿はなかった。グリミー沢木の手伝いが終わったのだろう。
沢木は、担当のホームにあるパレット物をハンドリフトで整理していた。沢木は潔癖症と言ってもいい。自分が納得できるように整理していた。
そのホームの床に、能見が捨てたタバコが二本あった。
沢木は潔癖症でも、こういうものには目を向けない。”管轄外”のことには興味を示さない。他人がやったものは関係ない。こういう人だ。
草加部は、タバコの吸い殻が目に入ったが拾うのが
「この会社は大丈夫か?」と思いながら休憩室に入った。
4:06分
配達用のトラックのエンジンがかかった音がした。いつもこれくらいの時間だ。
高津は、グリミー側なのか半グリかなのか、草加部には判断できなかった。
昔、あのチンピラのような風貌の配達ドライバーの一員として、好き勝手にやっていたらしいが、誰に感化されたものでもなく、作業員へのハラスメント的な言動や態度はあったが、それは高津自身の目で、高津の基準で仕事をしていないカケルさんやグリミーに対してのものだった。カイさんに対しても、チンピラ一味と行動を共にしていた名残で、作業を押し付けるなどきつく当たることはあったが、それは繁忙期や物量が多く、本当に助けてもらいたい時のSOSのように見えていた。グリミー4号の大森、3号の能見、5号の沢木、1号の嵯峨、2号の村上のようなグリミー化の類とは違うと思う。意見や改善の提案があれば、ズレている内容のものでも気にせず、所長へ直接言うタイプだ。だが、カイさんを自分の都合のいいように使おうとする傾向があることも否めない。だが、グリミーはチンピラ一味に対して、”自分はやっている”と”媚を売り”、”自分に矛先が向かないようにするため”に夜勤をターゲットにして貶めてきた。高津は自分基準による自分の判断で動いている。
チンピラ一味の残党であって、グリミーの一味ではない。と草加部は考えている。
大沢は、パソコンで北日本便が集約店を何時に出たか調べていた。
「夜勤は楽でいいよなー!キー」
「キー俺なんかこれから配達に行くんだぞ。コッコッコッコ」と、
グリミー大森とグリミー能見が話しているのが聞こえてきた。聞こえるように言っているのだ。
”どこに配達に行くの?”
パソコンの前は事務所だ。
上半分がガラス張りになっている壁一枚のところで、グリミー大森と能見が椅子にのけ反りながら、いつものように“グリミー会”を開いていた。
「ちょこっと仕分けして、うだうだしてればいいんだからな~ウキーコッコッコッ」
「だって、俺がきちんと分けてやってんだぞキー、おっせえよなギー」
いつものことだ。
「3:46分に集約店を出ています」大沢が言った。
「そうすると4:25分くらいか」
「どれくらい積んでる?」
大沢がクリックして、画面が変わった。
「結構積んでるな。パレットもあるな。」と草加部が、頭の中で予想を立てる。
高津が、事務所に入ってきた。「ざーす。」
「おはようございます。」
高津は、タイムカードを通しホームに出た。
※※※
昔は予想が立てられなかった。というか調べ方が分からなかった。
グリミーこと東藤が一番の先輩だったわけだから当前だ。
その場その場の行き当たりばったりで、トラックが到着して観音扉が開いて、そこで積んできた量がはじめて分かる。
空の台車がどれくらい必要か、あとどれくらいの荷物がくるのかが全く分からず、来たとこ勝負だった。
毎日が行き当たりばったり、混雑、台車が足りなくなるから台車を空ける作業、ゴタゴタになるのは当たり前。でも、グリミーは改善をしようともせず、いつものように事務所のせいにし続けて、年月だけが経過した。
”ウキィー。事務所がおかしいんだ。事務所が報告に来るのが本当なんだ。会社がおかしいんだよ。キー”
と、事あるごとにグリミーは言っていた。
これがグリミーの常套句だった。
草加部が入社して3年ちょっと。これまでの不毛な繰り返しに、”おかしいのは東藤さんじゃないのか?”と気づくのに時間はかからなかった。
自分で何とかするしかないと思い、事務所の人にデータ検索の仕方を教えてもらい、今ではここまで調べて活用できるようになっている。
草加部は、グリミーに言いたい!
”今は21世紀だぞ。うちだって全国レベルで大手と言われている上場企業だ。誰でも調べて活用できるように、休憩室にパソコンを置いてるんじゃねえのか?このシステムの開発費用だっで安くはないはずだ。お前が使えないだけじゃないのか?”
①グリミーこと東藤。
②グリミー3号になれなかったカケルさん。
(佐々 翔琉。同じ苗字の人がいるので皆はカケルさんと呼んでいる。)
③カイさん。(飼育 役三)
構内作業員全員が分かっていなかった。これは、グリミーの責任だと思っている。
草加部は、大沢君とダブルワーカーの仁田 良介には、このデータ検索を教えていた。本当は全員が出来るようにしたいと思っている。
※※※※
予想を立てた草加部は、「一つ一つやろう。」と大沢君に言った。
「はい。」
「じゃあ、2班の荷物を降ろしちゃおうか。大沢君、チョコレート食べる?」
「はい、頂きます。」
大沢君はニコニコしてチョコレートを受け取り口に入れた。
”うまい、この時間になると食べたくなる。”
二人は、”コの字”に向かった。
ーつづくー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます