第199話 ギンジVS悪魔。

時は少し戻り、ギンジと悪魔の戦闘が始まる。

あっ、ギンジの影の中に居る分身のキジ丸です。


「まさか人間で私の瘴気に耐えられる者が居るとは……では、あなた達を始末しましょう」


指示通り?

俺とサスケさんをわざと見逃したのか?

するとギンジも疑問に思ったようで、悪魔に問いかける。


「初めから僕達を狙っていたような言い方だな」

「ええ、契約者の指示は、あの2人以外をここで食い止めろという指示ですね」

「そんなあっさり吐くとはね。良いのか?」

「問題ありません。あなた方はここで死んでもらいますから」

「悪魔は初めて戦うけど、師匠に言われたんでね。お前を倒して先へ進む」

「そうでなくては、面白くありません!!」


悪魔はそう言うと、自分の周囲に黒い球を複数出現させ、弾丸のように次々と放つ。

全てギンジに向かって飛んで行くとギンジは、左右に素早く動きながら黒球を避け、地面に着弾すると小さな爆発と黒い煙を撒き散らす。


何度か避けた後ギンジは、縮地で悪魔の背後へ回ると拳に魔力を流し、背中に打ち込むが悪魔は、ギンジの後方へ転移して避けると右手を突き出し、大きな黒球を放つ。


弾丸よりも速い黒球がギンジの背中に当たるとドンッ!! と爆発と共に黒い靄が広がり、ギンジを包む。


「くっ」


体勢が前のめりになるだけで、黒球に大した威力は無いようだが黒い靄は瘴気だ。

ギンジは瘴気を吸い込み、少し顔を歪めて動きが鈍くなる。


「あなたは私の瘴気が効くようですね。ここからは、もっと苦しくなりますよ?」


そう言うと悪魔は、大量の黒球を周囲に出現させマシンガンのように放つと、動きが鈍くなったギンジは、全ての黒球を受ける事に。

腕をクロスして防ぐが、やはり黒球は威力はそれ程無いが瘴気の塊のようで、ギンジを包む瘴気が徐々に大きく広がっていく。


これは手を貸した方が良いかと思って影から出ようとしたところで、ギンジが腕をクロスしたながら深く呼吸をしてる事に気付く。


「フゥー……フゥー」


魔眼で見ると全身に魔力を巡らせ、状態異常を治しながら耐えているようだ。

……いやこれは、鍛えてるのか。

ここで状態異常耐性のスキルを得ようとしてるっぽい。

良いね。

それでこそ俺の弟子だ。


数秒間黒球を打ち続けた悪魔は、魔法を止めると今度は、大量の黒い矢を出現させ打ち出す。


黒い矢がギンジに当たる瞬間、ギンジが溜気を放ち、周囲の瘴気と共に矢を弾くとすぐさま縮地で離れた場所へ移動し、悪魔がそちらへ矢を向けて放つとすぐ姿を消して別の場所へ移る。


「……おかしいですね。瘴気を受けてなぜ動けるのでしょう?」


すると次の瞬間、悪魔の背後に居るギンジが言う。


「効かないから」

「なっ!? どぅぼっ!?」


悪魔が振り向くと同時に顔面にギンジの右拳が打ち込まれ、身体を回転させながら吹っ飛んで行く悪魔。

はは、変な声を出して飛んで行ったぞ。


地面に何度か叩き付けられ転がると、バッと跳んで空中でピタッと止まる悪魔。

口を拭い驚いた表情を浮かべながら口を開く。


「なぜダメージを受ける? それにあなた、何人居るんですか?」


悪魔を殴ったギンジと離れた場所に立つギンジを交互に見て、首を傾げる。


「不思議ですね。私にはどちらも本物に視える」

「ああ、どちらも……」

「本物の僕だからな」


と、交互に答えるギンジ。

これはギンジのユニークスキルだ。

悪魔にはどう視えてるのか。

本物に視えるって事は、どちらも魂があるって事かな?


「ありえません。同時に2つの魂が存在するなんて」


おっ、正解っぽい。


「そろそろ終わらせて、先へ進ませてもらうよ」

「ククク、一度攻撃が入ったくらいで調子に乗らないでもらいたいですね」

「その攻撃が入った、というのが大事なんじゃないか?」


そのとおり、この悪魔はまだ気付いてないのか?

ギンジは、悪魔にを与えてるんだ。

普通に攻撃してもダメージを受けない悪魔が、ダメージを受けたのだ。

まあ、俺が教えた流気のお陰だろう。


殴る時に魔力を流す。

これだけで悪魔にダメージを与えられるが、更に流気となると威力は格段に上がる。

流した魔力は内部から破壊し、再生が出来なくなるからね。


「ここからは、もう近づかせませんよ」


すると悪魔は、自分の周囲にバチバチと放電してる黒い球を大量に出現させた。


「終わりです」


そう告げると次の瞬間、黒い球から黒い光線が2人のギンジに向かって放たれるが2人のギンジはその場から姿を消し、離れた場所へ移動すると光線が曲がって2人のギンジに迫る。

追尾式か。


「逃げられませんよ? この状況で私に近付く事は出来ないでしょう?」

「どうかな?」


1人のギンジが縮地で悪魔に近付こうと姿を消すと、悪魔の手前でバチッ! とギンジが弾かれる。


「だから言ったではないですか。近づけないと……ククク、ハハハハハハ!!!」


光線を避け続ける2人のギンジ。

この悪魔、魔法が得意で近接はまったく出来ないようだな。

それで相手を近付けさせない方法を取った。

だがこいつは気付いてない。

なぜ本物の2人が同時に存在してるのかを。


「さあ、終わりにしましょう」


悪魔はそう言うと更に放電する黒球を追加し、挟むように光線を放ち2人のギンジの身体を貫く。

殺った!! と悪魔の気が緩んだ瞬間、悪魔の胸から腕が生える。


「……はっ?」

「これで終わりだ」


腕を掴んで後ろを見るとそこには、3人目のギンジが左手を突き出していた。


「さ、3人目だと? ……フフ、悪魔の私がこの程度の……っ!?」

「だから言ったろ? ダメージを与えられた事が大事だって」


ギンジが腕を抜くと黒い靄が胸から溢れ出し、悪魔の身体が徐々に塵となっていく。


「なぜ、身体が崩れる……ククク、まさかこの私が負けるとは、またいずれ会いましょう。次は、その魂を……」


そこで悪魔は、霧のように四散して消滅した。

それと同時に、奴が呼び出したガーゴイルのような魔物も、四散して消滅。

戦っていたメンバー達は、全員無事である。


メンバー達があの程度の魔物にやられる事は無い。

ただ、倒しても倒しても出現するので、ずっと相手をしてたね。



魔物が消えた事でメンバー達がギンジの下へ集まる。


「では、師匠達の所へ向かいましょう」


頷くメンバー達。

そこで俺は、ギンジの影から出た。


「師匠!?」

「これは分身だ。それで今、面倒臭い敵と戦ってるんだが、ちょっとここで待機しててくれないか?」

「良いですけど、何があるんです?」

「タイミングを見て俺が、全員を俺達が戦ってる場所に転移させるから、転移させたら周囲の敵を殲滅してくれ」

「了解です」


メンバー達も了承する。

さて、構成員達を始末するか。

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