シュレッケの森
dede
森の夜明け
シュレッケの朝は早い。
まだ薄暗い中、朝露で濡れた草を掻き分けて進む。
ガサゴソと、音を立てながら。やがて拓けた空間に出た。そこには先客がいた。
「あ、おはよう」
エルフの娘、サナはシュレッケに気づくと水瓶を抱えながら近づいてきた。
「うん、おはよう。朝から精が出るね」
するとサナはおかしそうに笑う。彼女は抱えていた空の水瓶を足元に置いた。
「どこの家でもやってる事じゃない。シュレッケこそ、見回り?どこに向かってるの?」
「コカトリスのトコ。最近ヒナ生まれたじゃん。ちょっと様子見にね」
サナはコカトリスと聞いて嫌な顔をする。
「あー、そう。コカトリス、コカトリスね。ヒナは可愛いけど、大きくなるとおっかないんだよなぁ。あ。卵あったら持ってきてくれる?今の卵なら無精卵だし、食べていいんだよね?そう言ってたよね?」
シュレッケはコクリと頷く。
「うん、ヒナがいるうちはいいよ。あったら持ってくるよ。あったらね」
「うん、それでいいよ。お願い。それで、今日はする?」
「お願いしてイイ?」
シュレッケはサナの表情を伺った。その様子にサナは満足そうに大きく頷く。彼女の長い耳がピクピクと動いた。
「うんうん、いいよいいよ。このお姉さんに任せなさい。じゃ、待ってるね!」
そう言ってサナは水瓶を抱え直して泉に向かう。
朝から偶然シュレッケに会えたので、サナの機嫌はとても良い。彼女の足は大変軽かった。
一方シュレッケはサナの来た方角の空を見つめる。
朝食の支度をしてるのだろう、森の上に五筋の煙が立ち上っているのが見えた。
それからコカトリスの巣についた後の段取りに思いを巡らせる。
どのみち、ヒナのサイズを測るので巣の中に入る必要がある。
ヒナがいるので親は気が立っているから、この時期巣に入るのは好きじゃなかった。攻撃的だし、なによりうるさい。
まあ、でも。彼女が喜ぶなら卵拾いも頑張るか。
そう思い直してシュレッケは先ほどより足早にコカトリスの巣に向かうのだった。
朝から偶然サナに会えて、機嫌が良くなったのはシュレッケも同じだった。
もうすぐ日が昇る。
シュレックが自然保護管見習いを務めている、この森の一日はこれから。
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