第21話 ダンジョン化

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 第21話 ダンジョン化

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 春になったら弓を教えてもらう予定だったが、馬王造りで忙しくて延び延びになっていた。

 そんな弓を引く。


「もっと引け」

「はい」


 弓を引く腕がプルプルする。

 レベルはそこそこあるので、弓を引くことはできる。でも、安定して引くことがなかなか難しい。


 ヒュンッ。

 矢は明後日の方向へ飛んだ。


「弓を引いた時に、動くからそうなる」

「はい」


 弓を引き、プルプル。ここで静止させないと的を狙うどころではない。


 ヒュンッ。

 的に当てるまでに、まだまだ時間が必要だな。





 俺は毎日剣と弓の稽古をし、さらに馬王の状態を確認しにいく。

 季節は夏になったが、旧坑道内は安定して涼しい。夏でも温度は上がってなく、本当に酒造りにはもってこいの場所だと思った。


 馬王を確認して屋敷に帰ると、いきなりお母さんに抱きつかれた。

 何かあったのかと、少し身構えてしまう。

 お母さんの後ろでは、お父様がニヤニヤして立っている。本当に何があったのだろうか?


「お母さんね、子供ができたの」

「え!?」

「トーマの弟か妹がお腹の中にいるの」


 なんということだ。

 俺に弟妹ができるのか。

 嬉しい。こんなに嬉しいことはない。


「おめでとう、お母さん、お父様!」

「喜んでくれるの?」

「もちろんです! いつ生まれるのですか?」

「予定は九月頃になるわ」

「楽しみだなー」


 その日の夜はご馳走だった。子供ができたお祝いだ。


「旦那様、奥様、トーマ坊ちゃま。本当におめでとうございます」

「「「おめでとうございます」」」


 家族も使用人も皆が喜んでくれて、めでたいと祝った。

 弟か妹か分からないけど、無事に生まれてきてほしい。





 翌日、俺は馬王の状態を確認してから、酒用に整備した旧坑道とは違う旧坑道に入った。

 酒の保管に使っているところから、かなり離れた場所にある旧坑道だ。

 ここら辺はあまり人が近づかないから、丁度いい。


「早くレベルを上げないと」


 弟妹が生まれる。この子が将来この領地を治める際に、少しでも経済力を与えてやりたいと思っている。


 ―――変換!


「………」


 無骨な岩肌に変化はないように見える。

 マナも消費していない。やっぱり岩を金に換えるのは無理か。

 以前から試しているのだが、金銀に変換が成功したことはない。


 多分、今のマナ量では、貴金属に変換できないのだろう。


 暗い坑道の中で集中して変換を試みていたからか、ちょっと眠くなってきた。少し寝るか。

 壁にもたれかかり、俺は寝入った。





「いったーっ!?」


 左足への激痛に、俺は急激に覚醒した。

 そこには、俺の足に噛みついているウサギがいた。


「は? なんで魔獣がこんなところに!?」


 誰だよ坑道に魔獣はいないと言ったのは!?

 俺は左足を振り、ロングラビットを振り払った。

 ロングラビットはウサギ型のモンスターで、体長五十センチメートルくらいだが、それと同じくらい耳が長い。


 ぶ、武器は!? ……ない!

 モンスターが出てくるとは思っていなかったから、剣を持ってきていない。


「どうしたら……!?」


 目に入った松明を持ち、正眼に構える。


「ピキッ」

「こ、こい!」


 毎日剣の稽古をしているんだ。ロングラビットくらい倒せるはずだ。


「ピキッ」


 ロングラビットが飛びかかってきた。


「速……くない?」


 まるでスローモーションのようにロングラビットの動きが見える。

 松明で叩き落とす。


「ピキィィッ」


 さらに蹴り飛ばす。

 顔面に蹴りが炸裂し、ロングラビットは無骨な岩の壁に叩きつけられた。


「ピキィ……」


 ロングラビットは動かなくなった。

 恐る恐る松明を近づけても動かない。生きていたら熱いから動くはずだ。


「勝った? あれで? いっつー……」


 戦いが終わったと思ったら、左足の噛まれたところがジンジン痛み出した。


 ズボンに穴が開き、血が流れ出ている。

 ハンカチで傷口を縛り、とりあえず奥に向かってあるく。

 歩く際に多少痛むが、我慢できないほどではない。


「え……?」


 今度はスライムがいた。水色のジェルの塊だ。

 この旧坑道にはモンスターが多数侵入しているようだ。俺はゆっくりと後ずさり、スライムから離れた。




 旧坑道を出た俺は、屋敷に帰った。


「坊ちゃま!?」


 メイドのサーラに足の怪我を見止められる。


「どうしたのですか、その足は!?」

「旧坑道に魔物が出て、噛まれてしまったんだ」

「何を騒いで……トーマッ!? その怪我はどうしたの!?」


 お母さんが慌てて駆け寄ってきた。


「大したことはないので、落ちついてください。それに体に障りますから」

「これが落ちついていられるわけないでしょ!」

「奥様、治療しますので、離れてください……水の大神アクアリール様に祈りを捧げます。アクアヒーリング」


 ひんやりして気持ちいい。

 肉が盛り上がり、皮膚が再生していくのは少しグロテスクだけど。


 そこにお父様もやってきた。


「何、旧坑道にモンスターがいただと? それはどこの旧坑道だ?」


 モンスターがいた旧坑道を教えると、お父さんは剣を持って出かけた。

 人に被害が出る前に退治するのだろう。





 その日の夕方、お父様が帰ってくるなりショッキングな言葉が飛び出した。


「あれはダンジョンになっていた」


 ダンジョン。それはモンスターを生み出す場所。そのメカニズムは解明されてないため、どうしたらダンジョンになるのか分かっていない。


「まだできたばかりのようで、モンスターは弱いヤツばかりだった」

「どうするのですか?」

「新兵の訓練には丁度いいだろう」


 お父様はすごくポジティブな考えをしている。

 ダンジョンは下手をすると、大量の魔物を吐き出して大災害を起こしかねないものだ。

 それを新兵の訓練に使うとか、剛毅としか言いようがない。

 お父様くらいのレベルになると、ダンジョンもその程度のものでしかないのかもしれないけど。


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【個体名】 トーマ・ロックスフォール

【種 族】 半神デミゴッド(ヒューマン・神族)

【情 報】 男 7歳 健康

【称 号】 ×××の使徒

【ランク】 G

【属 性】 神

【加 護】 変換の神(未覚醒)

【レベル】 81

【スキル】 変換・レベル2

【ライフ】 1,177(3,531)

【スタミナ】 1,203(3,611)

【マ ナ】 1,270(3,812)

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