第11話 女子高生、ふたたびダンジョン配信をする。

 土曜日。わたしは、電車で待ち合わせ場所の裏鬼門うらきもんのダンジョンへ向かう。

 服装は、上下ジャージ。でもその下にはオレンジのへそ出し衣装が隠れている。(スカートはしわになるので現地で履き替える)


 今日のおべんとうは、おにぎりとからあげ。

 育ち盛りの女子はガッツリ系なのだ。


 最寄り駅のうしとら町まではあと10分くらい。

 わたしは、スマホで動画アプリを立ち上げて、六花りっかのアップした動画をチェックする。


 『ロゥファとワンコのJKエクスプローラー』と書かれたチャンネルには、すでに5000人近いチャンネル登録者がいる。


 チャンネルは、わたしと六花りっかが初めて裏鬼門うらきもんのダンジョンに挑戦する一週間まえから立ち上げられていて、六花りっかによる、ダンジョン配信者になるって宣言や、コスチュームお披露目、今どきの女子高生のバズアイテムの説明動画とか、視聴者からの質問に答える動画なんかもある。


 でも、それらはどれも1000行くかいかないかの再生数で、再生数が爆発的に増えたのは、六花りっかが、見せパンをたくしあげ、わたしがゴールデンカナヘビを倒した動画だ。その再生数はじつに50万回。素人JKのわたしたちにはちょっと信じられない再生回数だ。


 コメント欄には100以上のコメントがついていて、コメント内容は、六花りっかの見せパンに対する言及や、ゴールデンカナヘビがドロップした直径10センチの黄色いシェールストーンの話題まで多種多様だ。


 この配信のあとも、六花りっかはひとりで毎日動画を配信して、どの動画も1万再生を超えている。


 六花りっかのヤツ、めっちゃ真面目だな。この情熱をほんの少しでも学業にむけたらいいのに……。


『次はうしとら町~、うしとら町~』


 わたしは、最寄り駅につくと、改札に向かう。わたしと同じように、手に様々な武器を持ったスポーツウエア姿の親子連れやカップルが、ぞくぞくと改札に向かう。

 わたしの武器は、先週と同じ『ショートソード』だ。剣道の竹刀よりはちょっと短い。両手持ちの『バスタードソード』に替えてもいいんだろうけれど、正直、お金がもったいない。


 あきっぽい六花りっかのことだ、今は夢中になっているダンジョン配信も、いつ辞めてしまうかわからない。


 9時25分、あたしは待ち合わせ場所の『裏鬼門うらきもんのダンジョン』に行くと、六花りっかがすでに待ち合わせの場所で待っていた。


「おはよう、遅いじゃないワンコ!」

「もう、まだ9時半前なんだからいいじゃない……ん??」


 わたしは、口をとがらせているワンコが持っている武器に目を映す。

 先週持っていた、わたしとおそろいのショートソードじゃない。遠距離攻撃用のクロスボウだ。


六花りっか、武器変えたんだ」

「うん。やっぱ剣道やってるワンコに同じ武器じゃかなわないし。あと、ちょっと試したいことがあるんだよねー」

「試したいことってなに?」


 わたしは、六花りっかを問い詰める。


「えへへー。配信始まるまで、ないしょ!!」


 うう……悪い予感しかしない。


 わたしたちは、更衣室でコスチュームに着替えると、裏鬼門うらきもんのダンジョンに入場して第三層に通じる魔法陣へと入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る