第5章 王位交代No.1
・アイヤール視点
「ハァハァハァ…」
オルール城の前を目一杯走り出した。そして
アイヤールは周りを見渡す。
空いっぱいに広がる、ドラゴン、ドラゴン、ドラゴン…。圧倒的なドラゴンの群れだ。
このままでは敵と勘違いして、オルールを破壊してしまう。それだけは阻止しなければ!
アイヤールは城の一番テッペンまで走り出していた。
ドカッ!!
城の一部が崩れ落ちる。
よく見たら王の巨大な銅像が崩れた岩に直撃して、王の首の銅像がもげる…ダメだ。殺される…。
ブォーー‼︎ドカッ‼︎ガラガラ…。
こっちにも姫様が部屋がある塔が崩れ落ちる…これはアカン!殺されるどころか、首吊りの刑になってしまうぞ!
アイヤールはたまらず、大きな声で叫んだ。
「おーい!!もう戦争は終わったんだ!!」
しかし、ドラゴンの羽の音でかき消される。
“ダメだ!どんなに叫んでも、かき消されてしまう”
アイヤールは鎧を脱ぎすて身軽になり、1秒でも早く走り出していた。
広いホール広場、普段なら謁見式で使われていたのだが、今は見るも無惨な光景が広がっていた。綺麗に整った光景もクーデター兵が倒れ、見事に剣が刺さっていた。王が座る玉座も首が無くなり椅子に座っている状態だ。
しかも、血が飛び散っていた。
見るからに数十人が戦闘の後が見受けられた。
「なんだこれは…」
1人で戦ったと思えない光景で、派手で残虐な風景を目にした。
「ちょっと!何しての!?ここに降りなさい!」
突然、女の叫び声が聞こえてくる。
チャンドラの声だ。チャンドラに乗ったドラゴンはゆっくりと外のホールの下に降り立つ。
バサァ、バサァ、バサァ…。
チャンドラもホールの外に降り立ち、着地する。
「お久しぶりです!姫様!クーデター兵は壊滅しました。よって、戦争の勝利です!」
アイヤールは深々と会釈したが、チャンドラはぶ然と口にする。
「戦争なんて、どうでもええんじゃ!アイヤール、ここへ座れ!…コラ、何しとる?ドラゴンとバミルもじゃ!」
運転手である、バミルも“ビクッ”と向き直して正座をした。ドラゴンも同様である。ドラゴンは正座出来ないので伏せの取っていた。その他のドラゴン達は不利益を被らないようにそそくさと帰えってしまった。
「だいたい、アンタらは…」
キレ気味なチャンドラは怒りにブチ負けて、延々と説教を食らった…。
・ガルシア視点
ガルシアは隙間から“ヒョイッ”と顔を出した。あれから、1時間。スッカリ夜が明け、徐々に暑さも増してきた。最初はドラゴンも真面目そうにチャンドラの話を聞いたが、今は夜から朝に移行したらしく精霊も活発してきた。
当然、精霊も活発するということでドラゴンも休息しなければならない時間なってきた。
ドラゴンの様子を見ようと、ガルシアは“チラチラ”を見ていた。
“マジで可哀想すぎる。解放したってよ”と思うのは俺だけではないようだ。
「ガルシア!なに隠れておる!?ここに来んかい!?」
またしても、チャンドラのヒートアップが再燃してしまった。ガルシア以外の軍(チーム)が“ジトーーッ”と白い目で見つめていた。
そして、ドラゴンも気絶し崩れ落ちた。
ーーーさらに、1時間後。
すっかり日は照らし合わせていた。
ドラゴンも“ピクピク”しながら日の崖に入っていた。ガルシアも堪らず小さな声で隣にある、アイヤールに呟く。
「なぁ、そんなに怒るか?自分の部屋なら惜しいかもしれないけどさ…」
ガルシアはウンザリした顔をした。
「なんか、自分の部屋では癒しの空間みたいらしいよ。……確か、ハロー◯ティーみたい物で、世界で唯一所有していたらしい」
アイヤールも小さな事で返ってきた。
「あぁ、そういうことね。それは残念だったなぁ…」
「そこ!聞いとんのか!?」
チャンドラは鬼の形相で詰めてきた。
「もう説教はええじゃろ?後の処理でも、頑張ってもらわないいけないし、第一王が平和宣言してもらわないと民は安心してないからのう」
その声は現、暫定王『ザビ王:ザビ=アスラン』である。ザビ王は衰弱したのか、両肩をささえながらゆっくりと歩いていたが、ゆっくりと立ち止まる。そして、簡易的な椅子を持って来させ座る。そして朗らかな顔で口にした。
「良いではないか?こうして誰も死ななかった。だから一緒に笑い合える。それだけでも幸せじゃないか?」
ザビ王は朗らか顔でチャンドラの方に向いた。チャンドラも緊張した顔で黙り込んだ。
サシル共和国とは代々、女性の王が君臨してきた。
「えっ?男性の王ではないの?」と思うかもしれない。何故なら男性の王だと欲に任せて争いが起きやすくなるからである。
だから女性の王限定なのだ!だが、その例外もある。女性の王が亡くなった且つ女性が婚約していない場合、暫定の王として親族又は両親が男性の王になるのだ。
これが暫定の王、ザビ王の現状なのだ。
「ところでパパ、お願いがあるの」
チャンドラは決心したかのようにザビ王に向いた。
「チャンドラよ……公務の時は“ザビ王”と呼びなさい。それ以外は“パパ”でOKじゃ」
ザビ王はスカした顔で口にした。
「パ…ザビ王!王位を返上して欲しいの!」
ザビ王は“一瞬”顔を強張らせた。そしてチャンドラの方に向いてこう発言した。
「あぁ、いいよ」
「いいんかい!」
ガルシアは立ち上がり、思いっきりツッコミを入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます