第22話 女子高生、専門家とダンジョンに移動する。

「えええええええぇーーー!!」

「えええええええぇーーー!!」


 お母さんくらいってことは40代!?

 わ、若過ぎる。


「ササメさんは、長年ダンジョンの最下層の監視員をしてたの。ダンジョンの最下層はマナの濃度が高いから、強力なアンチエイジング効果があるんだよね」

「だぁだぁ!! だだぁだぁだぁ!!」

「だあだあ!! だだあだあだあ!!」

「たぁたぁ!! たたぁたぁたぁ!!」


 わたしたちがササメさんの若さに愕然としているのを察したロカさんが説明をしてくれる。三つ子ちゃんたちも、ロカさんのマネをしてなにかを説明している。


「ササメさん、どっからどう見ても20代ですよ!!」

「うんうん。モデルさんみたい」


 すごいな、ダンジョン最下層のアンチエイジング効果。あ、でもダンジョンの底にずーっと居るのはつらい。スマホの電波の届きそうにないし。

 わたしたちが、ササメさんの若さと美貌で興奮していると、ササメさんが困り顔をする。


「わたしのことはいいでしょ。今日の主役は一子かずこちゃんと六花りっかちゃんだもの」


 そうだった。この前、裏鬼門うらきもんのダンジョンで起こった、不可思議な現象を解明してもらうんだった。


一子かずこちゃんと六花りっかちゃんの配信動画は拝見させてもらったわ。確かに、黄色いシェールストーンであんな現象がおこるなんて、わたしも初めて見たわ」


 そうなんだ。シェールストーンの専門家から初めてみると言われると、自分たちがレア現象を引き起こしたことを改めて痛感する。


「黄色いシェールストーンは、本来、生命に作用するの。黄色いマナを体内に取り込むことで一時的な身体向上効果が発生するのよ」

「へぇ、そうなんですか!!」


 六花りっかが驚きの声をあげる。


「栄養ドリンクの『イエローボア』のCMで『マナパウダー1,000mg配合』って宣伝してるでしょ。あれは黄色いシェールストーンから抽出したマナをつかっているの」

「他にもあらゆるサプリメントには、ほぼ黄色いシェールストーンから抽出したマナを使っていると言っても過言ではない」


 ササメさんの説明に、田戸蔵たどくらさんが補足をいれる。

 そうなんだ。わたしたちが知らないだけで、すっかり日常に溶け込んでいるんだな。


「でも、そんなに色んなところで使われているのに、どうしてダンジョンでは使えないんだろう」


 六花りっかの素朴な疑問に、田戸蔵さんが答える。


「含有量の問題だよ。黄色いシェールストーンには『イエローボア』100個分のマナが凝縮されてある。よっぽど身体を鍛えておかないと、反動で丸一日は寝込んでしまう。だから量産モデルの武器では、黄色いシェールストーンが砕けないようにカートリッジに細工を施しているんだ」


 そうだったんだ……わたしは、田戸蔵たどくらさんに質問する。


「わたしと六花りっかが砕いた巨大なシェールストーンって、すっごくおっきかったじゃないですか。あれって、通常サイズのシェールストーンより、たくさんマナがつまっているんですか?」

「ああ、あのサイズなら、少なく見積もっても通常の20倍のマナが凝縮されてあるだろう。そんなエネルギーを吸収してしまったら、身体能力の向上についていけずに深刻な後遺症がのこるはずだ」


 そうだったんだ。もし、通常の身体能力向上効果が発動していたと思ったら……ゾッとする。


「さて、そろそろ本題に戻るわよ。今日、一子かずこちゃんと六花りっかちゃんに来てもらった理由はふたつあるの」


 ササメさんは、左手の指を2本立てる。


「ひとつめは、一子かずこちゃんと六花りっかちゃんの適正能力を確認すること。もうひとつは、ダンジョンでの生配信で起こった現象の再現性をとること。今からダンジョンに行って確認するわ」

「わかりました。ここからだと、一番近いのは裏鬼門うらきもんのダンジョンですよね!」


 わたしの言葉に、ロカちゃんがニヤリと笑って首をふる。


「それが違うんだなぁ。行こう、おじさん」

「俺は、この子たちの面倒を見るよ。今日はヒサメと行ってくれ」


 田戸蔵たどくらさんがササメさんを見ると、ロカさんはうなづいた。


「あ、そっか。そうだよね。それじゃあ、一海かずみちゃん、海二かいじくん、三海みつみちゃん。おねえちゃんとお母さんは、ちょっとおでかけするね。おじさんと一緒に大人しく留守番してね」

「だぁだぁ!! だだぁだぁだぁ!!」

「だあだあ!! だだあだあだあ!!」

「たぁたぁ!! たたぁたぁたぁ!!」


 三つ子ちゃんが、ちっちゃな手をおきく振って、わたしたちを送ってくれる。


「さあ、行きましょう」


 そう言うと、ササメさんは玄関を出て、非常階段へと向かう。


「?? あの、どこへ行くんですか?」

「もちろん、ダンジョンよ」


 六花りっかの質問に、ササメさんはちょっとイタズラっぽく微笑むと、非常口のドアノブをにひねってドアをあけた。


 すると……。


 ドアの向こうには、見渡す限りの赤い大地が広がっていた。


 え? どう言うこと??

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