第2話

晴天の空中庭園が落とした影でユッコは目を醒ました。5分ほど前に鳴ったアラームは2秒で止めて2度寝しかけたが起きようとは思っていた。ユッコはベッドから上体を起こすと、小さな手で目を擦った。

「んん…眠いよぉ」

昨日は溜まっていた宿題を片付けていたらPM11:00を過ぎてしまった。寝たのは日付が変わってから。現在、AM7:00。ユッコは1日8時間半は寝ないと眠たいのだ。

ベッドから降りて、ベージュの大きなカーテンを開いた。

空を飛び交う車と空中都市、それを反重力システムにより支える地上都市である東京が、眩しい陽光を浴びて煌めいている。

「今日も暑そうだなぁ…」

ユッコは身支度を始めた。朝ゴハンはモチロン食べる主義。昨日の学校帰りに買っておいた、サンドウィッチと冷製のコーンポタージュ、果汁30%のオレンジジュース。

「いただきま〜す」

完食。歯磨き。着替え。カバンの用意と忘れ物チェック。TVを点けてお天気チェックしようとするとニュースが流れていた。

『今月18日に豊島区セントラルユンカービルで起きた、脳内情報端末の不正な改ざんについて、警察は都指定のサイキック組織、RAKILLの犯行である可能性が高いとの見方を示しました。書き換えられた記憶の内、転送先の大部分が…』

難しくてわからないのでお天気画面に切り替える。時間がない。友達の美雪がもうエントランスで待っている。ユッコの部屋は、38Fの3805号室で、いつも一緒に登校している友達の、レイナを迎えに27Fへ寄らなければならない。寄宿舎は52階建のタワー型で生徒は皆、ここに住んでいるため巨大なエレベーターも登校時間は大渋滞だ。今日は…晴れ!

「ママ、行ってきま〜…」

部屋を出る前に言いかけて俯いた。

"いないんだった…"

ユッコは虹彩キーで戸締りをすると部屋を出た。

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