第107話 新たなモンスター種?これはもう厄災よね

 トンネル内に入って、シャルルがライトを点灯する。

 それに続いてフェスタ―様が魔法で周囲を明るくすると、前回よりも明るくて、遠くまで見える。

 

 「はぇー、凄く明るいですねぇ……」

 (まーね。あのバッテリーライトのお陰さ。オイラの負担はもう無いに等しいぜ。)

 「大したものだな、これは。」

 (あー、でもルナとウリエルなら同じ事できるぞ?)

 「私がか?」

 (ああ、もうお前らは使えない魔法はそんなにないんじゃないか?)

 「それって、シヴァ様と同じって事ですか?」

 (あーどうだろうな。シヴァ様のはちょっと次元が違うからなぁ……)

 「そういや、あの海で行動できる魔法はお前達でも解析できなかったしな。」

 「そ、そうなんですか……」


 そんな話をしながらも、トンネルを奥へと進んでいく。

 今の所あのイヤな感じはしておらず静かなものだけど、何となく危険な予感が高まってきている。

 警戒しつつもどんどん奥へと進むこと30分くらいだろうか、前回引き返した地点まで到達した。


 「ホントに何も起きないですね。」

 「ああ、何と言うか、この前のアレが嘘のようだな。」

 「あれ?」

 「どうした?」

 「ルナ様、あれ……」

 「な、なんだこれは?」


 鉄道用のトンネルのはずだけど、分岐している?

 引かれたレールは分岐点で途切れているみたいだ。

 分岐している先のトンネルは綺麗な“コンクリート”だったっけ、そういうのじゃなくて岩肌がむき出しの、本当に洞窟のような感じになっている。

 しかも……


 「ルナ様、これって、トンネルはここで終わり、という事でしょうか?」

 「いや、鉄道用のトンネルがこんな構造というのはあり得ないと思う。しかし、塞がっているならまだしも、続いてるというのは終わりではない、のではないか?」

 「でも、この先って普通に洞窟っぽいですね。」

 「うーん、迂闊には進めないな。ひとまず後ろと合流だな。」

 「はい。」


 その場で立ち止まり、シャルル達とウリエル様達を待つ。

 その間に二手に分かれているトンネル、いや、洞窟を観察する。

 左側のほうが径が大きく、右手のほうは天井が低く曲がって先が見通せない。

 ひとまず、ベルとリードを顕現させて偵察する準備をした。


 「どうしたのディーナ。」

 「あ、一旦集合だね。」

 「あれ?トンネルが?」

 「どうしたんだディーナ姉ちゃん?」

 「少しここで小休止よ。」

 「これは……この先は人工物ではない、のか?」

 「アズラさん、人工物って?あ、じいちゃんも来たぜ。」

 「ありゃ、何だこりゃ?」

 「トンネルが、途切れとるのぅ。」


 ひとまず双方の穴にリードとベルを潜行させる。


 「周囲の様子を見るだけでいいよ、危険を感じたらすぐに戻って。」

 《はーい。じゃ、アタシが右だね。》

 《んじゃ、ウチが左に行くよ。》

 「な、なんだコレ?」

 「これはディーナの使い魔よ。カワイイでしょ?」

 「羽が生えたネコとイヌ?」

 「まぁ、ひとまずここで待機だな。使い魔の連絡を待って方針を決めようか。」

 「そうだな。というかコレ、もうトンネルじゃねぇよな……」

 「本来のトンネルは……消滅、しているのでしょうか?」

 「いや、それはあり得んじゃろう。ココだけがおかしいのかも知らんな。」


 ベルとリードが潜行して数分の事だった。


 《わーッッ!!》

 「リード!どうしたの!?」

 《で、でたーッ!!》

 「すぐ戻って!ベルもよ!」

 《わ、わかった。》


 右側の洞窟の奥、どうやらモンスターが出たようだ。

 とはいえ、気配は感じない。というか、これって……


 「右側の穴です。」

 「よし、待ち構えよう。」

 「うん。って、何だアレ?」

 「おい!ありゃアーマーじゃねぇのか!?」

 「バ、バカな!」


 奥からやってきたのは明らかに今までのモンスターとは違っている。

 というか、あっちの世界で見たアーマーに近い。

 でも。


 「え?アレってアーマー!?」

 「ちッ、とにかく殲滅するぞ!」

 「ワシとアズラはバックアップじゃ!」

 「ああ!」

 「ちッ!アタイも実体で参戦する!」


 “キラーベア”と呼ばれる熊に似た形状。

 と、それは前衛の3体だけ?

