第2巻 親友との誓い

第1章 プローグ

ザバーッ、ザバーッ……


夜の船。

真っ暗闇に航行する中型船は、どこか穏やかで、どこか不気味で目的地の方向に進んでいた。


船長の“エバ・ペロン“は“どこか怪しい事ないか?”と注意深く確認し見渡した。

それもそのはずである。

食料が1日の時点で確認した所、明らかに減っているのだ(まぁ、1週間ぐらいなら保つが…)だが最悪の場合、餓死者になりかねない。だから、不審者を探すのだ。それと、この航海はもう一つ大きな問題を抱えていた。それは、聖域である“クラーケン”のテリトリーに向かっていたのだ。しかもこの時期、生殖時期にあたりイライラしていた。


「フーッどうしたものかなぁ…」


エバは独り言のように呟いた。

それもそのはずである、一つ問題ならまだしも、しかも2つ!その一つが、どんな足掻いても、どうにもならない問題なのだ。

エバは、ひと通り確認して船長室に向かった。


ギィィィィ…。


年季の入ったドアはゆっくりと開けられていた。そして、作業しやすいデスクと簡易的なベッドが何処か懐かしい気持ちになるような感じをしてきた。


エバはデスクの端に置いてある、ランプに火をつけ“ドサッ”と椅子を腰掛けた。そして、中から“ある本”を取り出し、書き出していた。その本のタイトルは“エバ航行日記”である。

もともと、エバは“面倒くさい…”と思い、日記を付けなかったが、生きるか死ぬか分からない、この航海で初めて日記を付けることを決意した。


“3月15日

いよいよ、初日の航海日記である。

まだまだクラーケンのテリトリーからすると遠いが、もし遭遇しようものなら一発で海の藻屑だ。本当に恐ろしい。だが、ガルシアという東から来た旅人は、海から出たことないらしく思いのほか、はしゃいでいた。だが、時間が経つにつれて、船酔いになったらしく“リバース アンド バタンキュー”状態で静かになった”



“3月16日

航海2日目

胃が空っぽになったのか、少しずつではあるが回復していたガルシアが“俺はもう仕事を降りる!帰らせてくれ”と訴えたが“帰っても良いが、残念ながらここは海の上。どうする?”と言ったが黙りこくってしまった。なんなんだヤツは??



“なんだか、ガルシアの悪口ばかりになってしまった”と呟いてしまった…。

今度は本来である、目的をベースに書いていこうと心に誓い本を閉じた。



ーーー3日目の昼。

相変わらず“リバース アンド バタンキュー”状態ではあるが正気が戻ってきた。


エバは心配しつつ声をかける。


「おーい!生きているか?」


ガルシアは死んだ目のように、こちらに向き親指を“グッ”と立てた。

“本当にしんどそうだなぁ…”


「まぁ、生きているならいいわ。そうだ!この海はクラーケンのテリトリーに入った。テリトリーから外れる2日間は警戒してな」


エバは本当は警戒のため、警備の仕事を頼もうとしたが“この状態ではダメだ”と思い、諦めて行ってしまった。



ーーー昼過ぎ


ガルシアは“フラフラ”しながらも椅子に座り、作り笑顔を見せた。


「おっ、大丈夫か?」


ガルシアはVサインを“プルプル”震えながら示し“大丈夫!”と応えた。


「まぁ、ゆっくり休め…と言いたいが、そうもイカンのだよ。ガストンは“ガルシアが船酔いなら、俺がやる!”と言って、2日間寝てないしな…とりあえず、交代してもらえるか?」


ガルシアは頷き、ゆっくりと“フラフラ”しながらも立って歩いていった。


と、その時である!


船は大きく揺れて壁に掴んでいた。ガルシアも放心状態で“あっちにフラフラ、こっちにフカフカしていた…”

エバも呆気になってしまったが、今の状況を思い出し走っていた。

“なんだか、嫌な予感がする…”

そして、甲板の上に駆け上がると、そこには大きな物体がヌルヌルと現れたのだ。


“クラーケン”である!


クラーケンは出会ったら最後!99%が海の藻屑に消えていた。

つまり、ほぼ全滅である…。


「クソ……ここまでか…」


エバは脂汗がビッショリかき、内心どこか逃げ出したくなるような錯覚を覚えた。まぁ、逃げ場はないのだが……。


その直後、クラーケンが襲いかかる!

「もうダメだ!」

とエバが目をつぶる。



ーーー数秒後


「………?」


エバは“なんだ?”と思い、目を開ける。すると、驚きの光景が目に入った。

ガルシアがクラーケンを睨みつけたのだ!

クラーケンは“ピタッ”止まり、静止する。そしてガルシアはゆっくりと船の端にある船頭に歩き立っていた。


クラーケンも怖気ついたのか、ゆっくり船から離し海に沈んでしまった。


「…おい、夢じゃないよな」

「…あぁ」


船員達はお互い顔を見渡し、抱きつき出した。中には叫んでいるもの、泣き出すものがおり、一種のお祭り騒ぎになってしまった。


「そうだ!ガルシアだ!ガルシアがいなければ、今ここにいなかったんだ!」


船員達は一斉にガルシアのもとへ駆け寄った。その直後である、ガルシアはマーライオンのごどく、発射してしまった…。

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