第21話

光の中で深町は目を覚ました。

「…過去の記憶か。ここは…⁉︎」

"阿頼耶識の内側よ…"

上体を起こした深町の後ろから響く懐かしい声。振り向くと優しく微笑む沙由里の姿があった。

「沙由里…⁉︎」

深町はその姿を凝視すると動揺しながらも、赤面して呟いた。

「どうして裸なんだ…⁉︎」

"…知っているはずよ。阿頼耶識は物理世界の共有ストレージ…私がこの姿なのは貴方が最も強く抱いているイメージだから"

二の句が継げない…しかし夢でないとしたら、そんな事は後だ。

「沙由里…何故、俺は阿頼耶識にいる…外は、優子は⁉︎」

そう、阿頼耶識に飲み込まれた存在が記憶にも残らないのは、ストレージが共有だからだ。阿頼耶識へ引き込まれた記憶ストレージは二律相反する物理世界からは消滅する。目が覚めた時、夢を覚えていない事と原理は同じだが、夢より更に深淵に存在する阿頼耶識において作用は絶対的なものとなる。

"あの子は守ったわ…私の子だもの"

「俺は…死んだのか?」

優子を残して…?沙由里は近付くと、呆然とする深町の首へ両腕を回し、頭1つ高い深町の顔を胸へ抱き寄せると優しく囁いた。

"私は誰ですか?"

「お前は…」

深町はハッとした。

SAYURI…物理世界と阿頼耶識、唯一の接点であるストレージにおける、"特異点"だ…。

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