第71話 モンスター討伐隊結成!


 「やっぱり、な。」

 「そう言うんじゃないかと思っていました。」


 私とシャルルは、お母様とシャヴィお母様に決意を伝えたんだ。

 コアを再封印できるまでの間、その方法の探索をしつつ、全国を回ってモンスター討伐をして回る、と。

 元々の始まりがそれだったんだしね。


 「それはかつての英雄様と同じ行動、なのですね。」

 「そうだな、ファルクだったか。アイツはアイツで大した人物ではあったな。ちょっと変わっていたが。」

 「ディーナ、それは構わないのですが具体的にどういう事をするのですか?」


 「お母様、私とシャルルは冒険者として世界を回っていこうと思います。」

 「優先事項はモンスターの排除、再封印の調査は次点、としようかと思います。」

 「まぁ、どっちが優先かというと難しい事ではあるけど、しかしなぁ。」

 「お母様?」

 「いや、心配なのはそれで生活していけるのかってトコなんだよ。」


 確かに、今は冒険者という職業は殆ど廃れている。

 というか、山賊自体存在意義も薄れているし、各国や自治区には対モンスターの兵や治安警備隊もいる。

 つまり、現代では生業としては成立しないお仕事なんだよね。


 「こういう時、アイツならどうしただろうなぁ。」 

 「そうですわね、あの人なら何かいい考えが浮かぶのでしょうけれど……」


 「あら、何やら深刻なお話、ですか?」

 「親子の話の最中じゃったか、すまぬの。」

 「サクラ様、サダコ様、丁度いい所に!」

 「ああ、ちょっと相談に乗ってもらえないか?」

 「え、ええ、宜しいですよ?」


 サクラお母様とサダコお母様にも、同じように私達の決意を伝えたんだ。

 すると


 「そういう事ですか。そうなると……」

 「のう、アルチナ、シャヴィ。この国が今どういう立場にあるか、忘れておらぬか?」

 「と言うと?」


 今のイワセ温泉郷は表向き周囲5カ国の属国、でも、その実6カ国の中心でもある。

 さらにモンスター討伐で言えばお父様亡きあとシャヴィお母様を筆頭にお母様達がその責を担っていると言っても過言じゃない。

 つまり


 「討伐遊撃隊を結成し、活動費、つまり生活費じゃな。それを各国から非課税で受け取ればよいのではないか?」

 「そうですわね、費用といっても高額な報酬は必要ないでしょうし、かつての冒険者への報酬と同じ形にすればよいのでしょうし。」

 「ただ、じゃ。それは周囲5カ国のみならずこの地球全体の国々との交渉も必須になるじゃろうがの。どう思うルナよ。」

 「ルナ様、何時の間に?」

 「というか、サダコは気づいてたのか。」


 「一つだけ言っておこう。生活や活動の資金面での心配など要らぬ。しかしな、各国への周知や同意は得ておくべきだろう。」

 「そ、そうですわね。でも、この子達の生活資金の心配がいらない、というのは?」

 「金なら腐るほどある、何なら、いくらでも捻出できる。」

 「へ?」

 「あー、別に偽金を作るとかではないぞ。ちゃんとした金だ。」

 「ど、どういう事なのでしょうか?」

 「私がこの世界に来てから、アイツから小遣いとして細々と金をもらっていたのは知っているな?」

 「ええ、確かに。ウリエル様も、でしたよね?」

 「それは使わず全て保存してある。金額にして金貨100枚相当以上にもなる。」

 「んでよ、アタイの分も合わせればその倍だぜ?」

 「ウリエル様!?」

 「そんで、コレだ。」


 ウリエル様は虚空から光る石を取り出した。


 「天然ダイヤモンドだ。アタイはこれを自由に採取できる。売れば相当な額になるだろうよ。」

 「極めつけはアイツが使える。」

 「アイツ、とは?」

 「マコーミックだ。まぁ、ほぼ必要ないだろうが、行き詰まったらアイツに金を出させる。」

 「出させるって……」

 「恐喝ではないぞ?きちんとお願いしてだしてもらうのだよ。」

 「というか、そんな事ができるのですか?」

 「ああ、問題ねぇよ。というか、アイツ喜んで出しそうだけどな。」


 要するに、活動資金の面では何ら問題はない、という事なんだろうなぁ。

 お母様達は驚いているけど、実は私も少し驚いている。

 ルナ様もウリエル様も、そうしたお金の事には無頓着なんだと思っていたからだ。

 それが無駄遣いせず貯金していたし、物価取引の知識も知恵も豊富みたいだし。

 そういえば、あっちの世界での修行時にも、あの鉱山村とかでその片鱗は見せていた気がする。


 「となると、じゃ。懸念は各国との話し合いじゃな。」

 「わかった!さっそく俺が行ってくる!」

 「ト、トキワ!いつの間に!?」

 「というかさ、食堂で話してんだから聞こえるって。それにほら、休憩時間だぜ?」

 「あ、もうそんな時間ですか。」

 「くふふ、そういう行動の速さは父親譲りじゃの、トキワよ。」

 「へへ、たまには俺もカッコつけないとね。じゃぁ、早速手配を進めるよ。」

 「あ、トキワ、詳細を詰めなくては!」

 「聞いてたから大丈夫だよ。」


 なんというか、お兄様の行動力は凄いと改めて思う。

 実際、周囲5カ国との関係はお父様亡きあと懸念されてはいたんだ。

 でも、見事そのお父様の意志を継いで何事もなく関係を保ち、なおかつ強化されたのは単純にトキワお兄様の手腕によるものだ。

 それに加えて別大陸との関係も、お父様と同じように続けてたし、さらに拡大もさせていたし。

 お父様の行動力、サクラお母様の知識と知恵、それがトキワお兄様には備わっているとしても、凄いよねぇ。

 

 それから1か月後。

 私とシャルルは、世界各国公認のモンスター討伐隊として認められる事になった。

 隊、とはいえ実質構成人員は私とシャルルの二人だけだ。

 これに関しては、一部の国からは心配の声も上がったらしいけど、魔族や龍族の太鼓判という事で安心したらしい。

 反対したのはただ一国だけで、それもそんな女性二人に重責を押し付けられない、という理由だったそうだ。

 これも同じように実力は地上最強との事で納得してもらえたらしい。

 もちろん、それには姫神子様の助言もあったそうだ。


 ルナ様とウリエル様は当然の如く同行する事となった。

 はじめは私達とウリエル様の3人の予定だったんだけど、保護者は必要だろう、という事らしい。

 もっとも、一緒に付いて来て頂けるのは心強いので大歓迎だ。


 こうして、私とシャルルは次のステージへと進み始めたんだ。

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