10代から20代の時に書いた詩(19)

天川裕司

10代から20代の時に書いた詩(19)

物語を信じるか信じないか。この世間では夢に浸ってるだけでは生きていけない。


――見なくていいものは見なくていい。…そんな理屈が人間に通用するか。アダムとエバの頃から、そうなのだ。――


無欲になれるのは欲に溺れた後だ。


あんな奴等と話す事は無い。どうせ下らん連中だ。



「悪魔に対する絶世の美(うらみ)」

人を殺して何が悪い?こんな汚い事が罷り通る世の中じゃないか。いっそ殺した方が奇麗じゃあないか。そうは思えないか?汚い男と女、世間の首を切って、いつかの殺人事件のように、その血を舐めまくり、僕は奇麗になる。俺がこの上なく憎いのは、善と悪者がこの世に二つ、存在するからだ。男は女の股に恋焦がれて、顔を触って喰い尽し、飽きたら別の女へ。その女は、そういう男の性格を好きがり、内心でその流行に恋をする。その端(はた)で良い事をして、あるかないかの幸福に浸って喜んでる臆病者が居る。そんな差を一気に、〝殺人〟という素晴らしい手段で奇麗にしようというのではないか。絶世とは思わないか。


女の優しさはそのうち地に堕ちるだろう、現代。


平和呆けの副作用。


あの子が学校で人に逸れてしまう、という事実。もし真実(ほんとう)だったら悲しい事だ。もしも真実であるならば。その子の親の話を聞きながら思う事。僕自身、欲の辛さで人間の不条理にある身分、とてもじゃないが親への愛と、親からの愛で、この現実を生き辛くなっている。正直、結局生き続けるにはそんな事、戯言だと思わなければいけないのだ。僕は僕の人生を、一人で、親孝行をしながら生きて行けばいいと言い続けながら、その親からの一方的な愛に縛られ続ける。僕は初めて言うのだが、親が死んだら、僕は強くなる。そんな現状、悲しい事だ。人の死を糧にする事、取り間違えやすい代物。――あの子に平安が訪れますように。


「patient」

母親は精神病だ。僕が改心して、幾ら思い遣っても無駄である。もともと、精神病になっていたのだ、いつからか。だから時々、その時植え付けられたショックが甦って来て発作を起こすのだ。僕はその度に精神が怯える。だが、もともと精神病なのだから、そんな事で怯える事はない。この世に生まれた個人として思うように生きて楽しむ権利は僕にもある。僕は一応クリスチャンである。それなりの道徳は嫌でも頭の中にある。そこら辺の下らない悪さを僕はしていない。人の物を勝手に取ったり、殴って人を傷付けたりなど。それだけ忍耐しているのだ。その忍耐の捌け口が家の部屋の中だとするなら、そこで怯えるものがあれば僕はそれこそ狂ってしまう。世間では誰からも愛されはしない身分だ。階下で皿の割れる〝ガチャン!ガチャン!〟という音を聞きながら、思う。愛されない事が寂しく臆病になる事だと言うなら、僕はせめて神から愛されたい。一方的に。一方的に愛される喜び、僕はそこで感激に打ち震えて居たい。死んで逝った友は、今も心の中に居る。それを厄介と見るか、救いと見るか。その二つしかない僕は、生きる事が難しい。母親の皿を壊すあの音が、二重唱で僕に〝死ね〟と言う音に聞こえる。僕が母親を殺すか、母親が僕を殺すか。父親は合理的に家族の在るべき愛を落ち着いて語る。そう、結局この世では結果しか無いのだ。


神が真実的に、絶対的に、この世に居なければ、何かが狂う。


生きる事は、喜びか、悩みか。所詮どちらも、規定の上でしか、語れない。



〝取り敢えず、落ち着こう。はい、コーヒー。〟


どん底での救い、人は時々そう言うものに助けられる。ではどん底とは何か。人にはそれが必要なのか。辛い、と言えばそれまでなのに、それが必要であるなら何故その壁に躓いて、人間(ひと)は死ぬのだ。


「小さい箱」

 少年の家には、小さな箱があった。その箱は、物置きのすみの方に置かれていた。いや、置かれていた、というよりは放り出されていた、と言った方が適切だろう。

少年はその箱がずっと以前から気になっていた。というのは、以前、その箱をまだその家で使っていたいた頃、目上の人達から“あの箱には絶対触れるな、”と言われていたので、一体何が入っているのか、と気になっていたからである。その少年の家は父親方の家に入ったので、その父親方の兄弟の多さからして、たくさんの人がいる大家族だった。

だから、少年がその箱に近づくのを見る度、“それに触れるな.”というので、少年の好奇心はますますふくれ上がっていた。しかし、今はその箱の代わりにもう少し大きな箱が家に来たので、それまで使っていたその箱は、物置き小屋にしまっている。