 後ろの3体って……


 「迷うな!とにかく攻撃だ!」

 「「 はい! 」」

 「何だこれ?」

 「いや、考えんのは後だな、タカ、やるぜ!」

 「ああ!」


 私とルナ様、シャルルとウリエル様、タカとヒロ。

 それぞれペアで1体ずつ対処する。

 と


 「これ、体は金属じゃ、無い!?」

 「アーマーとはまた違うようだな、だが……」


 「やるしかねぇだろうよ!」

 「斬り刻むしかないですね。」


 「おい、硬そうな所を避けて、だな!」

 「ああ、オレが下を狙うぜ!」


 最初の3体はどうにか排除できた。

 が、残りの3体は……


 どう見ても鎧を纏った人間に見える、んだけど。

 圧倒的に大きさが違う。

 身長は2メートルを超え、腕が4本、左右に1本ずつ剣らしきものを持っている。

 こちらの様子を伺い、構えていて動かない。


 にらみ合いが続く。

 あっちは私達の実力が高い事を警戒しているんだろうか、それとも、後続がいてそれを待っているんだろうか……


 緊張で体が熱くなり汗が落ちる。

 と

 1体が斬りかかってきた。

 残り2体は補助に回るようだけど


 「ヒロ!」

 「うん!」


 タカとヒロが正面の1体に斬りかかったと同時に、私とルナ様が左翼、シャルルとウリエル様が右翼の個体へと突進する。


 「な!何だよコイツ!」

 「攻撃が、当たんねぇぞ!」

 「つか、速えぇし、捌かれる!」


 こちらの攻撃は全て剣で捌かれて届かない。

 何より動きも俊敏で力も破格っぽい。

 すでに覚醒状態の私達でさえ、その攻撃も届かず、反撃を避けるので精一杯だ。

 もっとも、洞窟内だから力を抑えているっていうのもあるんだけど……


 「こ、これは一寸マズいかも……」


 もみ合っている中、アズラ様とルシファー様も攻撃に加わるんだけど……


 「いけませんね、魔法が……」

 「ピンポイントで放つのも難しいの、これは……」

 

 私達にも当たりそうなので下手に攻撃魔法を放てないようだ。

 攻防がしばらく続いて、再び間を取りにらみ合う形となった。

 すかさず8人全員で攻撃魔法を放った、けど!


 「何じゃと!」

 「よ、要素が霧散した!?」


 魔法が通用しない?

 敵の前で魔法はキャンセルしたように霧散し、魔法の元であるエレメントが消失した。


 「な、何、コレ……」

 「マズいな……」


 と、4本腕の3体はお互いに目配せをしたような動きの後、目にもとまらぬ速さで撤退していった。

 攻撃態勢を取ったまま、固まる私達全員。


 「な、何だったんでしょう、アレ?」

 「あれ、アーマー、じゃねぇよな……」

 「ああ、まるきり機械でもなく、有機体でもあったみたいだな……」

 「ルナ、ああいうタイプのアーマーも存在していたのですか?」

 「いや、アズラ、それはない。そんな無駄な物は造らないはずだ。全て無機物だからこそ量産できたんだからな。」

 「それより、アレ強かったよな?」

 「俺らの攻撃全然通んなかったぜ?」

 「それに、私達への攻撃は何か手を抜いたような……」

 「いずれにしてもじゃ、こりゃもはや人間や魔族の手には負えんな。」


 新たに出現した脅威。

 それはもう厄災級と言って良い程の個体だったんだ。

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