34話 決起集会

「みんなやっほー!咲羽ミツだよ〜」

「ごきげんよう。椎名マオだよ。元気かい?」

「待たせたの、皆よ。スパイシー配信じゃぞ。我の名は常夜やみである」


 そう、スパイシー三人での配信。

 いつ以来か……それは、配信のあとに私がお泊まりした時以来である。あれは忘れられない。


「さてと、今回何故この三人でお送りするか分かるかな?」


ミツ先輩がリスナーさんに向けて聞く。

 これは事前に情報を掴んでいるかが肝心になるのだが、みんなちゃんと調べてから見にきてくれているだろうか。


:決起集会だろ?

:だよな!情報見たぞ!

:俺たちも盛り上げるために決起集会参加するぜ!

:ライブ楽しみにしてる!

:スパイシー三人が楽しめるように全力でコメント入力しまくるから‼︎

:キーボード壊さないように気をつけろよー

:壊れたら別のもので打ち込むぜ!


「みんな正解しているようだね」

「そうみたいじゃのお。今回は決起集会……と言っても、三人しかおらんがの」

「見てくれてるみんながいるから三人だけじゃないよ〜」


 確かにみんながいるから三人だけではないか。情報を見てきてくれて、ライブを盛り上がると言ってくれてる。

 さすがにキーボード壊すまでコメントを打ってとは頼まないけれど。


「ミツはいつもいいことを言うねぇ」

「魔王様だってそうでしょ?ね、やみっち!」

「そうじゃの。さすがスパイシーのリーダーといったところじゃ」


そんな先輩二人に追いつこうと必死な私の身にもなってほしい。いや、ならなくていい。私は全力で走って横に並んでみせるから。

 今は前にいてもらわないと困るんだ。


:ミッツーはいつもリスナーのことを考えてくれてる

:それはカラーズ全員に言えることや

:魔王様はまじで名言製造機

:やみちゃんは迷言製造機な

:上手いこと言うな

:決起集会なのにこのわちゃわちゃ感

:こういうのが好き


「我は迷言製造機ではないのだが?」

「そうだねーやみっちもちゃんと考えて言ってるもんね。まあ、多少迷言だと思う時あるけど」

「ミツ先輩の裏切り者!」


:お?あかちゃんか?

:ミッツーにも迷言だと思われていたという事実

:微かに聞こえる魔王様の笑い声

:それだけで我々は生きていけます

:なんか魔王様信者おる?


「この二人のやりとりを見ていたら笑えてきたんだよ。魔王様が誘った二人がこんなにも成長して、遂に一緒にライブができる。それをどれだけ待ち望んだことか……」


マオ先輩がそう言う。

 私もミツ先輩も、マオ先輩に誘われたからスパイシーというユニットを組むことにした。最初は本当に自分でいいのかと悩んだけれど、今となってはこの場所に自分がいなければと思えるようになった。

 だから……


「我だって待ち望んでいたのじゃ。三人でライブができる時を」

「私だってそうだよ〜魔王様、明日をさいっこうの日にしようね!」

「ああ。三人で楽しもう」


 こうして、決起集会は幕を閉じた。

 次に幕が上がるのは、ライブの幕となる。

 全力でやるぞー!

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