なら窓を閉めろ。





 消えやしない戸惑いや痛みを

 乱暴にでもスミに追いやって


 今日だった日を用済みにして

 明日だった日を迎え撃つんだ


 昨日みたいに。



 だけど。


 窓の隙間から入り込むのはまた回想

 気の利いた返しなんて出来ないのに


 手を払って

 追い返して


 それでも置き土産のように

 耳の奥にいつも残り続ける


 波の音


 線香花火の残り香

 可愛らしい笑い声


 有刺鉄線に引っかかれた傷

 錆の味がすると笑っていた


 波の来る音

 波の帰る音


 遠ざかっていく


 次第に聞こえなくなったその音

 代るエンジン音はお別れの合図


 思い出。



 でももう思い出だけじゃあ

 気持ちよくなれないんだよ


 もういいから放っておいてくれ。

 もう明日が来ちゃったんだから。




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