第9話 女子高生、カリスマ配信者の動画を見る。
『発車します』
無機質なアナウンスとともにバスが走り出すと、
「ねぇねぇ、ワンコは見た? 昨日アップされたロカちゃんの最新動画」
「うん。今回もカッコよかったよね」
人気のガールズダンジョン配信者の動画を見ながら登校するのが、わたしたちの日課だ。
『L・O・V・E・L・O・K・A! さあ始まりました! ラブロカチャンネル!! ぱちぱちぱち~!!』
今日の登校のお供は、人気、実力ともにトップクラスのティーンのカリスマ、
艶のある白い髪の毛を、
『今日、アタシが探索するのは、
カメラがパンすると、一面の湿地帯と、40代くらいのADのおじさんが僅かにみきれて映り込む。
「(ひそひそ)すごいよねー。いきなり湿地エリアを攻略するなんて」
「(ひそひそ)うんうん、男性探索者でも湿地エリアのモンスターと渡り合える人って数えるほどしかいないもんね」
バスが走る中、動画を見ながらひそひそ声で会話をしていると、動画は再びロカちゃんを映す。
『ターゲットはもちろん、
ロカちゃんは、遥か遠くに見える、サイクロプス型に向かってさっそうと走っていく。コスチュームのジャケットには、ロカちゃんがイメージキャラクターを務める、清涼飲料水のロゴが移っている。
人気のダンジョン探索者は、スポンサー契約を結んでいるのが常識だ。ロカちゃんもすでに何社もの企業とライセンス契約を結んでいる。
「(ひそひそ)いいなぁ、企業タイアップ。あこがれちゃう。そうだ! アタシたちもタイアップする? 御神楽神社と犬飼剣道道場! 参拝客と入門生アップにつながるかもだし!!」
「(ひそひそ)いやだよ!! 自分ちの住所を背中に張り出しているようなものじゃない!!」
「(ひそひそ)えー? いい考えだと思ったんだけどなぁ……」
わたしたちが話している間も、ロカちゃんはサイクロブス型にどんどんちかづいていく。そして走りながら、30センチほどの白い棒を取り出した。
ロカちゃんの専用武器、高純度シェールカーボン製の指揮棒だ。
ロカちゃんはまるで踊るように指揮棒をあやつると、緑色の球体が彼女の周囲を回り始める。
『アップドラフト!!』
ロカちゃんは、緑色の球体に向かって指揮棒をふると、球体はみるみると緑色の竜巻に変化する。彼女は迷うことなく竜巻の中に飛び込んだ。
ビュウゥゥン!!
切り裂く突風音とともに、ロカちゃんは空中を高速移動する。
ビュウゥゥン!!
ビュウゥゥン!!
続けざまに2つの竜巻を作り出すと、ロカちゃんの飛行速度はさらにさらに加速する。あまりのスピードに、浮遊カメラが捉えきれないくらいだ。
『ぐぉお?』
超高速で近づきてくる物体に、サイクロプス型が気がつく。でも、もう遅い。完全にロカちゃんの射程圏内だ。
ロカちゃんは最後に1つ残った球体を素早く切り刻むと、指揮棒が激しい稲光をまとった全長3メートルほどの
『いっくよー! サンダーランス!!!』
ロカちゃんは電撃をまとった
バチバチバチバチ!!
『ぐぉおおおおおおおおおおおおおお!!!』
弱点の目玉を串刺しにされたサイクロプス型は、なすすべもなく仰向けに倒れ込むと、
ジャラジャラジャラジャラジャラジャラ……
赤、青、緑、白、そして黄色の、色とりどりのシェールストーンに変化した。
「(ひそひそ)きゃーーーーーカッコいいい♥♥♥♥」
「(ひそひそ)きゃーーーーーカッコいいい♥♥♥♥」
わたしと
「アイドル並みのルックスでめっちゃ強い!! やっぱロカちゃんはやっぱりサイコーだね♥」
「アタシ、絶対有名配信者になって、いつの日かロカちゃんとコラボ配信やるんだ」
わたしたちが、キャッキャとさわいでいると……ん? なんだろう。視線を感じる。
ふりむくと、優先席でこちらをガン見している
ひょっとして、
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