少年は今がチャンスだ、と思い、その箱のある物置き小屋に走って行った。―――――――――――――――‐

―――――-雨の降る晩のこと、その家にドロボウが忍び込んだ。その家は人がたくさんいるので、給料日になると、金が入るのだ。犯人はそのことを知っていた。

その金庫がどこにあって、どうすれば開くかも知っていた。犯人はその家の住人だったのだ。その家族の少年の父親の末弟であるKだった。そのKは仕事についたばかりで金がなく、上の兄弟が多額の収入を得ているのを見ていて、イラ立ったのだ。そして、Kは金庫に手をかけた。

すると、雨は急に小雨になった。Kは“まずい..”と思いながら、手早く金庫を開けにかかった。あせったせいか、金庫の横に置いていた置き物が手にあたって、床に落ちた。

窓の外ではまた次第に雨が大降りになっていた。その音を、一番近くの部屋にいたM(少年の母)がかすかに聞いていた。Mは立ち上がって明かりをつけ、金庫の方に歩いて行った。

Kはその足音に気づきすばやく、金庫のある部屋の中央にあるドアの中に入った。もう金は盗った後である。その中央のドアの向こうの部屋には少し小さい窓があり、体の小さかったKはそこから逃げようと考えた。Mは金庫のある部屋まで行き、明かりをつけるスイッチが中央のドアの横にあるのでそこまで歩いて行った。Kはひたすら逃げようと無理矢理、体を窓のすき間に押し入れた。

すると、窓が外れ、下に落ち“ガチャン!”という音と共に窓ガラスは割れた。Kは“マズイ!”とこれ以上なくあせり、一刻も早くそこから逃げようとした。その音に驚き、Mは思わずドアを開けた。その正面にはガラスの破片を持ったKが立っていた。

そのガラスの音で駆けつけた父親とその次男のSが見たものは、少年の母(M)の死体だった。Kはもうあとに戻れないことを悟り、逃げながら、“大丈夫、僕が下宿先にいる、というアリバイはある。みつかるものか.”と開き直った。その窓から、家の庭に出た時、Kは物置き小屋のガラクタに目がいった。そこに捨てられてある、小さな箱の中に、持っていたガラスの破片を入れようと、そのガラクタに走り寄った。破片を入れたあと、盗んだ大金を持って、自分の下宿先へと急ぎ帰った。――――――――――

―――翌日、Kは下宿先で寝ていた。A・M9時過ぎくらいに電話が鳴った。Kは起き上がり電話をとった。

少年の父親からだった。少しあせりはしたが、話している内に目が覚め、落ちついて対応した。Mの葬式のことであった。

今晩、通夜をするから…との話で、葬式の準備のことで皆で相談するから今から来てくれ、とのことだった。Kは車に乗り、家に帰った。家に着くと、皆が集まっていた。少年もその中にいた。少年は子供故にその状況が飲みこめず、走りまわっていた。そして、皆は一同、広間に集まり、盗まれた金庫の話から、強盗の仕業だという話になり、警察に届けようという相談をしていた。Kも、アリバイがあることを確認した上で、賛成していた。

その時、少年は父親の横に座っていた。落ち着きはないものの、家族の一員として、広間に居た。Kは仕事を始めたばかりだったので忙しく、その家にもあまり居なかったたため、少年があの小さい箱に興味があることを知らなかった。

話はまとまり、警察に届けよう、ということと、葬式は明日にしようということで、その準備をし始めた。少年は、話し合いが終わったと察知して、一もくさんに広間から飛び出て、また走り回り出した。一同も広間から出て、電話をかける者、話をしている者、庭に出ている者、様々にわかれた。

その日はカラッと晴れ上げっていたので、庭は気持ち良かった。少年は不意に小さい箱のことを思い出し、物置きに走って行った。それ以前に絶対触れるな、と言われていたので、走り寄る早さは、とても早かった。Kはその時、家族のひとりと話をしていた。話をしながら、ふと庭の方に目をやった。2、3人が集まっていたのだ。

近寄って見てみると、あのMを殺した時に使ったガラスの破片を持っている少年がいた。そのガラスには、まだ血のりがついてあり、その血のりの上にうっすら、指紋が残っていた。

Kは心臓が止まる程に驚き、安定さをとり戻すのにひたすら努めた。一同はその破片の血のりから見て、Mを殺した時に使ったものだと見て、警察に届けることにした。その時、Kは一時的にそうすることに賛成していた。そして、スキを見てその破片を奪おうと考えた。少年の父親がその破片を持っていた。そして、父親が、その破片を警察に渡す用に、大切に保管しようと自分の部屋に向かうのを見て、Kはあとをつけた。

気づかれないように、あとをつけて行き、父親が置いたその破片をつつんだ包の場所を確認すると、Kはまた一同の元に戻った。しばらくして父親は一同のところへ来た。“よし、警察に電話しよう.”と一同は電話の方へ行った。Kは便所へ行く、と言い、その破片のところへ向かった。

なんとか指紋をわからなくしようと思っていたKは布を持ち、足早に父親の部屋に入った。少しふしんに思ったSはKのあとをつけていた。父親の部屋に入っていった瞬間から、疑惑は確信にかわり、走って、部屋まで行った。“貴様!”SはKの背中から飛びかかりおし倒した。

“貴様だったのか!”

