第2章 砂漠の姫No.7
「さぁ、急いで帰るぞよ!」
「はっ!」
チャンドラは急いで帰路に着く。兵士達もチャンドラに習って急いで歩くが1人だけやる気がない人がいた。ガルシアだ!
ガルシアは大欠伸をしてゆっくり帰路に着こうとしていた。
「何しておるのじゃ!さっさとせんかぁ!」
チャンドラもアレスの言葉で危機感を持ったらしい。それは何か?
サシル共和国のクーデターの話である。サシル共和国とは治安も良く、平和な国であるが、平和だからこそ平和ぼけを横行してきていた。だから、サシル共和国のザビ王を筆頭に軍国の強化。武具、武器の開発、強化などを取り組んできた。
しかし、皮肉なことにクーデターは同じ兵器、同じ道具であり、開発が進めれば進むほど兵器はますます効果が強力になる。そして、戦争自体の短縮が可能になる。
もちろん、戦争の短縮は喜びしいことであるが、クーデター側からしてみれば首都のオルールの制圧、厳守し、サシル共和国側により不利になるはずだ。だから、チャンドラは焦っていたのだ。
「今から遅くない?」
ガルシアは鼻をほじりながら呟いた。
「ん?今、なんといった?」
「だから、今から言っても遅いんじゃないかなぁ……?」
以前はチャンドラに対する逆玉の輿を狙っていたが“こうも厳重で、こうも高飛車なのは不幸になるのではないか?”と感じていた。
しかも、アゼルとチャンドラの仲である。俺の見立ては9割がた恋をしているはずだ。しかも俺が猛アタックすればすぐに左遷になるだろう。結果、詰んでしまったのだ。
“……マジで、やる気がなくなった”
「ほほう、ほれ耳を貸してみ」
以前のチャンドラはその言葉を聞いて激昂したのだが、今のチャンドラは違う。
「なんだよ。お金は貸さないぜ」
「お金はいらん。ちょっとでいいんじゃ。耳を貸せ」
ガルシアは“ブツブツ”言いながらもチャンドラに耳を貸した。
チャンドラとガルシアの二人は耳打ちをする。すると、ガルシアは全くやる気が出ていなかったのだが、徐々にやる気に満ちてきた。
「その話本当か?男に二言はないな?」
ガルシアは情熱に満ちた目に輝き始めた。
「わらわは、女だが?」
「……女に二言はないな?」
“直すんかい!”とガルシアとチャンドラ以外の全員はツッコミを入れた。
「まぁ、良い。口約束みたいな感じだが、ザビ家において必ず約束する。安心せい!」
チャンドラはガルシアと向き合いながら、握手を求めた。
続いてガルシアも“ガッチリ”握手をする。
「これで成立じゃ!すぐに行くぞよ!」
チャンドラは声高々と宣言し、前を向いた。ガルシアも前と違ってやる気に満ち溢れていた。
すると、アゼルはチャンドラに近づいて小さい声で話をする。
「どうして、ガルシアがやる気になったんです?以前はやる気がなかったのに…是非、参考に教えて下さい」
アゼルも“どうしてガルシアはやる気が出たのか?”と不思議がっていた。
「ん?そんなことか?いや、それは“クーデターが失敗したら、カレー屋さん全面的に譲る”と言ったんじゃ」
チャンドラはドヤ顔で言った。
ここで、疑問になったのが“果たして、カレー屋さんというものは知っているのか?”ということだ。
「…それって、カレー屋さんはどんな食べ物か知っていましたか?」
「知らん」
「え…?」
アゼルは呆然していた。そして、チャンドラはアゼルに対して呆然としている隙に口をした。
「どんな店か知らんし、カレーというものなのかイメージが付かん。
もし、首都、オルールにあるとすれば、分かるじゃろう。もちろん、新しく作るのは自己負担じゃ!まぁ、カレーというものがあったなら見てみたいものじゃ」
チャンドラは不適切な笑みを浮かべた。
アゼルもやる気に満ち溢れた姿に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
数時間後ーーー
ようやく出口が見えてきた時、突然天井が崩れて落ちてきた。
「危ない!!」
アゼルは瓦礫が落ちないように、咄嗟にチャンドラの背を抱きついていた。
“ガラガラ……”
ようやく落ち着いた頃、ガルシアは今の現状を把握する。
“今ここにいるのは、俺とアゼル、チャンドラの3人かぁ…。瓦礫も不安定で出口が塞がれている。どうしたものか?…”
ガルシアは思案しているとチャンドラが横に出て話をし始めた。
「誰かおらんのか?」
「ここに2人います。いや〜危なかったですよ。すぐさま飛び出していたから無事だったものの、油断していたらお陀仏ですよ?ハハハ!」
クバードとサリムは陽気な声で言ったが、それを聞いたチャンドラが激昂した。
「たわけ!!すぐに復帰せんか!!」
「申し訳ございません!けど、復帰するよりは遠回りした方が良いです。こちらもすぐ軍が向かいます。ここに居て下さい!」
チャンドラが激昂した声を聞いて、クバードとサリムは焦って“バダバダ”し出した。
「ったく、わらわも行くぞよ」
「えっ、待機するんじゃないですか?」
アゼルはその言葉を聞いて“ビックリ”していた。
「一分一秒が惜しい。ほれ、行くぞよ」
チャンドラは“スタスタ”と歩き始めた。そして、その歩きに慌てて追って行った。
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