ロングよりショートを

伊予紙 陸

ロングよりショートを ①

リコって名前が、もう可愛い。


高1のときに出会って、高3までずっと同じクラス。


私はリコって呼ぶのが大好き。


でも、ケイ君には私の名前を呼んで欲しい。



午後6時30分。夏だからまだ明るい。


リコは時間ぴったりに来てくれた。


リコと私が一緒に帰るとき、また明日ねと言い合う分かれ道。


その側にある小さな公園の白いベンチ。


上を見上げれば高層ビルが見えて、自然的かつ都会的空気。


そこで私は待っていた。


フラペチーノを持って、ここでおしゃべりをすることもあったな。


それがもう無くなるのかもと思って、少し感傷に浸っていた、数分前。



「お待たせ。どうしたの?」


私は顔を上げて、リコの顔を見上げた。


触りたくなるサラサラロングをなびかせて、綺麗な目をした夏服のリコが立っている。


その髪は今でも少し羨ましい。


「ごめん、気づかなかった」


本当は、リコが公園の入り口に入った瞬間から気付いていた。でも、そっちから話しかけて欲しくて、下を向いて気付かないふりをしていた。


ずるくてごめんなさい。けど、私のずるさはこんなものじゃないんです。



少し話したいことがあってと言い、私は立ち上がった。


リコから少し距離を置く。二言目で切り出すんだと心に決めていた。


「来週、リコがケイ君に告白するって聞いた」


きちんとリコに言葉を刺した。


無音が聞こえる。


心臓は冷静に脈を打つ。

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