参考作品の感想「DIVE!/狐選者」

 四人目の選者である狐さんが参考作品を書いてくれました。大隅さんは豆ははこさんに相談してスカウトしたのですが、狐さんは惣山さんから推薦を頂きましてお願いしました。惣山さんの秘蔵っ子で、Xで二人のやり取りを見ていると面白いです。一番ウケるのが惣山さんが「おい、お狐」ってDMではなくツイートで呼びつけてるところ。そんな夜に呼ばれも知らんがなwwwみたいな感じで、時間が経過してからに狐さんが返事をするのが非常にツボです。

 作品を拝読すると若いながらもわたし好みの「本格派」の書き手で筆力も一流だと思いました。


 作品の感想ということで、例のごとく「どんな感じがいいですかー」とお聞きしましたことろ、ホメ方向のアドバイス付ということで始めたく思いますが、忖度なしで非常に面白いなと思いました。正直、


ジョジョ未読でネタわからんし。あーしどうしよう~(←誰?)


 と思って読み続けたので、実は一回目はよくわからず終わってしまって、「?」となったのですが、二回目で「ああ!」みたいな感じでわかりました。ジョジョはフリでしたので知らなくても大丈夫なんだとようやくわかりほっとしました。(笑)

 若者のスピード感についていけませんでした。熱い友情のもと「DIVE」してきたのですね。納得いたしました。

 男同士の友情あるいは無垢の絆といいますか、卒業で別れる将来がわかっていながらも、大切にしたい縁を大事にしている「僕」の想いがまっすぐでいいですよね。女なんて、ズッ友とかいっておいて環境と男ができてしまったら疎遠になりますからねぇ……え? わたしだけですか!?


 時間軸をずらしたり戻したりして書くって結構大変なんですが、その辺りはとても良く書けていると思います。若いわりに腰が落ち着いた展開で書けるのは上手だからでしょう。惣山さんの薫陶のたまものなのでしょうか。


 全体的に「一作」という総合的な出来として、とてもよくまとまっていると思います。全体を俯瞰して書いている感じは選者の中でも一番上手なような気がいたします。ひと段落ひと段落が適当というかきちんと必要なことを配置しているので「つらつら書いている感」がないんですよね。実際にはおそらくプロット書いたりせずにつらつら書いているのでしょうが、普通の読者であればわからないくらいに技術でカバーしていると思います。

 

 さて、ここからアドバイスタイムなのですが、最初に思ったのは、「足がやや早い」ということでしょうか。

 足が早いというのは「腐りやすい」という一般的な意味ではなく、囲碁の用語で「(布石など)多少部分的に手薄でもかまわず主要なところに移って局面を早く展開させること」という意味です。つまり説明不足を承知で必要最低限だけ書いて次を展開させているといることです。

 いわゆる説明不足と違うところは、①意図してやっていること②意味は通じるだけの情報は成立している、ということでしょうが、よく言えばくどくど説明せずスピード重視で話を進めていく、悪く言えばついていけない読者がでても置いていくスタイルということです。

 残念ながらわたしは後者の方で、最初ループしているのがうまく拾えませんでした。わたしが愚鈍といえばそれまでなんですけど、文章に「導き」「ガイド」がないので、わたしが物語に感情を入れようとする間もなく次にいってしまうのです。

 

 わたしはもうそれなりの歳の人間なので、読者がどこで感情を入れたり、ひっかかったり、つまずいたりするスピードや箇所がある程度予測できるので、手を打ちながら(あるいはあえてつまずかせながら)物語を進ませることができるのですが、若い方は「先に先に」と書きたいがゆえに気がつくと足が早くなりがちです。「一呼吸置くための一行を書く」という配慮ができるようになると、より読者向きの読み物になると思います。


 ただ結果的に文章が上手なので「合間を読ませる」ことができているので読書量のある人には問題ないのだろうと思います。なので、かえってこの問題は気がつかないかもしれないですね。



誰も気付かないままで流れるように終わっていく夏の日に、微かな物悲しさを覚えた朝。

 

8月1日


 とあるのですが、初見ですと「8月1日ではまだ物悲しい段階ではないのでは?」ですが、二回目読むと「ああ、そういうこと」となります。これはこれでいいのですが、初見で違和感を覚えるのはもったいない気がします。理由はたぶん「DIVEのネタ」をの判断にわずかなブレがあった結果だと思います。

 こういうネタを後半以降にもっていきたい場合には、冒頭部にもう少し感情を配置した方がいいかと思いました、それが後悔であれ、懺悔であれ、焦燥であれ、あるいは再開できる安堵であれ、「その時点では読者には理解できない気持ち」と、「あ、おそらくこの後こんな展開になるんだろうなという匂わせ」を平行させることによって、読者は以降の話に対して腰を落ち着けて読むことができます。

 この点について、西園寺さんの今回の作品「凍てつく屍山血河に寄せて」の最初の一行は上手いなあと思いました。あの一行で読者に「物語全体をどう読むかのルール」というくさびをバシッと入れてるんですね。参照してみてくださいませ。


 あともう一つ、DIVEする事態のわりに感情の起伏がややフラット目なのが気になるといいますか、もう少しメリハリつけてもいいかなあと思いました。事態に比例して表現もレベルを上げていくと「僕」の感情が動いているのがよくわかると思います。正直、僕(の感情)があまり動いていないような気がします。「演じる」という言葉ありますが、わたしは演じないと読者に伝わない感情や意味があると思っていて、わざとらしくても読者に伝えるのが大事ではないかと思うのです。


 結論としましては「足の早さ」を使える狐さんの上手さあるいは器用さをいったん置いて、愚鈍に丁寧に書いてみると、中高年層読者に通用するさらなる本格的な小説になるのではないかと思います。

 おそらく所属しているコミュニティが若い方たちが多いと思うので、こういった広角的な話って意味不明かもしれませんが、ご参考までに書かせていただきました。

 ありがとうございました。これからも面白い作品を書いてくださいませ。

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