第2章 海上の侵入者 No.3

カシム視点

「おーい!カシム!手伝ってくれ!」

「カシム!床磨いたのか?」

「カシム!……呼んだだけ(笑)てへ、ペロ」


海上の上陸前、普段なら警戒して近寄らずに放置しているが、そうも行ってられない!

この船は無理難題を押し付ける……まぁ、下手に出来るモンだから重宝しがちである。

“忙しいすぎる!仮とはいえ、師匠の弟子入りをしたモンだから文句も言えず、黙って黙々と行う…こんな船、嫌だ!”

こうして忙しいすぎる船は走り去っていった。



ーーー深夜


ブンブンブン……。


疲れて寝ていたのだが、うるさ過ぎてクレームを入れようと、その音の方に向かってゆっくりと歩き出し、段々と近づいていた。

“こんな夜更けに誰やねん!”と思い、ゆっくり覗き込む(要はビビリである)、そこにはその男が汗、いっぱいに大汗をかいていた。


ブン、ブン、ブン……。


基本の型は何も面白味もないのだが、どこか圧倒的な凄みのオーラを発し、思わず見惚れてしまった。

“本当に凄い……”

男は“ピタッ”と静止する。そして、凄いオーラがゆっくりとこちらに向き、凄みを増していた。


「なんだ、カシムかぁ」

「凄いッスう!ガルシアさん!」


カシムは“キラキラ”光らせながら、こちらに向いていた。


「よせやい!照れるぜ!」


ガルシアも、まんざらでもないようで調子に乗って“ブンブン”と素振りをしていた。


「本当ッスよ!ガルシアがいれば、百人力ッスね!」


“お世辞でも何でもない。心の底から、そう思えてくるから不思議だ”

カシムはそう思っていた。

すると、木刀が“ポンッ”と中に舞い、カシムの元へキャッチした。


「どうせ、暇なんだろう?この木刀で対戦しようぜ!」

「えっ、いいんッスか?」


カシムは“信じられない!”ような感じで、ガルシアを見つめた。


「あぁ、いいぜ!こちらから、お願いしたいくらいだ!まぁ、手加減はするけどなぁ」


ガルシアは木刀を握り締め、カシムと対峙をする。木刀は怪我するのは少ないのだが、真剣に行うと下手したら、命まで奪うかもしれない。


「是非!お願いします!」


カシムも初めて対峙した割には“凄さは感じるが、そこまで強く感じることはないなぁ…”と思ったが、すぐさま間違いだと分かった。


“メチャクチャ強い!”


俺は対峙した瞬間から、ガルシアのオーラが、とてつもないことに気がついた。

“ジリジリ”と間合いを詰める。次の瞬間、剣が弾き飛ばされて喉元に突き刺さる。


「次!油断したら禁物だぞ」


“これはヤバイ…”今度は危機感を持って、間合いを詰める。今度は俺の番だ!

カシムは木刀を思いっきり振り上げる。


「カン!」


木刀と木刀が向き合い、二人が重なり合う。お互い同等のようだ。だが、次の瞬間重なっていたものが圧倒され、カシムの脇に木刀が振り上げた。


「甘い!」

「ぐはッ」


俺は思わず奇妙な声を出してしまった。


「次!」


再び、二人での対峙が真剣に繰り広げられてきた。一人、二人、三人……それもそうである。深夜に鳴り響く、木刀の声がうるさくて、クレームを入れようと思った矢先、こんな凄い見れるとは…お金を払っても見たい場面であった。


ーーー数分後


ガルシアとカシムの戦いは突然、終わりを告げた。カシムは思いっきり振り上げた瞬間、木刀を交わし両手を叩く。カシムも叩いた瞬間、手を離し、喉元に木刀を突き刺さった。

それを見た瞬間、観戦が大きくこだました!


「オッーーー!!!」

「ピュッーー!ピュッ!」


ガルシアとカシムは驚き、呆然と立ち尽くした。それぐらい集中をしたのだ。


「いや〜凄いなぁ。二人とも!」

「シャーーー」


カシムも反射的に毛嫌いしていた。それを見たガストンは一瞬“ビクッ”として、カシムを無視して話し掛けた。


「けど、深夜だ。睡眠不足も気になるし、そろそろ寝ないか?」

「あぁ」


ガルシアはタオルで汗を拭き“ポンッ”カシムの方に向かって投げた。


「夏とはいえ、風邪を引くぞ」


何が起きたのか分からず“ボーッ”と立っていたが、カシムもその意味がようやく分かり、嬉しくて飛び跳ねそうな勢いであった。つまり“仲間の一員”ということだ。

思わず、誰もいない部屋を会釈してしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る