第12話 女子高生、黄色いシェールストーンを武器として使ってみた。
魔法陣を抜けると、そこは一面の草原地帯だった。
つまり、ダンジョンライセンス未所持のわたしたちが探索できる、最下層エリアってことだ。
「よし、SNSの告知もすんだし、始めるよ!! 今日の配信でチャンネル登録者数1万人超えを目指すんだから!」
「はいはい」
いくらなんでもハードル高すぎじゃない??
そう思いながら、わたしは、しぶしぶ
「本番まで5秒前ー、3……2……1……はい! 再び始まりました! 『JKエクスプローラー!』いつもニコニコはなまる笑顔ロゥファでーす♪ そしてぇ」
「ワンコです! ワワわゎーーーーん!!」
うん。今日は可愛くやれた気がする。
わたしが、自己マンにひたっているあいだも、
「早速コメントありがとう! お、ワンコちゃんカワイイだって!! ギフトも届いてる!!」
「え? ホントに??」
「ホントホント♪」
ホントだ! しかも東京タワー!! え? 本当に??
「SNSでアンケートとったんだけど、アタシよりワンコ派がちょっとだけ多いんだよねー。ま、一番多かったのは『ふたりとも尊い』だったけど。
お、ぞくぞくとコメントが着てるね。『ふたりがイチャイチャしてるのが最高の癒やしです』『ダンジョン配信以外でもふたりの掛け合いがみたい』だって」
「それでは、今日の企画を発表しまーす!
題して『黄色いシェールストーンを武器として使ってみた』ぱちぱちぱちー」
は? ぽかんとしているわたしをよそに、
「みんなも知っているとおもうけど、シェールストーンは、赤、青、緑、白、そして黄色、全部で5色あります。
赤は炎を生み出して、青は冷気をあやつります。緑は風や雷を生み出して、白は金属を強化します。でも、黄色だけはなんの効果もなくって、交換所に預けるしかできません」
うん。知ってる。小学校6年のときに習ったもん。
てか、5色のシェールストーンの効果は、いまや世界の常識といっても過言じゃない。
「でも、本当にそうなんでしょうか? だからぁ、今回は、前回の配信でゴールデンカナヘビからゲットした、黄色いシェールストーンをこのクロスボウで射抜いてみようと思います!!」
あ、なるほど。だから今日は武器を変えたのか。
「ちょ、ちょっと、ロゥファ!! それ、砕いちゃうの?? もったいない!!」
あんなおっきなシェールストーンなんて見たことがない。お金に交換をすれば10万、ううん、50万円はくだらないはずだ。
「耐えるのよワンコ!! これも全てはバズりの為なのよ!」
あ、ダメだ……
「それじゃあ、早速試してみましょう!! 最初にクロスボウの弦を引きます!」
そう言うと、
「ふん!! うぬぬぬぬぬぅぅぅぅぅぅ……はぁはぁ。はぁはぁ。ダ、ダメだ! ワンコ手伝って!!」
「はいはい」
わたしは、
「はぁはぁ。つ、つぎは、黄色の巨大シェールストーンをセットします!!」
「ふん!! うぬぬぬぬぬぅぅぅぅぅぅ……はぁはぁ。はぁはぁ。ダ、ダメだ! ワンコ手伝って!!」
「はいはい」
わたしは、
「なにこれ? めっちゃ重いんだけど!!」
黄色の巨大シェールストーンがめっちゃ重くて、なかなかクロスボウが上がらない。矢じりの先端にセットしてるためだ。
支点(クロスボウ)と力点(わたしと
「よ、ようやく持ち上がった……!」
「はぁはぁ。つ、疲れた」
わたしたちは、どうにかこうにかクロスボウを構えると、十数メートル先でぼけーっとしているキノコ型に照準を合わせる。
このまま引き金をひけば、矢はシェールストーンを砕いてキノコ型へと飛んでいく。
赤や青のシェールストーンなら、炎や氷をまとった矢がとんでいくのだけれども、黄色のシェールストーンだとどうなるか、全く予想ができない。
わたしと
「5・4・3・2・1……飛んでけー!」
「5・4・3・2・1……どうにでもなれー!!」
ピシッバキバキ……バキ!
クロスボウの矢は、黄色い巨大シェールストーンにヒビを入れる。そして、
「え、なになに??」
「ひゃゃああ!」
ギュウゥゥゥゥゥゥゥッン!
ものすごい反動を受けたあたしたちは、クロスボウをまともに持っていられなくなる。矢は、まばゆいばかりの黄金色の閃光となって、キノコ型のはるか上空を通過した。
「あーあ、外しちゃった……」
「ちょ、ちょっとロゥファ! 見てあれ!!」
矢をはずしてしょんぼりとする
バチ! バチバチッ! バチィ!!
黄金色の閃光が、なんにもない空中で、なにかに衝突している。
「え? え?? ちょっちょとワンコ、どういうこと!?」
「わたしだって聞きたいよ! 本当にどういうこと?!?!」
バチ! バチバチッ! バチィ!!
ピシッ……ピシッ……ピシッ。
閃光の周囲がひび割れている!? どういうこと??
ピシッ……ピシッ……ピシッ……バリーーーーーーーーーーーーーーーン!!
閃光の衝突に耐えかねた空中が、まるでガラスみたいにくだけちると、わたしたちは、ダンジョンの入口に立っていた。
広い広い草原エリアで探索していたたくさんのお客さんが、入口にぎゅうぎゅうにひしめきあっている。
「え? え?? ええええ????」
「なんだなんだ??」
「俺達、第三層の草原エリアにいたはずだよな??」
「なんで、外に出てるんだ??」
「わ! 押すなよ!!」
「しょうがないだろ!! 第三層にいた連中が、みんな入口に飛ばされたんだからさ!!」
もしかしてだけど、これってわたしたちが、クロスボウで黄色いシェールストーンを射ったから????
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