参考作品の感想「居候/惣山沙樹選者」

 今回の投稿期間中の書き物は参考作品を書いてくれた選者さんへの感想を書かせて頂こうと思います。

 第一回は惣山さんの作品になります。早々に掲載をしていただき本当にありがとうございます。


 惣山さんの作品の特徴は「とにかく登場人物(キャラ)を大事どころか愛している」ところだと思います。ですから登場人物がしっかりと話の軸となっているので、「キャラAをBとつなげてこういうシーンを書こう」という「型」を持っている結果、小説の生産性が半端なく高いのだと思います。作品の発表間隔が非常に短いのがその証左だと思います。


 さっそく全体的なところから入りますと、本作は賞用のオリジナルということで「僕」と「ギャル」とのBLになっております。さすがにいつものド変態(褒め言葉)ワールドではなく恋愛指向のテイストですね。やはりこういうのを自然に書けるのは惣山さんならではですね。

 惣山さんのもうひとつ非凡なところは「設定を絞って話を書ける」ところでして、無理に世界を広げずにピンポイントかつちょっとした特別感の中で話が進みます。冒頭部でギャルの家のエアコンが壊れたという設定を出してくるのは、「上手だなあ」と思いました。


今回はエアコンなし汗だくプレーとかはないんだなぁと理解しました笑


 あと惣山さんの作品に欠かせないが「煙草」と「ご飯」。この二つが重要なコミュニケーションツールとなっているのが面白いですよね。わたしは普段の生活では煙草を吸わないので、どちらかというと「お酒のつまみ」的な位置づけなので作品にあまり出てきませんが、惣山さんの世界は日常に煙草がとけこんでいるんですよね。これはわたしには書けない生活感なので羨ましいところです。


 バイトをしながらも僕とギャルの距離が確実に近くなっていくのも秀逸だと思います。このプロセスをだらだら書かずに二週間を説明するのはなんというか惣山さんの筆質としかいいようがないんですよね。わたしですとくどくど細かく書いてしまうところです。


>ギャルが何か夏らしいことをしたいと言ってきたので僕は案を出した。

>僕はベッド、ギャルはソファに寝そべり、互いの顔も見ずにそんなやり取りをしていた。


 こういうのって、なんといいますか、「きちんと生活している人」には書けないんですよね(褒めてない?笑)。なんとなく退廃的な学生生活を送った経験を感じさせます。わたしは学生時代は実験とレポートに追われまくっていたので、いいなーと思います。


>よっぽどやな。氷そろそろできたで。食おう食おう


 あ。ここに至るために、怪談話をギャルにさせておいてうまく時間を経過させましたね。こういうところは書き慣れている人なんだよなぁと溜息が出ます。


 その後も「減価償却」「それは意味違わへんか?」と簿記の下りをネタとして上手く回収してますね。


なんやなんや! 惣山さん、めちゃくちゃ細かく書ける人やんけ。


 犀川のイメージは「男子たちがお尻をキャッキャウフフ……」か「とにかく死人しかでない(暴論)」みたいな結構アグレッションの高い「こまけえことはいいんだ系」だと思っていたのですが、改めて解説をさせていただくと、繊細ですね。ずるいですわぁー。こまけえことはいいんだ系の仲間だと思ってたのに、ずるいですわぁー。


今川焼ではなくて御座候なの、ずるいですわぁー。(地域性)


 終盤からラストへ向かっては読んでいただくとして、なんかこう「地に足をついたBL」を読まされて、「……この人、いったいどんな人生を送ってきたん?」って思うようになってきました。ただ者ではないぞ。


 まとめとしましては、手堅くかつ、細かくテーマ夏と二人の関係を演出しながらラストまでもってくる実力はさすがだなあと思いました。きちんと賞レース向けにBL苦手でも読めるように調整されてますし、惣山さんの緻密さを思い知らされて、わたしはなんとなく「同族」だと勝手に思っていた自分が恥ずかしくなりました。


 ありがとうございました。引き続き選考の方、よろしくお願いいたします。











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