第28話 創生神デウロ

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 第28話 創生神デウロ

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【レベルがあがりました】

【スキル・変換のレベルがあがりました】

 やった! レベルが百になった!

『名を奪われ、忘れ去られた者』様との約束のレベル・百だ! しかもスキル・変換までレベルが上がった!


 変換・レベル3 : ある場所Aを視認でき、ある場所Bと変換できる


 んんん? これはもしかして……転移?

「おい、トーマ。どうしたんだ?」

「あ、ううん。なんでもない」

 思わずステータス確認に集中してしまった。

 ここはダンジョンの中、いつモンスターが襲ってくるか分からない場所だ。嬉しいが、油断してはいけない。

「ごめん。いこうか」

 とはいえ、今すぐダンジョンを出て神殿に駆け込みたいところだ。

 俺の我が儘で二人に迷惑をかけるわけにはいかないから、我慢する。

 その後、ハンズアイとは遭遇しなかったけど、数体のモンスターを狩ってダンジョンを出た。

「本当に解体を任せていいのか?」

「お前、途中からソワソワして、おかしかったからな。何かしたいことがあるんだろ、いっていいぞ」

「ベンだと素材を悪くするけど、私がちゃんと解体するから大丈夫よ」

「なんだよ、それ」

「だって、ベンは力任せで解体するもん」

「ちっ」

「アハハハ。ごめん。今日は二人に甘えるよ。よろしくね」

「おう、任せろ」

「うん」

 俺は二人に手を振り走り出した。

「はぁはぁ……ふー」

 神殿の門を入ったところで、立ち止まって息を整える。

 神殿の中には村人が三人おり、祈りを捧げていた。俺はゆっくり歩いていき、あの顔と名前が削られた神の像の前に立った。

 やっとこの日がきました。俺はレベルを百まで上げ、あなた様の前に立つことができたのです。

 ゆっくり左膝をついて、目を閉じ頭を垂れる。どうすればいいか分からないけど、手を合わせる。その瞬間、浮遊感を感じた。

「………」

 真っ暗だ。まるで転生前にあのクズ神たちに落とされた闇の世界だ。


【よくきたな、我が眷属よ】

 お久しぶりです。またお会いできて、感激です。

【我に会えて感激するか。だがトーマよ、これはただの通過点にすぎぬ。お前は神と称する者に喧嘩を売るのだ、たかだかレベル・百では話にならぬぞ】

 はい。それは重々承知しています。どうか俺をお導きください。

【ならば次は我の名を世に広めるのだ】

 あなた様の名前を……教えていただけるのですか。

【教えねば、広めることもできぬからな。我の名はデウロ、『創生の神デウロ』だ】

『創生の神デウロ』様……。はい、デウロ様の名を広めます!

【うむ。ヤツらが集めている信仰を我に向けよ】

 ヤツら? ということは複数ですね。それはニルグニードをはじめとした十二の神ですか?

【さすがはトーマだ。その通り、ヤツらの力の源を我に向けよ】

 あいつらが得ている信仰をデウロ様に向けるのですね!

【我が多くの信仰心を得れば、それだけヤツらが弱体することになる】

 それが俺の意趣返しに繋がるのですね!

【そうだ。ヤツらに向かっている信仰心がなくなれば、ヤツらは我のように名を忘れられることになるであろう】

 あいつらを殺すことができなくても、嫌がらせができ苦しませることができれば、デウロ様が力を取り戻し、俺の気も晴れる!

【手段はトーマが考えて実行するがいい。それとな、『創生の神』は隠すがいい。我が名のみを広めるのだ】

 理由を聞いてよろしいですか?

【あやつらを妄信する者らが、『創生の神』と聞いてどう思うか】

 俺を殺すと仰るのですか?

