わくせいのいえ

とm

第1話 わくせいのいえ

届く気がしない

かつて夢見たわくせいのいえ


天を仰いで吐いた溜め息

くうを切って虚しく消え入った



今日もまた空にうっすらと見えるわくせいに想いを馳せるボク

それはまるで地縛霊のようで

ぼんやりとしたわびしさや孤独感にとどまり続けている



もう届かないのならいっそのこと、忘れてしまえばいいのに


そう思う日もあった


でも、実際忘れられる訳もなくて


その日はただ、そのもどかしさに膝をかかえるだけだった



あの日のことなんて忘れられる訳がないんだ


それほどまでにそれは鮮烈にぼくの胸を打った


今だって鮮明に覚えてる

あの赤いろけっとがわくせいに着いてあげた美しいはなび


その後そこで綺麗ないえが建ったということも。


まあそこで、ボクの胸にはなが咲いたのだから覚えていない方がおかしいんだけど




でも、ボクは気づいてしまった


それは、一万年たった夏のこと


その日も相変わらず、昼下がりの空にうっすらと浮かぶキレイなわくせい


この手ではとても届きそうもないそれは、ボクを自転しながら見下ろしていた。



それを見てボクは気づいてしまった


そうか、キミはただひたすらに与えるだけだったんだ


掴めもしないモノをずっと


ずっと ずっと ずっと


ボクはもうどうかしていたのかもしれない


それからはずっと、その、君の存在そのものがボクへの嫌がらせに思えてきたんだ




きっと、今までのいちまん年間、どれだけ打ちひしがれても、期待するのをやめないボクを見て笑っていたんだ




悪魔のような笑みで



ふふっ


ふふっ


ふふっ



ふふっふふっふふっ



その日をキッカケにボクは変わった


いや、正確に言えば夢が変わったんだ


僕は開発に励む


あのわくせいのいえを壊すために

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わくせいのいえ とm @Tugomori4285

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