第108話 とりあえずモンスターはやっつけよう

 想像以上の脅威といえる、このトンネルのモンスター。

 ここにあるかも知れない新たなコアは、あんな手強いモンスターを放出する程のモノなんだろうか。

 というよりも、あのモンスターはやはりこれまでの個体とは大きく違っている事は確認できた。

 もはや、私達以外でアレに対処するのは難しいんじゃないだろうか。


 「まぁ、調査は必須ではあるな。」

 「だな。でもよ、アレどう見てもモンスターでもねぇしアーマーでもねぇよな?」

 「それに引き返したっていうのが信じられないですよね?」

 「という事は、獣以上というか、人間に近い、あるいは同等の知性があるって事?」


 前回の誘い込むような作戦もそうだけど、普通に知性があると見て間違いない、よね。

 というか

 そうであれば、トンネルからも出ずに、ここで何をしているのか、と言うのも疑問だ。


 今までのモンスターは単に人間を襲う事が目的だったように思うんだけど、ここのモンスターは何か違う。

 その何か、がいまいち想像がつかないんだ。


 どうも攻撃してくるのは、今の私達のようにトンネルに入ってきた者に対してだけ仕掛けているような感じがする。

 先日のモンスターのスタンピードは、間違いなくここを目指していたはず。

 でも、そうなると外のモンスターとココのモンスターとの関係が一層謎になってくる。


 もしかすると、ここのモンスターはここから出られないのか、あるいは外の世界には一切用がないのか……

 さらには、外のモンスターとは別物で関係がないのか……


 「いずれにしてもじゃ、アレはこれまでのモノとは違うのは間違いないじゃろう。なら、じゃ。」

 「ああ、先に進む以外、謎を解き明かす手段はない、と言う事だな。」

 「では、どちらに進むべきでしょうね?」

 「ディーナ、ベルの方は何も無かったの?」

 「えーっと、奥まで調べる前に戻したからわかんない。でも、危機というかヘンな感じはしないって。」

 

 と言う事は。

 誘い込むなら左側、何か重要なモノがあるとすれば右側、という判断ができる。

 もっとも、それ自体がフェイクという事も考えられるけど。


 「ルナ様。」

 「そうだな、ディーナ、右に進もう。」

 「では、隊形は同じで行きましょう。それぞれの間隔は広げますか?」

 「いや、それも同じで良いじゃろう、むしろ広げた方がこいつらの力を無駄なく発揮できるような気はするな。」


 私達は右側の少し小さい方へと進む事にした。

 それにしても。

 あれだけ強いモンスター、いえ、モンスターもどきがいる、と言う事に驚いた。

 恐らくは私とシャルル、タカとヒロと同等の強さか、それを上回るかも知れない程と感じたのは事実だ。

 トンネル、いや、もはや洞窟だけど、崩壊を引き起こさないように力を抑制していたとはいえ、だ。


 おまけに魔法が通じないって、もはやこの世界の生物では無いんじゃないかって思える。

 いずれにしてもあの個体が集団で襲ってきたらと思うとゾッとするなぁ。

 すると、やはり前方に何かの気配を感じた。


 「ルナ様、これ……」

 「ああ、さっきの奴らと同じだな。しかもあからさまに気配を放っているな。」

 「と言う事は、前と同じ誘い込みでしょうか?」

 「何とも言えないが、隊形を崩さず限界まで寄ってみるか。」

 「はい。あ、ベル。」

 《何ー?》

 「前方に気配、複数、動きなし、限界まで寄る、って伝えて。」

 《オッケー。》


 今はベルとリードには伝達役をしてもらっている。

 あまり大声を出せない、というか声を上げると響くし、こちらの存在をわざわざ知らせているようなものだからだ。

 本体にはベル、殿にはリードが付いていてくれる。


 気配を消しつつ抜き足差し足で進む事200メートル程。

 一段と気配が強まってきている。

 と、前方が少し明るい?

 フェスタ―様の明かりの魔法は今はやや弱めているんだけど、それとはまた別の光源みたいだ。

 ってことは

 相手もそういう魔法かなにかを使える、しかも真っ暗闇では視界を確保できない、と言う事なんだろうか。


 「ストップだ。」

 「はい。」

 「奴らはまだこっちに気付いていないはずだ、後ろを待とう。」

 「伝えます。」

 「ああ。」


 止まった場所から先は少し空間が広くなっているみたいだ。

 そしてその先、300メートル程の所に、やっぱり居た。モンスターもどき。

 さっきの熊のようなものとトラみたいなもの、数は合わせて10体程だ。

 その後ろにあの人型の4本腕、あれはさっき引いていった個体、よね?

 遠くて良く見えないけど、トラみたいなのは、アレなんだろう?

 服なのか防具なのか、そんなのを纏っているみたいだ。

 息を殺して監視していると、シャルル達が合流した。


 「さて、どうするか、だな。」

 「奇襲をかけても正面から仕掛けても、あれらには同じ事かもしんねぇな。」

 「であれば、陣形を維持しつつ突撃しますか?」

 「あっちの数が多いの。フィンガーチップで行くかの?」

 「いや、アローヘッド、だな。先鋒はディーナとシャルル、軸に私とルシファー、タカ、ヒロ、羽はウリエルとアズラ、で行くか。」

 「んじゃあよ、アタイはワールドに戻らず、だな。」

 「すまんが、それで頼む。伏兵がいる可能性もあるしな。」

 「では、私とルシファーで全員に強化魔法をかけましょう。」

 「あ、待てアズラ。防護魔法だけで良いじゃろう。」

 「なるほど、そうですね。」


 ちょっとフィンガーチップとかアローヘッド?というのが分かんない。

 ルナ様にそう言うと


 「そうか、知らないんだなそう言えば。ちょっと待て、今思念を送る。」

 「「「「 へ? 」」」」


 私とシャルルの頭の中に、ルナ様からデータが送られてきた。

 どうやらタカとヒロにも。

 その二つの陣形の形状、概要、それに見合う戦法などが一気に理解できた。


 「す、すげー……」

 「オレ、一瞬眩暈がしたぜ?」

 「ルナ様、こんな事も出来るのですか……」

 「凄い……」

 「ん?ああ、このあいだから出来るようになったな。」


 これもルナ様やウリエル様の変化の一端なんだろうな、きっと。

 でも、これって凄い能力だよね。

 と、

 今はそれに感心している場合じゃなかった。


 「では行くぞ。ディーナ、シャルル、油断はするな、が、思いっきり暴れろ。」

 「「 はい。 」」


 ルナ様の合図で、私達は陣形を維持してモンスターもどきへと駆け出した。


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