【その可能性は捨てきれぬ。我とてトーマがみすみす危険に曝すことはしたくない。よいか、適当な神として……おお、そうだ。トーマは酒を造っておったな。ならば我を『物作りの神』とでもしておくか】

 デウロ様のご配慮に感謝いたします。

【ヤツらを信仰する者は多い。心せよ】

 はい! 俺は必ずあいつらの信仰心を削ってみせます!

 一つ質問をいいですか。

【我のことだな】

 はい。デウロ様がなぜ名を奪われたのか、それにデウロ様が『創生の神』ということは、この世界を創られた方なのではないかと愚考します。

【たしかにフォースダリアは我が創造した。今は主神と崇められているニルグニードらも、我が創ったこの世界の管理者であった】

 なら、どうしてデウロ様がこのようなことに……?

【簡単に言うと謀反だ。フォースダリアの神は我のみであり、ヤツらはただの神使しんし、トーマが知る言葉で言うなら、天使でしかなかったのだ】

 そういえば、あいつらの背中には天使のような翼とエンジェルリングがありました。

【それは神使の証拠。神である我にはそんなものはない】

 あいつらがデウロ様を追い落とし、そしてこの世界を奪った。まさに神に唾する行為だ。

 俺にやったことを考えても、あいつらが自己中心的なヤツだと分かる。どう考えてもあいつらを擁護する必要はない。容赦なくあいつらの信仰を奪ってやれる!

 デウロ様は俺を転生させてくださり、あいつらに意趣返しするチャンスをくれた。なんとしてもやり遂げないといけない。

 問題はどうやってあいつらから信仰を奪うかだ。

【トーマよ】

 はい。

【ヤツらを甘く見るな。神も神使も直接フォースダリアに干渉はできぬが、勇者を送り込むくらいのことはできる。特にニルグニードは狡猾だ。我の座を奪ったのは伊達ではない。心せよ】

 はい! 転生者に注意するようにします。

 あ、そういえば、俺の元クラスメイトたちはどうなったのでしょうか? どこか遠い国に召喚されたのでしょうか。

【トーマが十七歳になったら、あの者らは召喚される。その際は、ほとんどがお前の敵になると思っていいだろう】

 え? 俺が十七歳になったら召喚されるのですか?

【トーマが転生前に漂った場所は、時空の狭間なのだ。フォースダリアともファストクラウドとも時間の概念が違うのだ】

 時間の概念が違う……だから、俺はあの長い時を朽ちることもなく彷徨ったのですね。

【そろそろ時間のようだ。次はレベルが二百になったら神殿にくるがいい】

 分かりました。デウロ様のご恩に報いるために、俺は必ずレベルを上げ、信仰心をデウロ様に向けてみせます。

【うむ。頼んだぞ】


 闇の世界から神殿に戻った。

 デウロ様とお話しができ、俺の目標がしっかり定まった。やってやる。絶対にあいつらの信仰心を削り、デウロ様に信仰心を集めてみせる!

 立ち上がって、デウロ様の神像に一礼して違和感を覚える。

「……え?」

 なんとデウロ様の神像の台座の名前が、読めるようになっているではないか!?

「あ、顔も……」

 顔も修復されている。

「「「おおおおおおっ!」」」

 振り返ると、祈りを捧げていた村民たちが、目を剥いていた。

「き、奇跡だ! 神の奇跡が起こった!」

「え?」

 三人はデウロ様の顔と名が修復されたことが奇跡だと大騒ぎした。そこに騒ぎを聞きつけた神官が駆けつける。

「何が……は?」

 神官はデウロ様の神像を見上げ呆然とした。


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【個体名】 トーマ・ロックスフォール

【種 族】 半神デミゴッド(ヒューマン・神族)

【情 報】 男 7歳 健康

【称 号】 創生神デウロの使徒

【ランク】 G

【属 性】 神

【加 護】 変換の神(未覚醒)

【レベル】 100

【スキル】 変換・レベル3

【ライフ】 1,859(5,578)

【スタミナ】 1,903(5,709)

【マ ナ】 2,001(6,005)

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