エピソード
プロローグ~N≠T♡R・・・1 転入生はグラビアアイドル
プロローグ
彼女が出来た。
生まれて来てから初めての出来事だった。
告白は彼女の方からだった。
だが、俺は返事に戸惑いを隠せずにいた。
何故なら・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
彼氏が出来た。
生まれて来てから初めての出来事だった。
私は、秘めていた想いを彼に告げた。
でも、彼は困った表情だった。
何故なら・・・
(俺・私)達は、義理の兄妹(きょうだい)だから・・・
「あ、あの・・・だな、俺達はその・・・」
俺はたじろぎながら言葉を出そうとした。
中学の思春期の真っただ中でいつも一緒に暮らしていた義理ではあったが
妹から告白されるとは思いもしなかった。
傍から見ても仲が良い兄妹である事は自覚もしていたが、
それは家族として、幼い頃に七条家に義母と共にやって来た彼女はずっと俺に懐いていた。
だから・・・だからこそ俺はこの告白が信じられずにいた。
「分かってる。分かってるよ。でも、それでも私は義兄ちゃんの事が・・・」
俺が困っているのだと察した彼女は涙を浮かべ始めじっと俺の目を見つめた。
「お、俺さ・・・お前が家に来た日から家族として過ごして来て、血は繋がっていないけれど家族の絆の様なものを持ってくれていたのだとばかり思っていた」
そうだ、これは当時中学生だった俺の精一杯の建前だ。
分かっていた。
本当は、彼女が・・・菜々子が俺の事を家族としてでは無く、ひとりの異性として見てくれていたと言う事を。
そして、俺は・・・
「ごめん。これは俺の建前だ。俺も・・・菜々子、お前の事をひとりの女の子として見ていた」
中学生男子としては少々ませた返事だった様な気がする。
だが、菜々子の本気は何故か直ぐに俺の心を動かした。
それはきっと、俺自身も菜々子の事を・・・
「それって!?」
菜々子は、一瞬で泣き止んだかと思えばぱっと明るい表情に変わり俺の返事を待つ。
「あぁ。俺もお前の事が好きだ。いや、きっとお前が家に来た時からずっと好きだったんだと思う・・・」
そして俺達は、秋の放課後の夕日が差す体育館裏で晴れてカップルとなった。
だがそんな幸せな日々は、俺にとってこの日から半年後に脆くも崩れ落ちてしまう事になる。
同学年ではある菜々子は進学校へ通う事となり、受験勉強も大変な時期であった。
俺は自宅から近い普通科へ通う事にした。
「一緒の学校に行かないの?」
「あぁ、俺は地元の普通科に決めた」
菜々子は自分と同じ学校へ進学するだろうと踏んでいたみたいだ。
告白から数日後の話である。
「お義兄、鷹矢なら私より楽に入れるはずだよ?なのにどうして?」
恐らくこの時の菜々子は相当なショックを受けたのだろうと思う。
英才教育と言う所までは行かなかったが、うちの家系は代々勉学には厳しかった。
俺も、幼少期には嫌と言う程叩き込まれた。
そのおかげか、学力は学園1位はお手の物。
武道もある程度嗜む程度に育て上げられて来た。
だが、母親が他界してから養子として引き取られた親父はこれまでのストレスを上手く解消する様に動き、菜々子の母親と結ばれた。
七条家は残された親父の家庭を快くは思っておらず、また母さんの意志も尊重し親父は生きて行く事を決意していたのだ。
「俺、お前が来るまでもずっと勉強を叩き込まれて来たんだ。
もう、そう言う縛りから解放されたいって思ってた。
でも、そう言う家系に育って来たから両親の意志を大切にして来た」
珍しく俺は暗い表情を浮かべながら語った。
すると、菜々子は察してくれた様に言った。
「そう・・・だよね。鷹矢は頑張って来たもんね。だから、これからは私が頑張るよ」
そう言って、苦笑いを浮かべて菜々子は座っていた公園のブランコを動かし始めた。
「すまん。折角菜々子が頑張っているのに俺は・・・」
これが引き金になったのかは分からなかった。
だが、この時俺が菜々子と同じ志望校を受けて受かっていたらと考えると・・・
「ごめんなさい。私、寮に暮らす事になったから」
入学直前の事だった。
菜々子は志望校に合格するやいなや寮暮らしをする事を家族に告げた。
