トップ3圏外になったモテすぎ完璧女子が好きという言葉に過剰反応するのは気のせいだろうか?
遥 かずら
第1話 モテすぎる女子、陥落!?
「心底、彼女が羨ましい!!」
……などと、教室で叫んでいた俺の元には憐みの視線が集まった。そんな俺に慰めすらしてこない声をかけてくるのは、きまって女友達の北原つばきだ。
もちろん男友達もいるが、つばきが強い性格の女子なせいか男子友達は放課後くらいしか話さなくなってしまった。
それだけじゃなく、つばきの席が景色が良くていい風が吹き込んでくる窓側ということもあって、俺からこいつに話しかけている。
「あのさぁ……そういうの普通、こっちが思うことなんだけど」
「あーうるせーうるせー。モテすぎる女子を羨ましがるくらい、いいだろ別に」
「人気トップ3に入る女子に抱くこと自体感情の無駄遣いなんだけど? そこんところ、
友達以下友達以内……それ以上にも以下にもならない気楽な関係。
だからって、そんなの――。
「言い過ぎだ! そんなの理解してるっての! あ~どうしたら彼女のようになれるんだ~……羨ましがらないつばき! 俺にアドバイスをくれ」
「バッカじゃないの? そういうのはそこに見合う男じゃないと意味ないんだよ! つべこべ言わずに自分の席に戻れっての」
キツい。相変わらず。
「
「すっ、すみません!!」
廊下側の後ろの席にきちんと座るまで、クラス担任の厳しい視線に追われまくりである。
それはいいとして。
倉貴学園にはアイドル研究会なる者たちによる学年別人気ランキングのトップ3を決めてそれを専用アプリで密かに発表するという、よく分からないイベントがある。
それぞれ学年ごとに人気アンケート調査を密かにしているらしいが、俺は興味が無いので誰かのを見ているだけにとどまっている。
一年生から二年生に上がるまでに不動のトップ3と言われているのが、隣のクラスにいる
普通なら成績とかでトップ3が公式に発表されるが、生徒による人気ランキング調査ということもあって、大々的にはされていない。
……とはいえ、成績上位の生徒なので先生たちからも評判はいいようだ。
残念なことに俺は話しかけたこともなく話しかけられたことも無いが、すごい笑顔で話してくれる女子らしい。
すごい笑顔についてはつばきからでしか聞いたことが無かった。しかし今日に限って隣のクラスからわざわざ本人が来ている……もとい、正確にはクラスの女子達が招いたことでその笑顔を間近で拝ませてもらっている。
三ヶ月ごとに出る人気アンケート結果が出る日でもあるので、その前祝い的なノリで隣のクラスから感謝の気持ちで来てくれているようだ。
彼女の周りには男女問わずに人だかりが出来ていて、俺は近づけそうに無い。
……それにしても、声も顔も可愛いしスタイルもいいんだな。
誰とでも話せるのも人気の秘密か?
「私が知る限り、クラスの半分の男子は彼女が大好きだと思う。もちろん他のクラスにも彼女のファンはいるけどね。あんたはファンじゃないの?」
児玉みゆに近づけない俺に対し、そこまで関心の無いつばきが呟いた。
「俺は羨ましいだけだぞ! ファンってのは違うだろ……そういうお前はどうなんだよ?」
「あの子は私の友達だけど?」
何だ、つばきの友達なのか。だから何だって話だが。
「そんなことより、どうしたらモテるんですかって訊いてくれば?」
「何でそこまでしなきゃいけないんだ。つばきが訊けば早い――」
「は? それこそ何で?」
「くっ……」
……モテすぎる女子とか、どうあっても勝てそうにないじゃないか。これが男子なら何か必死に努力すればモテる可能性がありそうなものなのに、女子が相手だとどうすることも出来ないぞ。
「ていうか、普通すぎるあんたがトップ3女子に羨ましがる意味が分かんないんだけど何で? 絶対付き合えそうに無いからって勝手に敵視するのはどうなの?」
クラスの女子たちの聞こえる会話をただ眺めていた俺に対し、つばきは俺に厳しい言葉を投げてくる。
「そりゃあ、モテたいからに決まってる! 敵視なんてしてないぞ」
「へ~。どうでもいいけど児玉みゆのこと、好きなの?」
「……ん? 何で?」
「だってやたらと気にしてるし」
俺も一度はモテすぎてみたいって思ってるだけで、そもそも話したことが無いトップ3女子を好きになるとか考えてもいなかったな。
「俺は羨ましいだけでそんな感情は別に~……」
「ふ~ん。そういえば、今日結果出るんじゃなかったっけ?」
三か月ごとに集計しているアンケート結果は用紙などではなく、スマホでポチポチしてテキストスレッド……テキスレアプリだけで人気が左右される。
俺が気にする児玉みゆは、入学時から今に至るまでずっと人気トップ3を保持したままらしい……。
しかし人の気持ちは三ヶ月ごとに移り変わる可能性がある。休み時間に来ていた児玉みゆは確かに声も顔も可愛かったが、特別な感情は生じなかった。
昼休みになってアイドル研のテキスレ結果が届いたようで、一部男女たちがざわざわしている。
「――えぇ!? 圏外? トップ3に児玉みゆがいない!? 嘘……だろ?」
「トップ3圏外ってどうして~!! 可愛いのに~」
「嘘嘘嘘~! え~誰が上がったの……」
……などなど、どうやら不動のトップ3女子が圏外になったとかで騒がしい。あれだけモテすぎる女子だったのに陥落することもあるんだな。
「今頃落ち込んでるかもだし、健。あんた慰めついでに秘訣を訊いてくれば?」
「何で俺? 話しかけたことない奴が話しかけるのはおかしいだろ」
「その点なら心配ないと思う。だってあの子……とにかく放課後になったら学食へ行け! 以上!!」
何で放課後に学食?
もう何も食べるのも無くなってるだろうし、作る人もいないんじゃないのか。
――しかし結局つばきに言われるがまま、学食に来てみた。
いた。がらんとした学食にどういうわけか児玉みゆがいた。しかも購買も終わっている時間なのに、一人で何かを食べている。
落ち込んでいるようには見えないけど……話しかけるチャンスではあるな。何か食べてるのは多分ケーキっぽい。それで話しかけてみるか。
俺が来たことに気づいているっぽいが、あっちから声なんてかけてこないだろうし。
「ど、ども~! ケーキ美味いっすよね」
食べているのはショートケーキだな。学食メニューなんて気にしたことないけど、デザートがあったのか。
「うん。美味しい」
「あれ、苺だけ避けてるみたいだけど、好物は一番最後に食べる派?」
「何となく」
「……そ、そうだよね」
やばい、話が続かない。何を話せというんだこれは。ケーキを食べてるからって延々とケーキネタを続けるのは無理がある。
だからって、つばきが言っていたモテ秘訣なんて訊ける雰囲気じゃないぞ。
「…………」
おぉ、やばいぞ。黙々とケーキを口に運んで俺に見向きもしてくれないじゃないか。
何か言わないと何か……。
「あ、そ、そういえばケーキの他に好きな食べ物ってあったりする?」
「すっ……!?」
「え? そそ。好きな食べ物は何か――」
「き、急に言われても、本当にあの、困るから……だからえっと、さ、さよなら!!」
「ええええ!?」
まさか、もう詰んだ?
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