第3話 環境の変化

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 第3話 環境の変化

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 食生活(母乳の出)が改善され、数カ月(おそらく半年くらい)がたったある日のこと。

 母親が帰ってくる時間になっても帰ってこなかった。どうしたのかとつかまり立ちしながらスクワットをして待っていると、知らない男が物置に入ってきた。


「あう(何者)!?」


 不審者が俺を抱き上げる。


「汚い子ですね……」

「あうあうあー(うるさいわー)」


 不審者は俺を汚物でも扱うように物置から連れ出した。

 不審者が誘拐犯にランクアップした!?


「ああういあうああ(どこにいくんだ)?」


 誘拐犯は答えない。そりゃ、赤ちゃんの言葉が分かるわけないよな。


 とはいえ、これが初外出だ。シャバの空気が美味しく感じる。

 外は畑が広がっていた。小麦かな? そろそろ収穫期のようで、黄金色に実っている。

 何人かが農作業をしているのが見える。ただ、母親の姿は見当たらない。

 早く帰ってこないと、本当に誘拐されちゃうよ。


 男は馬車に乗ったが、俺は木箱の中だ。たしかに小汚いかもしれないが、人権的にどうなんだよ。

 あのクズ神たちの世界に人権なんて言葉はないか……。


 そしてしばらくして、大きな屋敷に入った。

 そこでいきなり裸にされた。

 キャーッ、変態! と言うつもりはない。そもそも俺は赤ん坊だし。


 メイドみたいな女性が俺を桶に張った水につけた。

 冷たいんですけど! あんたらこの中に入ってみなよ、一瞬心臓が止まったかと思ったわ!

 俺の柔肌が真っ赤になるくらいゴシゴシ洗われた。結構痛い。


「ふむ。青銀色の髪に、金色の瞳。どうやら本当に御屋形様の子のようだな」


 俺をここまで連れてきた男がそんなことを言っている。

 その間、メイドたちは手を休めず、俺をタオルで拭き、ベビー服を着させた。


「さて、いきますか」


 男は再び俺を抱き上げる。今度は普通に抱きかかえた。

 そしてある部屋に入る。豪華な部屋だ。


「御屋形様。トーマ様を連れてきました」


 トーマ『様』?

 俺をここまで連れてきた男はタキシード姿の五十歳くらいで、茶髪をオールバックにしている。執事っぽい。


 そして、御屋形様と呼ばれた男は六十歳くらいの老人で、青みかかった銀髪に白髪が混ざった髪と金色の瞳をしていた。


「儂の子か?」

「十中八九は」

「ちっ」


 どうやら俺はこの御屋形様の子供らしい。

 しかし、俺が子供と知って舌打ちするとか、最低だな。

 あの目は子供を子供と思わないクズの目だ。どうせふんぞり返って育児もしたことがないのだろう。


「気まぐれで手を出しただけだが、我が血を受け継ぐ子を産んだのだ。離れで過ごせるようにしておけ」

「承知しましてございます」


 すぐに部屋を出て、さらに屋敷を出た。

 歩いて十五分のところにある別の屋敷に入った。さっきの屋敷より小さいが、それでも物置に比べればかなり立派な屋敷だ。

 ある部屋に入ると、十八歳くらいのドレスを着た綺麗な女性がいて、俺を見た瞬間泣き出した。


「あああ、トーマ。よかった……」


 声を聞いて分かった。この女性は俺の母親だ。

 いつものボロを着てないし、くすんでいた髪は輝くような金髪になっているし、化粧をしてるし、着飾っているから誰か分からなかったよ。

 エメラルドのような透き通った緑色の瞳が記憶の中にある母親と同じだから、間違いない。


「アリューシャ殿は、これより御屋形様の妾として過ごしてもらいます」

「はい……」


 母親の名前はアリューシャというのか。しかし、妾ね。

 あの御屋形様は六十歳くらいだったのに、こんな若い母親に手を出すとは、ロリコンを通り過ぎて鬼畜だな。





 あの日以来、母親と俺は物置生活を脱却した。生活環境はかなり向上した。


 この離れには他にも多くの妾が住んでいる。

 そういった似た境遇の女性たちと。その子供たちとの共同生活が始まったのだった。


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