学校へは通学しながらでも通えるエリアではあったものの、
進学校であるが為に勉強なども大変になるだろうと言う事を想定した上での判断だった。
親父も義母さんも納得した上での返答は・・・
「分かったわ。なら貴女がやりたい様にしなさい」
「そうだな。通えない場所では無いみたいだが、通学よりは寮で生活した方が色々と楽かもしれないな。菜々子ちゃんもずっと頑張って来たんだし、そろそろやりたいようにしてもいいんじゃないかな?」
俺を差し置いて話はトントン拍子に進んでいった。
「じゃぁ、鷹矢も頑張ってね」
「週末とか休みの日とか帰って来ないのか?」
「う、うん!帰って来ると鷹矢から離れたく無くなっちゃいそうだから・・・
卒業までは・・・」
どうやら、休みの日すら戻って来るつもりは無い様だ。
「そっか・・・菜々子。お前は頑張り屋さんだから無茶するんじゃないぞ?」
これが俺と菜々子が交わした最後の会話だった。
会う事が叶わなくても連絡くらいは出来るだろうとメールや電話をその後も続けてみたが、そっけない返事ばかりで次第に返事すら来なくなってしまった。
「菜々子、今どうしてる・・・かな?」
夜、ベッドの上で仰向けでスマホを眺めながら俺は呟いた。
そんな虚無が続いたある日の事だった。
♪~
スマホが鳴った。
菜々子からのメールだった。
”鷹矢、元気してる?
ごめんね?連絡取れなくて。
あのね、私、彼氏が出来たんだ♪
だから、鷹矢とはもう別れる事にしたんだ。
鷹矢は、顔も良いし頭だって良いからきっと私以外でも
モテるはずだから私の事は忘れてね。
さよなら♪バイバイ♡
菜々子”
アドレスは紛れも無く彼女のものだった。
だが、こんな砕けた言葉遣いをする彼女を俺は知らない。
何かあったのか相談するにも両親は俺達が付き合っている事を知らない。
俺は何度も菜々子に電話を掛け続けた。
何日も・・・だが、応答は無かった。
菜々子が通う学校へ様子を見に行った。
すると・・・
「いやん♪皆見てるんだからお尻触っちゃダ~メ」
「菜々子すっごく育ってて俺も最高だっつぅ~の♪」
明らかにチャラい男に尻を触られているのは俺の義妹であり、恋人・・・だった
菜々子だった!
「ねぇ?夜空いてる?明日休みだし、届出してあるの♪
一緒に・・・ね?」
「おぉう♪いいぜ。いっぱい可愛がってやんよ♪」
何してんだよ!?・・・
そんな男と一夜を過ごすって言うのか!?
隠れながら二人の様子を伺い、近くにいた生徒に二人の遡上を聞き出そうとした。
「あぁ、あのバカップル?付き合っているんだけど、結構進んでるみたい」
どうやら、体の関係まで進んでいるみたいだ。
俺はその日、自室のベッドで泣きながら一夜を過ごした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
N≠T♡R・・・1 転入生はグラビアアイドル
♪~
チャイムが鳴る。いつもの朝だ。
「どうしたの?顔色が悪いよ?」
「あ、あぁ、大丈夫だ。ごめん。ちょっと不快な夢を見ただけだよ」
あの日の光景が夢に出て来た俺は体調が思わしく無く、
隣の席の子に心配された。
「それって、菜々子ちゃんの?・・・あっ、ごめん。名前出しちゃまずかったよね?」
「いいや、気にしないでくれ。それより、何かきょうは騒々しいな?」
「きょう、転入生が来るんだって。何か有名な子らしいんだけど・・・」
「女子か?」
「うん・・・みたい・・・」
少し不安そうに言う。
彼女の名前は白川莉子。俺の彼女だ。
菜々子が別れを切り出して来た後、俺はしばらくの間立ち直る事が出来ずにいた。
新しい環境下にも次第に慣れ始めた頃、同じクラスだった莉子が俺に声を掛けて来た。
以来、ちょっとした事でも互いに助け合う形となり現在に至る。
「何かあったか?」
莉子が何に怯えているのか不安に思っているのか分からず俺は尋ねてみた。
すると・・・
「何だろう?少しだけ・・・嫌な予感がするの」
莉子の勘は割とよく当たると周囲からも評判がある。
俺が菜々子に捨てられた・・・と言うと聞こえが悪いが、
あの時も、直接的な表現では無かったが、誰かに裏切られたのか?
