第6話 女子高生、ダンジョンでサンドイッチを食べる。

「スゴイ! スゴイ!! お手柄だよワンコ! さすが剣道道場のひとり娘!!」

「え……ほぎゃ!!」

「あ、ゴメン、ワンコ!」


 六花りっかが両手をあわせて肩をすくませる。


「ホント、すごかったよ! 逃げるゴールデンカナヘビを一刀両断!」

「ありがとう。最初の太刀を避けられた後、あきらめないでよかったよ」


 わたしは、笑顔でガッツポーズをすると、六花りっかの顔がみるみる青ざめていく。


 ? なんで??


「ワンコ! トップスやぶけてる!!」

「ええ、どこどこ!?」

「左側、下からビリッと!!」


 本当だ! トップスが下からほつれて破けている。きっとあの時だ。ゴールデンカナヘビを倒すために、むりやり腕を伸ばした時だ。バッチリ、ブラが見えちゃっている。


「きゃあああ!」


 わたしは急いで胸をガードすると、六花りっかが大急ぎであたしのジャージを肩にかけてくれた。


「ありがと……」

「本当にごめんね。コスチュームの生地、安物だったからさ……」


 六花りっかのやつ、めずらしく本気で落ち込んでいる。


「平気だよ。平気、ゴールデンカナヘビも倒せたし。ロゥファに比べたら全然恥ずかしくないよ」

「? どうして?? アタシのは水着だよ。恥ずかしいわけないじゃない。へんなの」


 六花りっかは、不思議そうに首をかしげる。


「ま、まあ、ロゥファが恥ずかしくないならいいけど……」

「そんじゃ、ゴールデンカナヘビがドロップしたシェールストーンを回収……ってなにこれ!?」


 六花りっかが拾った黄色いシェールストーンを見て、わたしも思わず声を出す。


「なにそれ? すっごくおっきい!!」


 普通、シェールストーンは直径3センチくらいなんだけど、六花りっかが手に持っている黄色いシェールストーンは直径10センチはゆうに超えている。


「ショートソードのカートリッジには、到底入りそうにないね」

「こんなのねじ込まれたら、壊れちゃうぅ!!」

「ダンジョン出たら交換所に持っていこっか」

「だね。こんなにおっきいシェールストーンなんだから、めっちゃ価値ありそう!」

「どうだろう? そんなことよりロウファ、そろそろおなか空かない?」

「もぐもぐタイムだね! いいよ!!」


 ダンジョン配信は、モンスターを狩ったあとに、ダンジョンの絶景を眺めながら食事をするのが定番になっている。

 キャンプ配信カリスマ、未蕾みつぼみミライさんがダンジョン配信で始めた『ミライのゆるダンチャンネル』が巻き起こしたブームだ。


 わたしたちは、草原を散策して、映えそうなポイントを探す。


「あ、あそこの岩の上なんていーんじゃない?」


 六花りっかが草原に横たわる巨大な岩を指す。

 確かに、あそこに登れは草原エリアをぐるりと見渡せそうだ。


「はい、サンドイッチ。ちゃんとロゥファのぶんも作ってきたから。ってか、どーせ何も持ってきてないんでしょ?」

「さすが、ワンコちゃん! いーお嫁さんになるよ♪」


 六花りっかは調子いいこと言いながら、いそいそとレジャーマットをひろげると、サンドイッチのフタを開けた。


「じゃじゃーん! 愛情たっぷり! ワンコ特性サンドイッチでーす! あっ、フルーツサンドがある♪ ひゃー萌え断❤︎」

「ロゥファが好きな桃でバラを作ったの。わたしのは夏みかんを使ったコスモス」

「すごーい、アタシたちのコス色とおそろじゃん!! めっちゃ映えじゃない?」


 六花りっかは、桃のフルーツサンドを顔の右に持ち上げて可愛くウインクする。


 そっか……六花りっか、わたしがオレンジ色が好きなのを知っていて、コスカラーをオレンジにしてくれたんだ。嬉しい。


「ほらほら! ワンコもポーズポーズ!!」

「うん!!」


 わたしは、夏みかんサンドを顔の左に持ち上げて六花りっかと左右対称のポーズをとると、


「いただきまーす!!」

「いただきまーす!!」


おもいっきりフルーツサンドにかぶりついた。

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