Sが言う憎音に、“仕方なかったんだよ..”と小声でKは返答した。内心Kはもう何が何だかわからなくなっていて、絶望、この2文字だけがポッカリ浮かび上がっていた。

その大声に引き寄せられてきた一同は、その意外に驚いていた。ある者は泣き悲しみ、ある者は憤っていた。気がすまなかった(少年の)父親は、とにかくなぐりつけようと、Kの前へ出た。

Kを無言でにらみつけると、狂ったようになぐりかかった。Kは大声をあげて、“ごめんなさい!”“仕方なかったんだ、許してくれ!!”と何度も叫んだ。が、父親の耳には入っていなかった。

Kは突然、ヤケになり、“あ~~~!!”と叫んで、父親に飛びかかり、父親の首を持っていたガラスの破片で刺した。一同は急な現状に青ざめ、2人を引き離しKの手からガラスの破片をとり上げた。血は、その部屋一面程にとび散った。中には気を失った者もいた。やがて警察はその家に来た。―――――――――――――――――――――――――――その小さい箱には以前、その家の印かんと貯金通帳が入っていたのだ。―――


「Independence.」

 どこまで行けば物語と夢話は接するのか。今にもいけそう、いけそう、ってなカンジで全然一緒にならない。それならば夢とは夢遊病だけにすぎない。この世には悪がいる。その事実がかわらない以上、夢を口にしていても、いずれはその毒牙にかかる。ないものねだりの人間だ。それをくり返し、くり返し、くり返していくに違いない。


「幼き日の止まった時計」

ウォルト・ディズニー、ドリームランド、ワールド・サファリ―、…沢山の遊園地。僕は行った。父さんと母さんと、三人で行って来た。時には友達も一緒に。面白い乗り物や、怖い乗り物が沢山あって、僕は楽しいひと時を過ごせた。懐かしい。

この乗り物を乗り終わったらソフトクリームを買って貰う、なんて思い、怖い物見たさでお化け屋敷の方へ近寄って見たり、何かが起きる、みたいな心境で僕はソフトクリームを舐めていた。その時、大人の父さんと母さんはどんな事を考えて居たろうか。帰りしなの道の渋滞の事、家に帰り着く迄の時間の事。僕は両親がどうにかしてくれると思い込んで悩みを知らなかった。子供だったからだろうか。僕がそういう子供だったからか。それはそれで良い事なのだろう。楽しかったのだから。僕のある所での幼い夢想はそこで止まっている。今になって(20歳)その頃の思いは止まっている。でも、今はたった一人の気がする。自分の事は自分で解決しなければならない。〝親の面倒を見る〟なんてものが存在するのだ。ウォルト・ディズニーからは考えられない光景だ。7月11日(金)


この世の中を生きるには臆病過ぎたのだ。


「臆病のポーカーフェイス」

臆病ではいけない。分かっている。でも、どうしてもその影は付き纏う。周りの人達は僕とは関係なく生きている、それが現状だ。そんな個人の気の病などで一々立ち止まっていたら、自分の体がもたないんだ、と、確かにその通りなのだ。〝出来の良い子供を演じる〟と、〝気前の良い友人を演じる〟と、〝勇敢な人間を演じる〟と、この世間ではそういう建前、(演技)をしなければ普通に生きてはいけない。〝本音は分かっている、分かっているが建前でこの社会の一般常識を取り敢えず築くのだ。話はそれから…〟みたく、この世間が変わるのを望みながら変わるのを恐れている。結局団体行動とは、傷付く事、イコール特別なのだ。その特別とは様々、良いものもあれば悪いものもある。だが人間社会の常か、その良いものとは、余程の事がない限り、到達は出来ない。…そんな中で生きているのだ。普通に生きるにしても、隣で誰(なに)かが可笑しくなれば勇気か臆病か、とポーカーフェイスにも出て来る。性格とは自身、臆病は背負った上での〝臆病はいけない〟なのである。


「七夕」

牽牛、織女の二星(りょうしゃ)が天の川で出逢うという伝説。その現場を見ていないロマンに縋る。……

…神に愛されますように…


ある人の句…どうか素敵な人と出逢えますように。


友達甲斐の無い奴等、一時の動作を見て言う。そこに母親の意気消沈見られ、僕としては唯々、臆病に嫌気が差す毎日。

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10代から20代の時に書いた詩(19) 天川裕司 @tenkawayuji

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