そう言う表現を使っていた様な気がする。
「よし、皆席に着け!もう知っている生徒もいるとは思うが、きょうからこのクラスに来た転入生を紹介する」
担任はいつもの様なテンションで話を進める。
「入って来ていいぞ」
そう言うと廊下側からゆっくりと教壇の横へと歩いて来た。
長い黒髪を艶やかに靡(なび)かせながら一歩・・・また一歩・・・
「よし、皆に挨拶だ!このクラスは少々五月蠅いかもしれんが、まぁ皆いい奴らばかりだから直ぐに慣れるだろう」
無駄口を叩く担任教師の言葉に続き、律儀に一礼するとしっかりと正面を向いて転入生は口を開けて自己紹介をした。
「皆さん、初めまして。今日から皆さんと勉学を共にする事になりました・・・」
俺は彼女から目が離せなかった。
清楚に佇んだ容姿などでは無く、一瞬で俺は時間が停止した様な衝動に駆られる。
その先の言葉を待つ必要など無かった。彼女は・・・
「一之瀬 美亜と申します。色々と分からない事が多いですが、皆さん仲良くして下さると嬉しいです」
教室中の拍手喝采をも俺は感じずただひたすら目の前に立っていた美少女を見つめる他無かった。
「おぃ、まさかあんな美少女が転入生なのか!?」
「って、一之瀬 美亜ってもしかしてあのグラドルのMiaじゃねぇのかっ!?」
自己紹介後、担任の言葉が入るとクラス中騒々しい事態へと変貌を遂げた。
「なっ・・・菜々子?・・・なのか!?」
確信はしていたものの万が一にでも人違いだと言う可能性もあるだろうと俺は口から確認の言葉が出た。
「やっぱり・・・あの子って鷹矢の妹さんじゃ!?」
喜びに染まる教室の中で俺と莉子だけはただ驚愕で固まる。
莉子も菜々子の顔は知っている。
むしろ会った事や遊んだ事すらある。
「既に察している奴らもいるみたいだが、彼女はグラビアアイドルをやっていてだな、仕事で学校に来られない日もある。
色々と大変な様子だから皆も出来る限り彼女に協力してやってくれ。
そんな一之瀬の席は・・・七条の隣を空けておいたぞ。立ったままで疲れただろう。さぁ、座ってくれ」
何故こんな中途半端な席を空けた!?担任よ・・・
これ程嬉しくも悲しい状況になってしまうとは・・・
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・」
俺と莉子は黙ったまま項垂れていた。
「ここが・・・私の席ですね。今日から宜しくね?えぇっと?」
俺の方を見つめ挨拶をする。
「い・・・一条だ・・・よ、宜しく・・・」
バレて無いよな?って言うか紛れも無く菜々子の様な・・・
でも名前が違うんだよな・・・
何だか気まずい空気が流れるも隣の一之瀬は着席した。
「ね、ねぇ・・・やっぱり・・・」
一之瀬と反対側の席から指で突いて確認を求めて来る莉子が・・・
「だと思う・・・いや、間違いない・・・はずだ・・・」
名前を変えている理由が分からない。
俺達は誰もいない放課後を狙って一之瀬と名乗るグラビアアイドルに声を掛けてみる事にした。
「えぇっと・・・一之瀬・・・さんだったかな?」
余所余所しいとは思われてしまうが、俺は意を決した。
「ふぅ~ん♪その子が新しいカノジョさんなんだ~。可愛い子じゃない」
品定めする様な視線を俺の後ろにいる莉子に向ける。
「貴女、やっぱり・・・」
莉子は一之瀬を睨み付けながら告げる。
「えぇ、そうよ?私は貴女の彼氏である七条鷹矢の義理の妹の七条菜々子よ」
自身満々にそう告げる一之瀬と名乗っていた菜々子。
「おまっ!何でここに来た!?それに、名前・・・」
「あぁ、一之瀬美亜って私の芸名よ。私、あれからグラドルになったの♪」
うちに来た頃から珍しい程の美少女だとは周囲からも言われていて、俺自身も察してはいたのだが、まさか離れ離れになってからそんな事をしていたなんて知りもしなかった。
「あっ、そうだった!くれぐれも学校では私達が兄義妹だって事は内緒だからね?
