第43話 船旅は好きだけど、海は怖いな
なんというか、南米大陸行の船にはすぐに乗せてもらえる事になった。
貨物船だけど、一応の客室も備えてあるらしく他にも乗客が居た。
私達もその客室を取ったんだけど、なんと特別一等船室、つまりスイートルームだった。
「え、えーと、フラン様、この部屋って……」
「うん。ここしか空いてなかった。心配ない、無料。」
「ええー!?」
「この事は他言無用。」
「もしかして、この船ってジパングの船なのですか?」
「そう。なぜわかる?」
つまりはフラン様だから手続きなしで乗れるし船賃も無料なんだろうな。
そんな事を考えていると、船長さんが部屋にやってきた。
「ようこそ我が船へ、姫様。」
「ここではフラン。よろしく。」
「あ、そうでしたな、ところで、お連れのディーナ様とシャルル様、ルナ様とウリエル様、でしたか。」
「「 はい。 」」
「皆様は南米大陸までとお聞きしております。かなりの長旅になりますがよろしくお願いします。何かあれば私に直接言ってもらえれば良いですので。」
「ありがとうございます。」
「お世話になります。」
「フラン様はオーアライで下船になられるのですね。」
「そう。その後の事は頼む。」
「承知しました。では間もなく出航しますので、ごゆっくりお寛ぎ下さい。」
そう言って船長さんは去っていった。
なんというか、海の男って感じがする。
いえ、海の男っていうのがどんななのかは知らないけど。
それからしばらくして、船は動き出した。
船は帆船と蒸気船を合わせたような船だ。
なので航行速度を風に左右されることはあまりないらしく、無風でも進めるんだって。
というか、こんなに大きな船って初めてだな。
船酔いってするんだろうか。
ちょっと、心配だな。
「これでオーアライまでは特に何もすることは無い。ゆっくり寛ぐ。」
「そうですね、オーアライまではどれくらいかかるんでしょうか?」
「3日程。」
「そこから南米大陸だと……」
「ひと月、くらい?」
「な、長旅ですね……」
「まぁ、ゆっくりしとこうぜ。する事もないしな。」
「そうだな。たまにはいいだろう。今日まで忙しかったわけだしな、休養も必要だ。」
「でも、なんか時間がもったいない気もするなぁ。」
「そうよね、せっかくの時間って気もするし。」
(あー、じゃあさ、お前まだ魔法の統制がダメなんだし、イメージトレーニングでもしたら良いんじゃないか?)
(そうですね、ボクも手伝うよ、シャルル。)
「そうだな、お前らそういう精神的な訓練も必要だぜ?」
そうよね。
時間は有限なんだし、特にこの世界に居られるのも限られているわけだし。
お休みは取るけど鍛錬は止めるわけにはいかないよね。
「ということで、ジャーン!」
「へ?」
「航海中の訓練メニューを作りました!」
「はやっ!」
「なんと!」
一瞬にして特訓メニューが書きあがった。
「ルナ、あれ書くの見えたか?」
「いや、全く……」
「これも修行の成果……なのか?」
「……なんの修行だ?」
という事で、ひとまず今日はゆっくりして明日からトレーニングに勤しむことにした。
なので、船室でじっとしているのももったいないのでデッキへ行く事にした。
天気も良く、海も凪っていうの?とても穏やかだ。
デッキに出ると他の乗客も沢山いる。
ちょっと、マズいかな、顔を隠さないといけないけど、隠すものがない。
ちょっとこれは、引き返さないといけない、かな。
「こっち。人が居ない。」
「フラン様!」
「立ち入り禁止のブリッジ。ここなら、大丈夫。」
「え?大丈夫って。」
「なぜ、それを?」
「なんとなく。あなた達、それは魔族や龍族の力?」
「そうです。というか、それに加えてお父様の力、なのかな?」
「龍族には元々ない力なんですけどね……」
「そういうの、ちょっと羨ましい。それがあれば、私もあの人を……」
「へ?」
「あ、いや、何でもない何でもない、うん。」
そうか、フランお母様はまだこの時は。
でも、今後一緒に居ればそうなるだろうから、まぁ、心配はいらない、かな。
大海原を眺めながら、風にあたる。
潮風が心地いい。
船旅って、こういうのが醍醐味だよね。
でも、正直船の旅は怖いのも事実。
時化、あるいは台風なんかに遭遇したら、無事じゃなさそうだし。
それに私もシャルルも、そう、泳げない。
なのに海底に行こうとしてたんだから、よく考えたらアホだよね。
まぁ、そんな事態に遭遇することはない、よね?
うん、きっと大丈夫……
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