ーージュウイチーー

第27話

 その夜、僕は涼香の夢を見たんだ。




 僕たちは人類滅亡についてひたすら語っていたわけではなく、もっと細やかで他愛もない事についても沢山語り合っていた。


 なんでもない昼下がり、仰向けに寝転ぶ僕の隣で涼香は熱心に本を読んでいた。


「その本もう四回は読んでいるよね。そんなに面白いの?」


「すごく面白いよ。一度読んでみてほしいくらい」


「それじゃあ、僕がその本を読みたくなるような台詞を言ってみて」


 僕は涼香のセンスを図ったんだ。


「――私の瞳が潤むのは、限りなく切ない愛の証」


 涼香はそう言った。


 気になった僕は「ちょっと見せて」と本を借りる。


 愛することと別れについて書かれてあったが、僕は少しだけ読んで本を返した。


「どう?」


「別れなんて考えられないし僕には理解しがたいよ」


「……そっかぁ」


 涼香、そんな顔をしないでくれ……。


 違う、違うんだよ。別れは突然やってくるものなんだ。そして僕はその別れの痛みに酷く苦しむんだ。気づいてくれ、もっと涼香を見て、涼香と話をして思い出を作るべきだったと、誰でもいいから伝えておいてくれれば……、いやそんなのは最初から無理だったとわかってはいるけど……いるけど……。ああ、涼香、いなくならないで。僕のそばから離れないで。


 涼香の姿が遠ざかっていく……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る