第141話 職神。

才能ある者に職業の証を授ける事が出来るようになったが、それはその時考えるとして次は、ユニークスキル【職神】だな。


【職神】:四次職へ至った者に、職証創造を授ける事が出来る。どんな職業にも転職可能。制限を解除出来る。


…………つまり、剣聖に剣士系の職証創造スキルを与える事が出来るって事かな?

なるほど、専門職である程度実力がある者に、その職業の管理というか職業を与える権利を持たせられるって事か。


これはかなり判断が難しいぞ?

ちゃんと判断して平等に証を与えられる人じゃないと、ただ稼ぎ放題になるもんねぇ。

アマネは、その判断を俺に委ねたって訳だ。


そして転職が可能と……忍者でも転職が可能なのか。

まあ、掟が無い……あっ。


「アマネ、掟はどうなってる? 感覚的に発動しないのは分かってるけど」

「忍びの掟は、管理AI(私)が居る事が前提の掟なので、この世界では意味を成しません」


どういう事なのか詳しく聞くと、ゲームの時の掟は、他人に自分が忍者だとバレたら忍者が召喚されて粛清されるという内容だ。


俺や他の忍者は、この召喚される忍者がどこかに存在する忍者を口寄せしてると思っていたがどうやら違うようで『掟を破った者より強い管理AIの分身が、召喚される』という内容らしい。


つまり、どれだけ強くなってもそれより強い管理AIの分身が召喚され、粛清されるのだ。

だがこの世界に管理AIは居ないので、掟は発動しないとの事。


「キジ丸が掟を作り変える事も可能ですよ?」

「俺が? ん~……まあ、それは後々考えるよ」


今は何も思いつかない。

バレたら俺の分身が粛清に行くとか?

いまその掟が発動したとしたらギンジも対象になるのかな?


そう思ってアマネに聞くと、いま存在する忍者に掟を適用するには、1人1人に会って巻物に掟を施さないといけないらしい。

アマネが言ったのは、今後忍者になる者への掟という意味だったそうだ。

そりゃここで俺が決めた掟が、全ての忍者に適用される訳が無いよね。


「そうだ、他の職業にも掟は作れる?」

「はい、作れます」


ほうほう、忍者だけに掟があるのは、なんか嫌だったんだよな。

その分忍者は、かなり強くなれるからってのもあるけど、他の職業にも何か掟を作るのも良いかもしれない。

その分、強くなれる要素を創れたら良いんだけど。

アマネに聞くと、一応出来るらしい。


「掟が重い程、強くなれます」

「なるほど、縛りと同じか」


頷くアマネ。

だから忍者は強くなれるんだな。



職業を与える立場って難しい。

ってか全人類に職業を与えるのって無理じゃね?

証を与えられる人が何人必要だよ。


……いや待てよ?

街はそれぞれ壁に覆われてるから、それぞれの街に職業を与えられる人が1人居れば、まだ可能性はあるかな?

それも後々考えないとね。


「報酬は喜んでもらえましたか?」

「ああ、最高の報酬だよ」

「それは良かった……キジ丸、以前私が世界について言った事を覚えてますか?」


世界について?


「この世界の事?」


首を横に振るアマネ。

って事はゲームの時の世界についてか。

何か言ってたっけ?


「…………あっ、思いで世界は成長するってやつ?」

「はい、この世界も同じです。人の思いで世界は成長します」


現実になってもそれは変わらないと?

まあ、地球でも同じような事は言われてたけど。

思いか……。


「生物の可能性は無限です」


そう言って微笑むアマネ。

可能性は無限ね……つまりどこまでも強くなれるって事だな。

ただし、どれだけ強くなっても負ける時は負ける。

それも可能性の1つだ。

……面白い。

地球では感じなかったこの面白さ。

良いね。



そんな事を思ってニヤニヤしてるとアマネが、とんでもない事を言い出す。


「気付いていないようですが、今なら訓練モードと似た空間を作れるようになってるはずですよ」

「っ!? マジで!?」

「はい」


俺はすぐさま自分の中に意識を集中させ、先程流れ込んできた情報から訓練モードについて引き出すと、すぐ理解した。


「これでまともな訓練が出来る! ありがとうございます!」


座りながら深々と頭を下げる。

これは最高の報酬じゃん!!


「スキルや職業よりも訓練ですか、相変わらずですね」

「当然、訓練モードと同じ空間なら、死ぬまで戦闘訓練が出来るからな」


これならギンジやミツキにも、ちゃんとした訓練をつけてやれる。

フッフッフッフッ、待ってろよお前ら、必ず強くしてやるぞ!


「では、大統領の事はこちらで調べます。何かあればまたお願いしますね」

「報酬を貰えれば、いつでも」

「そうなると次の報酬を考えておかないといけませんね」

「もう次の依頼が決まってんの?」

「いえ、まだですけど、あなたが喜ぶ報酬じゃないと意味が無いですからね」

「それは……ありがとうございます」


次の報酬が気になるんですけど。



その後、少し話をしてから俺は、ホテルへと戻る。

後の事はアマネがやるだろう。

どれくらいで君主制になるのか聞いたところ、早ければ1月で変わるとの事。

ならそれに合わせて、レインをこちらに連れて来ないとな。

今連れて来てもトップが居ないし、体制が変わるからね。

レインには、仁皇と交渉してもらおう。


翌日、レバックのところの所長にレインを1月後に連れて来ると伝え、その理由は『正式な訪問になるので準備にいろいろ時間が掛かる』と言うと納得してくれた。

当初は、さっと連れて来てこっそり話をしてもらうつもりだったが、大統領や大臣が行方不明になってると分かれば忙しくなるだろうからね。


案の定、その日の内に政府の上層部は、大臣や大統領が行方不明になった事で大忙しになり、てんやわんやの状態だ。

一般人には知らされず、上層部のみが知る事態である。

この混乱の間にアマネが忍者を使って動くんだろうな。


所長に伝えてホテルへ帰ると、ホテルの前で停まった所でレバックに告げた。


「レバック、職業は欲しい?」

「ん? 特殊警備部の仕事はあるから別にいいかな? 結構気に入ってるし」

「いや、そういう職業じゃなくて……魔法使いとレンジャー、どっちが良い?」

「魔法使い? レンジャー? 何だそれ?」

「まあ、警備部ならレンジャーの方が良いか」

「だから何の……」


俺が助手席に座りながら職証創造を発動させると右手に光の粒子が集まり、丸められた紙を紐で縛った物が出現する。


「これに血を一滴垂らせば分かるよ」


そう言ってインベントリから短刀を取り出し、レバックに渡すと俺と短刀と紙を交互に見た後、短刀と紙を受け取ると指を少し斬り、紙に血を垂らす。

すると紙が微かに光り、レバックは目を見開く。


これでレバックも、魔力が使えるようになるだろう。

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