第26話 女子高生、おじぃちゃんとダンジョンへいく。

 土曜日の9時50分、わたしは裏鬼門うらきもんのダンジョンの行列に並んでいる。今日はジャージ姿。つまりダンジョン配信はおこなわない。一緒にならんでいるのは、同じくジャージ姿のおじいちゃんだ。


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 ササメさんの家(というか、家のすぐそばの非常階段に直結している)裏鬼門うらきもんのダンジョンで、ロカちゃんの実力を目の当たりにしたわたしは、ロカちゃんへの弟子入りを志願した。


「んー。アタシ直感型だし、教えるのが下手だからなー。そうだ! おじさん、一子かずこちゃんの師匠になりなよ!」

「ええ? 俺が!?」


 ロカさんに名指しされた田戸蔵たどくらさんが困惑の表情を浮かべる。


「アタシに探索のイロハを教えてくれたのはおじさんじゃない。おじさんは、絶対を教えるセンスがあるよ」

「うーんどうだろう。映像を見る限り、一子かずこちゃんはすでに基礎ができあがっているからな。今から師匠を変えるのはあまりおすすめしないな」

「え? わたしには師匠はいませんけど」


 わたしが首をかしげると、田戸蔵たどくらさんはあきれた顔で返事をする。


一子かずこちゃんには、これ以上ないくらいの師匠がついているじゃないか。『最上の探索者』犬飼いぬかい一心いっしん一子かずこちゃんに剣術を教えたのは、君のおじいさんだろう?」

「あ……確かに」

一子かずこちゃんは免許皆伝の腕前だろう。ならば剣術ベースの戦い方は変えるべきではない。剣術をベースに『創造の星』を付与する戦い方を磨くべきだ」

「はい。わかりました!」

「はいはいはい! アタシも師匠欲しいんですけど!!」


 六花りっかが会話にわりこんでくると、田戸蔵さんが返答をする。


「それなら六花りっかちゃんは、俺が面倒を見ることにしよう。六花りっかちゃんの場合、まずは基礎体力をつける必要がありそうだからな。みっちりと基礎が固まったら、弓使いの師匠を紹介することにしよう」

「はい! ありがとうございます」


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 そんなわけで、わたしと六花りっかは今日は別行動。

 わたしはおじいちゃんと裏鬼門うらきもんのダンジョンに並んでいる。

 六花りっかの方は、田戸蔵たどくらさんのマンションの非常階段から通じているダンジョンで修行をするらしい。


(なんだ? あんな爺さんがダンジョン探索??)

(さすがに無理じゃね?)

(いや、でも武器持ってるな。両手持ちのバスタードソード)

(そんなまにあっくな武器でだいじょうぶかw)

(小学生っぽい孫も一緒だから、さしずめ子守りってところじゃね)

(いや、年齢的に介護だろw)

(介護ダンジョン探索ww)


 うーん、おじいちゃん来年で70歳だもんなぁ。こんなおじいちゃんが剣術の達人で、ましてや『最上の探索者』と呼ばれる伝説の人物だなんて、まわりの人は想像もできないだろう。

(あと関係ないけど、小学生に間違われたのは地味にショック)


 わたしとおじいちゃんは、周囲から好奇な目でみられながら受付を通り抜けると、おじいちゃんは第七層のダンジョンの魔法陣へと進んでいく。


「ちょっとちょっと、おじいちゃん、そんな深い階層に行って大丈夫?」

「大丈夫じゃ、問題ない。ここにでるのは、最大でも2メートル級。お前の修行にはもってこいじゃわい」


 ううう、おじいちゃん、道場だとあんなにやさしいのに、ダンジョンではずいぶんとスパルタだ。


 あたしはビクビクしながら、おじいちゃんと一緒に第七層に通じる魔法陣に入って、ダンジョンへと転送された。



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