第2章 砂漠の姫No.9

「はぁ、はぁ、はぁ……どこまで、追いかけて来るだよ!」

「………」


ガルシア一行は“ヤバい!勝てない!”と思い、必死に逃げていた。ちなみに「………」は言いたくても言えない。鬼の形相で必死に逃げるガルシア以外の様子であった。


「コラ!逃げんな!」

「待てや!コラァ!」


と叫んで必死に追いかけてながら物が飛んでくる敵兵達。中には「あっ、ネコちゃん!」と逸らしてくる敵兵も。

“クッソ〜!おかげで俺達全員が目を逸らしたじゃねーか!危うく壁に激突だったぞ!”


しかし、体力差とは無惨なもので王族として模範なければならないと思い、鍛錬しているチャンドラ、王のためと捧げるアゼルと酒ばかり飲んでいた敵兵は徐々にではあるが差が出てきた。


「もう少し、逃げ切れたら休憩するぞよ!」


チャンドラは息切れしていたが、みんなを鼓舞するために叫んでいた。


「もう少しって、どのくらいだよ!」


その声はガルシアだ。チャンドラは“面倒くさいのが出てきた…”と思ったが、仕方がないので応える。


「もう少しなのは、もう少しじゃ!もう喋べるな!」


“余裕がないのか?”チャンドラも声を荒げて応える。

“しかし、ガルシアは文句ばかり言うが、アゼルは素直に従っているなぁ…感心、感心”と思い“チラッ”とアゼルの様子を見ると、アゼルは息が出来ないほど必死に走っていた……Oh。


数時間後ーーー


敵兵達から必死に逃げ切って命からがら生き延びてきたが、お陰で今はどこの位置に居るのか分からない。

おまけに汗びっしょりで、体力も残り半分ぐらいである。


「あぁ、疲れた…」


洞穴の暗黙のルールとして“疲れた”というキーワードは御法度なのに、ガルシアはそれを無視して“疲れた”というワードを使った。


「これ!それを使うでない!」


チャンドラは“ピシャリッ”と言い放った。


「何でだよ!ここは自由の社会だぜ?どう発言しようが、それは俺の勝手!」


それを聞いて“イラッ”としたのか、ガルシアは声を荒げた。


「ここはサシル共和国じゃ!」


チャンドラは声を荒げたガルシアの言葉を聞いて、ますます声を荒げた。そして、お互い黙って睨みらんでいた。


「待て!待て!こんな緊急事態に!?今はお互い嫌いになるかもしれませんが、黙って協力しましょう!」


アゼルは両者“バチバチ”なった所で仲裁に入った。そして、ガルシアの方に向き合い、必死になって訴えた。


「ガルシア!今はピリピリの状況かもしれん、しかし、緊急事態だ!グッと我慢して堪えくれ」

「分かったよ…」


次にチャンドラだ。

チャンドラはわがままで高飛車のイメージがあるが、陰で民衆の感謝の気持ちを想い続け、誰よりも努力を愛して協力は惜しまない所がある。


「姫様!あと少しの辛抱です。グッと堪えて下さい。なるべく早く帰還しますので」

「うむ、分かったぞよ」


チャンドラも“ブスッ”としていた。


「よし!お互い協力することで、握手しましょう!」


ガルシアとチャンドラは“はぁ!?”という顔になった。しかし、緊急事態だ!お互い“ピキピキ”しながら握手をする。


「いや〜良かった!良かった!」


アゼルはお互いの顔を見て“笑顔”で返していた。


「アゼル!ちょっと」

「うん?ガルシア、なんだよ」


ガルシアは少し離れた所で小さい声で話す。


最初は作り笑いをしていたが、次第に表情が真剣な顔になった。

チャンドラも“文句を言っているなぁ”と感じ、ガルシアの方へ歩み寄る。

と、言いかけた時、


「あっ!見つけたぞ!」


と敵兵が叫んでいた。3人はたまらず逃走し続けた。


「もう逃さんぞ!」

「待てや!コラァ!」

「あっ、横にネコちゃんが…」


ガルシア一行は必死になって逃げていた。もちろん、同じ手には引っかからない。やがて、行き止まりになってしまった。そこには、大きな滝があり“ザーザー”と水飛沫の音が聞こえていた。


敵兵達は余裕があるのか立ち止まって見せた。そして、ガルシアは前に出て剣を構えて、チャンドラに話かけた。


「なぁ、生きる意思があるか?」


ガルシアは敵兵を睨みながら、チャンドラに話かけた。


「当たり前じゃ!じゃないと、こんなに必死にならないよ!」


チャンドラは“ドキドキ”と胸の鼓動しながら、ガルシアの問いに応えた。


「そっかぁ、じゃあ、生き残れよ!」


チャンドラは“何を言っているのか?”分からず、聞き直そうとした。しかし、その答えはすぐに分かった。

チャンドラの後方にいた、アゼルが手を引っ張って滝のある川に落ちたのだ。


ドボンッ!!


チャンドラはパニックになって空気のある所まで必死にもがく。

“プハーッ”

ガルシアは離れた所で、すでに戦闘を始めていた。

“カキン!カキン!”と剣と剣が響き渡って鳴り響く。チャンドラは“どこかないのか?”と必死になって探す。


「行けません!姫様!」


とその時、隣にいたのがアゼルの姿だ。ガルシアの事ばかりでアゼルのことを忘れていた。アゼルは手を掴みながら全力で説得する。


「行けません!姫様!ここは逃げましょう!今は話す時ではありませんが、とにかく逃げましょう!」

「しかし、ガルシアは……うっ」


アゼルは反論したと思った瞬間、チャンドラの溝打ちを叩き込む。そして、チャンドラは意識が消えゆく声に抵抗した。

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