第47話 女子高生、友達の過酷な運命にもの想う。

 わたしたちは、ロカさんの運転するキャンピングカーで羽田空港に向かっている。今は首都高速湾岸線だ。


「……と、言う訳なの」


 ササメさんは、事態が全く飲み込めていなかった、わたしとおじぃちゃんに、時系列にそってとても解りやすく説明をしてくれた。


「そうだったんだ……」

「ううう、六花りっかちゃんがそんな運命の元に生まれておったとは……わしともあろうものが、全く気づかんかった」


 わたしは言葉を失い、おじぃちゃんはむせび泣く。

 六花りっかの境遇を聞いて、改めて六花りっかの性格が腑に落ちていた。


 なんていうか……刹那的? 激強な承認欲求しかり、配信コスチュームの過激な見せパンしかり。六花りっかのちょっと生き急いでいる感じがずっと気になっていた。

 わたしも、六花りっかの境遇に生まれたら、六花りっかみたいな性格になっていたかも。あ、でもさすがにあんな過激な見せパンは履かないか……。


「アタシは平気だよ。生まれたときからずっと聞かされていたことだから、自分の中では当然のこととして受け取っていたし。でも、今は違うよ! 絶対に脈龍を倒して、アタシの代で贄の巫女なんてくだらない風習を終わらせてやるんだ!!」


 運転席から、ロカさんがあいづちを打つ。


「その意気だよ、六花りっかちゃん! アタシも、久々にめっちゃ腹立たしかったもん! 特に六花りっかちゃんのお父さん!! 血のつながっている娘を何だと思ってるのよ!!」


 ロカさんは、キャンピングカーのアクセルを思い切り踏み込んだ。急速な速度上昇に、後部座席のリビングが激しく揺れる。あ……ロカさん、ハンドル持つと性格が変わるタイプだ。


「こ、こらロカ! 運転が乱暴すぎる!! ダンジョンに行く前に交通事故で全滅なんてゴメンだぞ!!」


 田戸蔵たどくらさんのヤジが飛ぶなか、六花りっかが、


「そーいえば、このメンバーで運転免許を持ってるのって、ロカちゃんしかいないの? 田戸蔵たどくらさんとか、いかにも車好きそうなおじさんって顔してるのに」


 と、かなり失礼な質問をする。


「俺は20代のときに運転免許を返納したんだ」

「? 20代のとき?? なんで???」

「俺は左手が義手なんだ」


 田戸蔵たどくらさんは、左手に右手をそえると「カチリ」と小さな音とともに、左手の義手が外れる。

 わたしは、本物とみがまうような精巧な作りの義手をみて質問をする。


「ダンジョンでの怪我ですか?」

「その前だ。若い頃にちょっとな。左腕を失った頃は不便で仕方がなかったが、今は義手の精度が上がったからな。なんの不自由もしていない」


 わたしの質問に答えながら田戸蔵たどくらさんは義手を装着していると、六花りっかが、再び質問をする。


「あれ? 今って義手でも運転免許とれますよね? なんで取り直さなかったんですか?」

「……金が無かったからだよ」


 田戸蔵たどくらさんは仏頂面で返答した。


「ええ!? でもでも、めっちゃ高級そうなマンションに住んでるのに、なんでお金なかったんですか? わかった! 田戸蔵たどくらさんはササメさんのヒモ……もがもが!!」


 わたしはとっさに、不謹慎がとまらない六花りっかの口をふさぐ。

 つくづく思うけれども、この娘って人との距離感の取り方が致命的にバグっている!


 わたしは痛感した。


 六花りっかの性格は、生まれ持ってのことだ。わたしがおんなじ境遇だったとしても、絶対にこんなに厚かましい性格にはなれないもん。

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