3話:グレーウルフをテイミングする
「おいハナ、いい加減機嫌を直せ。ほれ、ハチミツの焼き菓子だ。食え」
「え!? いいんですか?? おいし〜」
リュウ師匠のご無体な仕打ちにムスっとむくれていた私だったが、現金なもので一瞬で機嫌が治った。私はご多分に洩れず、甘いものに目がないチョロ子さんだった。
呼び名はサトウハナといちいちフルネームで呼ばれるのが気持ち悪かったので、下の名前で呼んでくれとお願いした。
「よし、いい顔になってきた。なら次は、実際に魔獣のテイミングができるのかを実験しよう。最初はグレーウルフなんかの雑魚モンスターなんかがいいだろう」
「ええ!? グレーウルフですか!? ちょっと危ないような……」
「まあ大丈夫だろう」
そんなご無体な。またしても心の準備もままならないまま、私は師匠に首根っこを掴まれ、グレーウルフの前に引きずりだされてしまった。私、さっきから命の危機に直面しっぱなしな気がするんですが!
と文句を言っていても仕方がない。とりあえず、まずはグレーウルフさんに媚びでも売ってみるか。
「こんにちは、グレーウルフさん」
「グルルルル……」
あのー、めっちゃ怖いんですが! ってか今にも噛み殺されるか、あの凶悪な爪で引き裂かれるかしそうなんですけど!
リュウ師匠に非難の目を向けるも、どこ吹く風。手をヒラヒラさせて、いいからやってみろとしか言ってこない。
うう……、怖いけどグレーウルフの目を見つめて……、イヤーッ! 口をさらにムキムキにして怒ってらっしゃる! ええい、ままよ!
「カフェインテイミング!!」
私は声を大にし、思念をグレーウルフに叩きつけた。
スキル効果があったのか、一瞬ひるむグレーウルフ。しかし次の瞬間、グレーウルフは俊敏なその足で私に飛びかかってきた。迫り来るグレーウルフの巨大な牙と爪。
いやあああああ!!!
すると私の頭を暴力的な風が掠めると、グレーウルフが口から横一線に両断され、剣圧に吹き飛ばされた体は大木にぶつかり、大きな赤いシミを刻んだ。
「うーむ、どうやらグレーウルフのテイミングはまだ無理のようだな」
「うーむ、じゃないです師匠!! めっちゃ怖かったんですから」
私はその場にへたり込んだ。マジで死を覚悟した。そして、ここが命がいくつあっても足りないようなヤバい場所なのだということを再認識したのだった。
「なるほど、魔力依存が原因か」
しばらくその場で休憩しながら私のスキル説明が書かれた紙とにらめっこしていたリュウ師匠は、そう言うと、おもむろに腕につけていた白い何かの骨でできた腕輪を私に投げてよこした。
「魔力を底上げしてくれる魔獣の骨で作った腕輪だ。貸してやるからとりあえず腕につけておけ」
「え!? これお高いものなんじゃないですか? いいんですか?」
「カフェインテイマーの効果は魔力に依存すると書いてある。これで多少は効き目がよくなるかもしれん」
「ありがとうございます!!」
早速【ボーンアミュレット】を腕にはめた私は、自分自身を鑑定。
名前:佐藤花
職業:奴隷商人の弟子
レベル:1
体力:7
魔力:3(+14)
俊敏さ:6
器用さ:7
カフェイン:2(許容限界7)
スキル:鑑定、アイテムボックス、カフェインテイマー
装備品:ボーンアミュレット
カフェイン2の魔力上昇分が4で、腕輪で魔力が10増えた。
「師匠! カフェイン2で魔力が+14になりました!」
「さっき試した時の魔力値は?」
「カフェイン3で魔力が+9でした」
「じゃあ、次はその腕輪をはめて、カフェインの値も7にしてやってみるぞ」
「はい!!」
確かに成功率が魔力依存なら、合計魔力が12では厳しいのかも。
私はアイテムボックスの中に大量に入れたクロッサム・ベリーをカフェイン7になるまで頬張った。
とその時、割と近い場所でアオーン! という狼の遠吠えが聞こえた。
「丁度いい、あれで試すぞ」
「はい、師匠!」
息を殺して遠吠えの方向に移動すると、岩場の上に二体のグレーウルフが寝そべっていた。どうやらつがいのようだ。
現在カフェインは7、魔力は3+49(カフェイン上昇分)+10(腕輪分)で62。いけるか。
意を決した私は、グレーウルフの前に出た。その場で唸り声をあげるグレーウルフ二体。私は体の大きい方と目を合わせると、
「カフェインテイミング!」
と気合いの言葉とともに思念を叩きつけた。すると、体の大きい方のグレーウルフは目がトロンとなり、その場でゴロンと寝っ転がり、お腹を出した。
体が小さい方(おそらくメス)にも思念を叩きつけると、同じように寝っ転がり、お腹を出してくれた。
これ、成功したってことでいいのかな?
「よくやったハナ。成功だ」
「よっしゃーーーー!!!」
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