第116話 街案内。
その後、8階の会議室へ行った後、長机がロの字に置かれた会議室で、入ってすぐの席に座って待っていると少しして、ここの所長やお偉いさんの合計3人が集まり、対面に座ると聞き取りが始まり、答えられる事には全て答えた。
どこから来たのか?
カリムス王国。
どうやって来たのか?
魔境を通って。
南方はどうなっているのか?
これについては、少し説明が面倒だったな。
ゼギアというロボットの軍があったり、地下を通るディーラインと列車の説明、そしてスマホのようなデバイスがあると言えば、この国にもあるとの事。
ちなみに列車もあるらしい。
そしてこちらで言う覚醒者の事を南方では、英雄と呼ばれている事などを話し、質問にはよどみなく答えた事である程度信じてもらえたようだ。
最後の質問では。
「キジ丸という男は、危険な人物か?」
と聞かれ、正直迷ったが。
「誠実な対応をする者には、優しく、敵対する者には容赦しない人物だな。拙者も同じだが」
これで質問タイムは終わり、レバックの案内でホテルへ戻り、彼らが取ってくれた部屋で1人、ソファに座ってのんびりしているところである。
あぁ、そうそう、南方の国々は行き来が可能になれば、戦争を仕掛けて来る可能性はあるのか聞かれ、カリムス王国は無いがアバッテ王国は分からないと答えておいた。
レインはしないだろうけど、アバッテ王国の王を知らないからな。
その辺りも含めて、キジ丸殿に聞いてくれと答えておいたぞ。
えっ?
キジ丸で答えるなら今答えても一緒じゃないか?
キジ丸は特殊顧問という肩書があるからな。
そっちの方が信じられやすいと思ったのだ。
部屋でいろいろ考えていると部屋に近付く魔力を感知。
すると扉がノックされたので開けると、レバックが立っていた。
「何か用か?」
「いや、ずっと部屋の中に居るのも暇だろうと思ってな。良かったら街を案内しようかと、身分証が無いだろ?」
うむ、確かに夜まで暇だし、街の観光でもしようかな。
「そうか、では頼むとしよう」
「もう出られるのか? 女は準備に時間が掛かるもんだと思ってたが」
「拙者は旅人だ。いつでも動けるようにするのが基本なのでな」
レバックは納得するように頷き、一緒にホテルを出る。
ホテルを出る途中、どこか行きたい場所はあるのか聞かれ、デパートは無いか聞くと近くにあると言うのでそこへ向かう事に。
ホテルの前に街へ来る時に乗った車が停まっており、それに乗り込むレバック。
俺も助手席に乗り込み「レバックの車なのか?」と聞くと、会社の車らしい。
プライベートでも使わせてもらってるんだとさ。
デパートへ向かう車中でレバックが突然、真剣な表情で言う。
「シズキさん、覚醒者になるにはどうすれば良いんだ?」
「拙者が教えると思ったか?」
「いや、どの覚醒者もその方法は、公表していない。でも、俺も強くなりたいんだ。教えてくれ」
覚醒者になりたいというのは、魔力を使えるようになりたいって事だよな?
「なんのために?」
「国のためだ」
『北の奴らを殺すため』
うむ、心眼で見えた本心は、憎しみか。
それとも恨み?
どっちにしろ、シズキで教える事は無いな。
「無理だ。拙者は、弟子をとらんし、誰かに拙者の技を伝える気も無い。他を当たってくれ」
「そうか……あぁ、気にしないでくれ、他の覚醒者にも断られてるからダメ元で聞いただけだ」
「うむ……道場には通わないのか?」
「ここから遠いからなぁ。それに、今の仕事をやめないと無理だろ? 結構この仕事気に入ってるんだよ」
「なら、このまま続ければ良い」
そして数分後、デパートに到着し、屋上の駐車場に停めて中へ入る。
外套のままだと変なので外套は外して中に入った。
しかし、屋上から階段を使って4階層に降りると、行き交う他の客に物凄く見られる事に気付く。
「何を見られてるんだろうか?」
「あんたのその姿だよ。撮影か何かと思われてるんじゃないか? しかも可愛いからな」
はははは!
シズキは可愛いから見るのは分かるが女も見ていたので不思議に思ったけど、そういう事か。
確かに、撮影っぽいか。
なんて話ながらデパートの中をうろうろ見回る。
4階は、治療院やトレーニングジムが入っており、すぐ3階へ下りると服やアクセサリー、ファッション関係の店が多く入ってるようだ。
売られてる服や帽子は、地球の物と大して変わりは無い。
ただ変わった店を1つ発見。
店の前に立って店内を眺める。
「この店は、武具店か?」
そう、鎧や剣、短剣と言った武器や防具が店内に飾られていた。
「ああ、冒険者用の店だな」
「なに? こちらには冒険者が居るのか?」
「ん? 南方には無いのか?」
「ああ、南方は、探偵ギルドとハンターギルドがあるが冒険者ギルドは無い」
「へ~、じゃあ……」
そこで後ろから声を掛けられる。
「おい、こんな所でデートか? 邪魔だ」
そう言って俺の肩に触れようとしたので、スッと避けながら振り返るとそこには、鉄プレートと手甲を付けた2メートル程ある大きな男が立っていた。
ズボンはカーゴパンツに黒のブーツ。
武器は持っていないようだ。
「おう、悪いな」
そう言って端に寄るレバックだが男は、俺を睨むが片眉を上げグイっと近づき口を開く。
「ほう、良い女だな。どうだ今晩? 俺は冒険者ランクCの『ガルティラ』様だ」
「レバック殿、ランクCとはどの程度なんだ?」
「街の外に出る事が許される最低限のランクだな」
「うむ、その程度か」
「何だとコラ?」
そこで更に店内から怒鳴り声が聞こえてきた。
『店先で何やってんだコラァ!?』
すると男はビクッと身体を震わせ硬直。
今度は誰だと振り返るとそこには、無精ヒゲを生やした短髪黒髪の厳ついおっさんがこちらに向かって歩いて来ていた。
出て来たおっさんは俺とレバックを見た後、男を見て睨む。
「またお前か、次やったら挽肉にするって言ってあったよな?」
「い、いや、こいつらが店の入り口にボーっと立ってたんすよ!」
「あぁ? 本当か?」
「ああ、彼女がこの街に来るのが初めてでね。案内していたところだ。すまなかった」
レバックはそう言って素直に謝る。
「すまなかったな。珍しい店を発見して少し店内を眺めていたんだ」
「観光か……お前も一々絡んでんじゃねぇよ。ボケが!!」
男は頭に手を当てペコペコと謝る。
そこでふと店内に目を向けると、壁にあるケースに入った武器が目に入る。
「武具に興味があるなら中に入って見ても良いぞ……おい、姉ちゃん、聞いてるのか?」
俺は店主が何か言ってるがまったく耳に入って来なかった。
それよりも壁に飾られた武器が気になり、店内へ入ってその武器へ一直線に向う。
「何だ? 気になる武器でもあったのか? と、お前の武器は研ぎ終わってるぞ」
「ありがとうございやす」
そう言って男と店主も中に入って来るが俺は、武器の前に立ってジッと眺める。
「気になる武器でもあったか?」
隣に来たレバックがそう声を掛けて来たので答えた。
「いや、この刀を知ってる」
壁に飾られた刀。
ゲームではランクAの『
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