色々と面倒事になると思うから♪」
帰って来た菜々子の人格は驚く程変わり果てていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「頭が痛い・・・」
「菜々子ちゃんってあんな感じだった?性格歪んじゃってるみたい」
帰り道、俺と莉子は戻って来た菜々子の事について話をした。
「あの日・・・見たんだ」
俺はあの日の詳細について莉子に告げた。
「って言う事は、そのチャラ男が菜々子ちゃんを変えちゃったって言う事なの?
それってもう完全に・・・」
「あぁ、終わっている事案だな」
俺達は頭を抱えながら帰途に就いた。
「ただいま~」
「お帰りなさい。今日も疲れたでしょう?」
家に帰ると義母さんは毎日必ず玄関まで迎えに来てくれる。
「うん。色々と・・・疲れたかも」
こんな日は風呂に入って悪い物を洗い流すに限る。
そう思って風呂の扉を開けた瞬間だった!?
「おっかえり~♪待ってたぞ♡」
目の錯覚だろうか?それとも幻聴だろうか?
「あぁ、これはきっと疲れ過ぎているせいだろうな。よし、先に体から洗うとしよう」
「じゃぁ・・・背中流してあげるわね♡」
湯舟から放たれる湯気がいつもより多く、周囲がはっきりと見えない。
椅子に座り頭からシャワーを掛けると背中が妙に温かくて柔らかいモノが密着している様子だ!
「何だ?この背中の感触は?・・・俺、本当に疲れているのか?確かに今日最悪な事があったけど・・・」
「最悪な事があったならちゃんと悪いモノを洗い流さなきゃね?」
「わっ!?・・・おっ、おっ、おまっ!!何でここにいるんだよっ!?」
察した・・・いや、厳密に言えば最初から分かり切っていた事だった。
ただ、これが現実では無く、俺の勘違いであって欲しいと切に願っていたのだ。
「大丈夫♪オスの洗い方も仕込まれたから♡」
オス?仕込まれた?・・・
「おい、ちょっと待て?今日の朝から色々と見えない事だらけなのだが・・・
先ず、お前は何故俺が通っている学校に来たんだ?」
俺は頭の中を整理しながら、今日起きた出来事の中での疑問を順番に尋ねてみる事にした。
「あぁ~・・・うん♪鷹矢に会いたくなったから?」
会いたくなったから?・・・「から?」・・・
「から?」って何だ?
「あの・・・だな?進学校へ進学して頑張るって言ったじゃないか!?
なのに何故こっちに来る?俺がそっちに行くなら兎も角」
あらゆる疑問が頭に浮かび上がり、俺も落ち着きを保てなかった。
「現役JKグラドルが裸で元カレに密着してるんだよ?
興奮しない?こんな大チャンスもう訪れないと思うんだけど?」
そう言いながら俺の背中に柔らかい二つの果実を擦り付けて来る・・・
「お前・・・彼氏はどうした?」
冷静になって俺は菜々子に尋ねてみた。
あの日の光景がどうしても頭から焼き付いて離れない。
「彼氏?・・・あぁ、捨てられちゃった♪」
は?・・・捨てられた?
意味が分からん・・・
あれだけイチャイチャして肉体関係すら持っていたと噂されていたはずなのに・・・
「あぁ♪硬くなった♡このままシテあげようか?」
そう言うと菜々子はこれまでには絶対に無縁だったはずの淫らな振る舞いを見せて来た。
「いるかぁぁぁぁ~っ!!!」
俺は立ち上がり風呂から出ようとした。
「待ってよ!気持ち良くしてあげるから、ちゃんと体洗って温まろ?」
あの日の目と同じだ・・・
いや、だが既に穢されてしまった菜々子を俺は付き合っていた頃の様な目では見られない。
「捨てられたとかそんな事俺には関係ない!お前は俺を振ったんだ!
もう、俺はお前の彼氏でも何でもないんだ!こう言う事は彼氏にしろ!」
俺は怒った素振りを見せると今度こそ風呂から出て行った。
「鷹・・・矢・・・ごめんね・・・でも・・・鷹矢・・・すっごく硬くなってた♡」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「って言う事は、菜々子ちゃんは実家へ戻って来たって事だよね?
