閑話
第8話 死後の世界
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第8話 死後の世界
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意識が戻ってきた。
俺はまだ生きているようだ。
腹に痛みは感じない。手術の麻酔が効いているのだろうか?
目を開けると、真っ白だった。視力が戻ってきてないのかと思ったが、どうやら違うようだ。
ここは天井も壁も、それこそ床も真っ白で遠近感がおかしくなりそうだ。
しかも俺はあるのかないのか分からない床に立っている。まるで浮いているような、違和感を感じた。
周囲にはクラスメイトたちが立っていた。俺と同じく困惑しているようだ。
「転生者の皆さん、よくきました!」
「「「っ!?」」」
いきなり声がし、振り向くと見たことのない三人の人がいた。
一人は金髪碧眼で絶世の美女、一人は槍を持った茶髪イケメン、一人は柔和な笑みを浮かべた赤毛の美女。
この三人、明らかに人間ではない。三人とも白い翼があり、頭の上にエンジェルリングがある。まさに天使といった容姿だ。
「あなたたちは、我らが管理する世界フォースダリアに勇者として召喚されます」
金髪美女が凛とした声でそう宣言すると、カウンターが現れて赤毛美女が椅子に座った。
「あんたたちは一体なんなんだ。俺たちをどうするつもりなんだ」
金持ちでイケメンで学業優秀でサッカー部のエース。神は彼に二物どころか四物も与えた。
俺にないもの全てを持っているような生徒だ。
「私たちは世界の管理者、言い換えるなら神です。ファストクラウド―――あなたたちが地球と呼んでいる場所であなたたちは死亡しました。よって、フォースダリアに勇者として転生召喚してもらうのです」
金髪美女が噛むことなく流ちょうな口調で説明したように、俺はやっぱりバスの事故で死んでしまったようだ。
そしてあの三人、いや三柱か? 三神が管理する世界に勇者として転生召喚されることが決まったような口ぶりだ。
異世界に転生だけど、召喚だからこの姿のまま召喚されるのだろうか? もし、赤子から始めるのだったら、人生をやり直せるのか?
「あなたたちはファストクラウドで死んでいるので、元の世界に戻ることはできません。拒否をしても転生は実行されます。フォースダリアで暮らすのが嫌なら、自殺しても構いません。もっとも、フォースダリアにはモンスターや魔族がいますので、殺されるほうが先かもしれませんが」
金髪女神は意地の悪そうな笑みを浮かべた。
あのような表情をするヤツは日本、神の言葉を借りるならファストクラウドで俺が住んでいた国にも多くいた。
両親もそうだし、このクラスメイトの中にもいる。
彼らは総じて、俺を見下し、意味もなく攻撃を加えてくる。物理的な暴力も精神的な暴力も平気で行う。そういった種の人種だ。
そんな金髪女神の説明を聞いたクラスメイトたちは、青ざめた。
「異世界転生だなんて、私たちどうなってしまうの?」
「俺、勇者になれるのか!?」
「もうお母さんたちに会えないの?」
クラスメイトのざわめきが広がっていく。
神たちはクラスメイトの動揺などお構いなしだ。
「これより、加護を授けます。一列に並んでくだっさい」
赤毛女神がそういっても、クラスメイトはどうすればいいのかとざわついている。
すると、イケメン神が並べと叫んだ。
そのあまりの迫力に、何人かは腰砕けになった。
「早く並んでください。加護を与えずに送りますよ」
赤毛女神の言葉に、ギョッとしたクラスメイトたちは慌てて動いて並んだ。
俺も列に並んだが、横から乱暴に押されて列からはみ出た。
「お前は一番後ろに並べよ、親ナシ。ここは俺様の場所だ」
「………」
この乱暴者は
空手部のエースだが、性格が粗暴で何度か問題を起こしている。親が議員のため、その都度問題を揉み消している。おかげで退学にならず、学生でいられた。
俺は列の一番後ろに並んだ。
問題になる行動はしない。これまでもそうやって生きてきた。心を押し殺すのは得意だ。
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