第6話



「ダメだこりゃ…ホント人類の役に立てよな、ユッコ。その為に日本は国防費を超える予算を私達に投入してるんだからね。オマエのクレープのためじゃないんだぞっ」

ユッコを軽く鼻ピンする美雪。ふぃ、とユッコは反応すると、そっぽをむいた。

「クレープくれないと守ってあげないもーん」

「あははっ」

「コイツぅ」

笑うレイナと睨む美雪を見るユッコの、視線の先から、見覚えのある車が向かって来た。大手メーカーREVAの全自動車だ。

「あれユッコパパの車じゃね?」

「うーん」

美雪が訊くとユッコはナンバープレートへ目を凝らした。BO563。

「パパだ!」

ユッコは声を上げると、車に向かって手を振った。

「パァパァ!」

満面の笑みで手を振るユッコの前で車が停まると、運転席の窓が開き、深町警視監が顔を覗かせ、同時にバックドアが開く。

「はは、元気だったかい?ユッコ」

「うん!ねえ見て見て。この前ね…」

ユッコの言葉を遮り深町は言った。

「時間が無い。乗りなさい、お友達も一緒に」

「えでも、これからみんなと…」

困惑しモゴモゴするユッコに深町は声を荒げた。

「ユッコ!」

ビクッと怯えた表情へ変わるユッコを見て、深町は眉間に皺の寄った顔を逸らし俯く。

「すまない、ユッコ…本当に時間が無いんだ」

呟く深町の顔を見て、深刻な状況を察したレイナが、ユッコの肩へ手を乗せ言った。

「乗りましょ、ユッコ」

美雪が笑顔で付け加える。

「おじさん、この道真っ直ぐでしょ。途中クレープ屋さんがあるから、買ってね。私達これから食べに行くところだったの」

深町は一瞬、当惑したが直ぐに諦め力無く微笑み呟いた。

「もちろんだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る