学校も私達の所に来たもんね」
気分が悪い状態だったが、俺は莉子に連絡を入れた。
ベッドの上で悶々とした感情を抱きつつ莉子と話をしていると少しだけ落ち付きを取り戻してゆく・・・
「ごめん。色々と愚痴ってしまって。でもおかげでスッキリしたよ。
莉子は最高の彼女だ!」
「そんな・・・恥ずかしいよ。でも少しでも鷹矢の役に立てたなら私も嬉しいな♪」
そんな感じで莉子との通話を切り、きょうは色々と疲れたから少し早いが床に就いた・・・のだが!?
「うんうん♪いいカノジョさんに来てもらえて私も嬉しいよ!
でも、あの日、私とあの人を見てたんだよね~♪」
「わっ!?・・・なっ、何勝手に人のベッドに潜り込んでんだっ!」
電気を消していざ寝ようとした瞬間、隣から甘く頭がふわふわしそうな程の良い香が俺の鼻奥へと入って来た。
「そんな驚く事ないじゃない?可愛い義妹が夜這いしに来たって言うのに?」
「お前・・・キャラ崩壊してるよな?」
「酷いっ!」
以前はこんな感じじゃなかった。
少し笑い合える様なやり取りはした事もあったが、こんな感じじゃなかった。
「酷いのはどっちだよ!?俺がどんな思いを抱いて来たかお前に分かるか!?
信じてお前を待とうとしていたそんな矢先の出来事だったぞ!
俺は・・・俺は・・・」
俺は悔しくて、情けなくて自分を責めた。
けれど、俺を裏切った目の前の美少女を俺は果たして許す事が出来るのだろうか?
「うつ勃起・・・してるよ?」
「なっ!?」
「ねぇ?こう言うの好きなんだよね?私、知ってたよ。
鷹矢がそう言う性癖だってコト」
そう言うとじっと俺の目をうっとりとした視線で見つめると
俺の股を弄り始めた。
「や、止めろ・・・俺はそう言うんじゃない!俺にはもう彼女がいるんだ!
お前は俺を捨てた・・・だからもう・・・俺達はただの家族に戻ったんだ・・・」
どうしてここで「家族」としてでも受け入れてしまったのだろうか?
俺は、訳が分からなくなりながら、菜々子の思うがままに流されてしまった・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁ~・・・・」
気まずい。
昨夜は結局菜々子の思惑通りになってしまった。
莉子に申し訳無く感じながら、俺は少し早く家を出た。
勿論、菜々子に出くわさない為にだ!
「おはよう♪・・・ってあれ?鷹矢、今日も顔色悪いみたいだけど何かあった?」
莉子の家に着くと莉子が玄関から出て来て今日もいつもの様に二人で登校する。
「い、いや・・・菜々子が戻って来たから気まずくて・・・これからどうしたものかとな・・・」
言える訳が無い。あんな事をされてしまい一晩菜々子が俺のベッドにいたと言う事実を・・・
「ちょっと~!酷いじゃない!可愛い義妹を置いて可愛いカノジョさんと一緒に登校だなんて!一緒の学校なんだから一緒に登校すればいいでしょう!?」
背後から怒りに震えた菜々子の声が響いて来る。
「同居しているからと言っても一緒に行く必要も無いだろ?
それに、俺達の関係を黙っておけと言ったのはお前の方だと思うのだが?」
俺は冷静な視線で菜々子を見つめた。
「ふぅ~ん♪そんなコト言っちゃうんだぁ~?だったらいいや。ねぇ?莉子ちゃん?
夕べの事教えてあげようか?」
ニヘラ顔を浮かべると菜々子は莉子に耳打ちを始めた。
「あっ!あぁぁぁぁぁぁ~久しぶりに義妹とも一緒に登校したくなったかな~?」
耳打ちを遮る様に大きな声で俺は言った。
「久しぶりに帰ったから皆歓迎してくれてね、私も久しぶりに楽しかったって話♪」
「はぁぁぁぁ~」
俺は深い・・・いいや、不快な溜息が肺の・・・心の底から漏れた。
菜々子のこの性格の悪さは、やはりあいつが植え付けたものなんだろうか?
(ねぇ?また勃起してるよ?何かよからぬ事でも考えてたの?学校でシテあげよっか?それとも家に帰ってから?)
(うっ!?五月蠅いなっ!もう構うなよっ!)
耳元でそんな事を囁いて来た菜々子に俺も抵抗して見せた。
これから俺、一体どうなっちゃうんだろう?
END
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