第4章 決戦突入No.9
「いいか?1時間だぞ」
ーーー夜中のオルールの門の付近
ガルシアは大きく頷く。
アイヤールとガルシアの2人は、クーデタ軍に対して行く準備をするために話し合いを始めた。
ガルシアからすると、ロマーノ王国のように忍者にしたかったのだが、あまり置いてなかったので、それに似た服装にした。
ガルシアの格好は黒の上下の服装に短刀のダガー、あまり靴音のしない靴などを取り揃えて着た。そして痕跡がバレないように入念なチェックをし始めた。
「もう一度言うが…」
「分かったよ。1時間だろ?」
ガルシアは“もうウンザリ”というような顔した。
「これで最後の確認だ。門に登って門を開く。お前の役割は終わりだ」
ガルシアは軽く頷き始めようとした矢先、ガルシアは思わず声をかける。
要は思わずズッコケてしまったのだ。
「ゴメンなぁ…最後にするわ」
ガルシアは“ジトーッ”とアイヤールの顔を見た。
そして次の瞬間、アイヤールはガルシアの両肩を掴みこう言った。
「ガルシア!いいか!サシル軍の一員だ!家族だ!家族は何があっても見逃さない!もし、ダメだったらすぐに引き返せ!家族みんなが全力でサポートするからな!」
ガルシアは一瞬、アイヤールの情熱的な言葉に不意を突かれ泣きそうになったが“クルリッ”と180度回転し回避した。
「そんなフラグ、無しですよ。俺がまるで死ぬじゃないですか!?」
「いや!そんなことはないぞ。帰ってきてからの話!」
アイヤールは慌てて、両手を振りながら言い訳をしようとした。
「ハハハ!冗談!冗談ッス!帰ってきたら、検討しますよ……じゃ、いっちょ行きますか!」
ガルシアは真剣な顔をしてオルールの門と向き合った。
ーーー数十分後、オルールの門の手前
オルールの門は普段なら接近してスタートすることが出来るが、オルールは一面は砂漠である。砂漠だからこそすぐ発見でき、逃れるのは困難である。
だからこそ、隠れるためには数キロからのスタートが余儀なくされた。
「ハァハァハァ…しんど」
ガルシアは独り言を小さな呟き、額に汗をかいて拭った。夜中とはいえ全速で走ったら、すぐに見つかって御用である。
だからこそ、慎重に行動しなければならない。要は“全速力で慎重に”ということだ。一件、矛盾する言葉ではあるが、コレが理にかなっているのである。
ガルシアは“キョロキョロ”しながら、壁に背中を引っつける。背中がひんやりとして冷たい。次の瞬間、ガルシアは高い塀をジャンプ!
1メートル、10メートル、70メートル…大きく飛んだ。そして見事、着地しあたりを見回す。
“よし!誰も見ていないようだ”
ガルシアは、すかさず壁の方へダッシュし引っ付く。大欠伸をしたクーデター兵は、ここに人がいることを知らず、ゆっくりとした速度で歩く。クーデター兵とガルシアの距離はおよそ10メートル。
9メートル、7メートル、5メートル、2メートル…
近づくにつれて胸の鼓動が激しくなる。
「ふぁ……」
クーデター兵も呑気な顔で歩いてくる。
次の瞬間、クーデター兵が“えっ”と思った時には頭と体が綺麗に分断し体が崩れて落ちる。
“リミットは1時間。つまり、夜明けになってから”
ガルシアはクーデター兵の姿を見ずに走り去ってしまった。
ーーー1時間後
・アイヤール視点
アイヤールは“イライラ”して腕を組みながら、オルールの門を見つめていた。
“いや、これはイライラしているのではない。焦っているのだ”
そう感じたアイヤールは思わず驚いた。
“そうだよなぁ…いくら一兵だと思っても、代表の長として表も裏も知っているはずだ。ガルシアのことだって、うん表では心配しているように振る舞ったが、裏ではもし、殺害された時ぐらい考えていたはずだ”
アイヤールはそのことについて考えると気持ちが落ち込む。
「それだけではないんだよなぁ…」
“それだけはない”そう呟いたアイヤールは恨めしそうにオルールの門を眺めた。
今更ながら、オルールの門は最強の門なのだ。
オルールの門は周囲に建物は無く、あっても数キロぐらいに“ちょこん”と小さな岩があるぐらいである。そして、すぐに大勢が攻めてくると準備万端な兵から返り討ちあるのが必須なのだ。
だから、いくらシロートでも数が多くて、すぐには崩せない門である。しかも、籠城を決めると衣食住が自給自足100%な為、簡単にはできない。
アイヤールは“フーーッ”とため息をついた。
もう間も無く夜明けだ。夜明けになってしまうとすぐには動けない。
“ガルシアの案を却下し、全軍で攻めた方が良かったのかなぁ…”自分の判断が間違っていたのか自問自答する。
と、その時である!
オルールの門がゆっくりと開いていき、中から血だらけで歩く男性がいた。
アイヤールは少し警戒したが、すぐに笑顔になり、走って駆け寄った。
「ガルシア!よく生きて帰れたな!」
アイヤールは少し不安だったが、ガルシアの姿を見て心配は吹き飛んだ。
「あぁ、疲れたよ…あっ、これ」
ガルシアは片手から何やら取り出すと放って投げて見せた。
“ドサッ”
「おい、これは?」
アイヤールが見たのは、どこか綺麗に整っていた顔である。
「ん、クーデター兵の長だよ」
アイヤールはビックリして声は出せなかった。それもそうである。まさか、オルールの門が開ける手筈になっていたのだが、クーデター兵が壊滅するなんて思いもしなかったからである。
「おまえ、まさかクーデター、全員を倒したのか?」
「あぁ、だってみんな倒した方が安全なんでしょ?」
“みんな倒した⁉︎”なんだか、現実味が無さそうな感じだが、とりあえずクーデター兵の首は持ち帰っていた。
「本当にマジなんだな?」
ビックリもせずに淡々と言っていた。なんだか、現実味がなさそうだ。
突然!黒い塊が凄い勢いで走り去っていった。”やばい”と思った瞬間、大軍のドラゴンが押し寄せていた。
「……えっ……と、とりあえずOK?」
「何がOKじゃ!!」
アイヤールは後を追うようにオルールの元に走り去ってしまった。
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