続・モブの俺に無自覚で構ってくる学園一の美少女、マジ迷惑なんだが?
なつめx2(なつめバツに)
第五話 ここは何処? 授業中に遊園地って? 何故っ?
何故か最近、
いや、実際は……俺の隣の席の
何度か俺が席を移動する旨を伝えたのだが、何故か、三人から反対されたのだが。解せない。
そして、俺を含めて四人とも自分で弁当を作っている事が判ると、いつの間にか皆んなで『おかずの交換』をするのもルーティーンになっていたのだった。
それだけのコトだし、彼女たちクラスのカーストトップ3との間にそれ以上の交友関係が生まれる訳もなかった。
ただ、何故か(多分、モブ虐めだ)、今年から4~6人で班を作り週一で
*
そんな訳で……俺といつもの三人は隣町にある『○✕遊園地』(オープン以来三十余年、
「い、いまって、『班活動』で、つまり授業中よね?」
媛乃木が途惑いに、焦りを上乗せして訊いてくる。
それに対して、ポケットから一枚のペーパー(『班活動』の計画案の用紙 )を取りだして川俣が言った。
「我々が
「なんも問題ナッシングにょ(笑)」
舘野も絶好調だ。
今日は全員学園の制服姿だ。学園に集合し、クラス担任からOKを貰ってから、電車に乗って『ここ』にやってきたのだ。つまりNGを貰う可能性もあったのでは、と俺は思っているのだが……川俣はすっ惚けていた。
処で、平日とはいえ見渡す限り園内に人影は見られない。
「貸し切りか?」
「順番待ちの列、ナッシングにょ(笑)」
川俣と舘野の気楽さが媛乃木と俺には信じがたいのだが。
「まずは…」
「『ジェットコースター』にょ?」
「だよなーっ!」
舘野と川俣が遠くに見える『ジェットコースター』に突進していった。
ふと、気が付くと媛乃木は佇んだまま下を向いていた。
「媛乃木さんは、『ジェットコースター』苦手なの?」
俺が訊くと彼女は
「子供の時、大泣きしちゃって……」
「『子供の時』って、何歳くらい?」
「小学校あがる前だから……五歳、くらい?」
「それは普通に泣くよー(笑)」
俺が笑ったら、むっ、とした顔で睨まれた。
「でも、いまなら子供の頃とは、視線も、視点も、違ってる筈だから……絶対大丈夫だよ」
俺はそう言って媛乃木の手を取ると「行こう」と叫んで走りだした。
後で思い出しても何でモブの俺がこんな〝イケメン〟な行動が取れたのか判らない。
でも、彼女は俺の手を振り解かなかった。
そして、『ジェットコースター』の前に辿り着いた俺たちを、二人が〝生温かい〟視線で見降ろしていた。
(慌てて俺が手を離したのは言うまでもない。)
一方、川俣が芝居掛かった言い方をして『ジェットコースター』の搭乗口から一歩下がった。
「君たちに残念なお知らせがあります!」
見ると搭乗口の階段には幾重にも鎖が巻かれ、その前に看板が立てられていた。
『長らくご愛顧戴きました当施設は、老朽化によりお客様の安全の確保が難しくなりました。いずれ新しい施設の設置までの間、誠に申し訳ございませんが閉鎖させて戴きます。 ○✕遊園地』
俺は、ほっ、としたような、残念なような気持ちで媛乃木を見ると、彼女も『微妙』な顔をしていた。
「『新しい施設の設置』って、あるのか?」
俺の問いに川俣がシニカルに答えた。
「無理だろうな(笑)」
「では、次に向かうは定番の『お化け屋敷』でごじゃりますにょ♡」
続けた舘野の言葉に媛乃木が怒りをぶつけた。
「あなたたち、わざとわたしの苦手なモノばかり選んでないっ!」
「ヒメち、『お化け屋敷』苦手なのかにょ?」
「べ、別に……へ、平気、よう……」
「では、参ろう(笑)」
何だか今日の二人は絶好調だった。
そして、『お化け屋敷』の入り口の前で川俣が言った。
「二人組で入ろうぜ……グーパージャンケンな」
結果は、川俣と舘野、媛乃木と俺、の組み合わせとなった。
何故か作為を感じるのは俺だけだろうか。
「あたしら先に行くから、お前ら5分後スタートな」
そして、意気揚々と二人が消えた入り口の前で俺はスマホをとりだして時間を確認する。
「そ、そんなに正確でなくても……」
媛乃木が少し、そわ、そわ、しながら言った。
「ちゃんと守らないと、後でナニ言われるか……」
「ま、まあ、そうかも…」
「もしかして、媛乃木さん……『お化け屋敷』も苦手なの?」
「しょ、そんなコト……な、ないわよっ!」
俺は『苦手なんだな』と思ったが口にはださなかった。
そして、きっかり、5分後。
俺が『お化け屋敷』の入り口まで進むと、隣まで進んだ媛乃木が早口で言った。
「た、只野くん……て、て、手を繋いで、良い?」
勿論、俺に『否や』があろう筈もなく、手を差しだすと媛乃木が直ぐに握ってきた。少し汗ばんでいるようだった。
入り口は扉でなく布が垂れ下がっていて、左右に捲って入るようだった。
俺たちは並んで一歩を踏みだした途端 ――
入って直ぐの床が、ボコっ、と沈んだ。
「きゃあああああああっ!? 」
エグイ引っ掛けだ。
媛乃木が悲鳴と共に俺の腕に抱きついた。
俺も心臓が、ばく、ばく、いったが秘密だ。
その『引っ掛け床』からあがり、数歩歩いて息を整えた俺たちは薄暗い通路を慎重に進み始めた。
気が付けば媛乃木の五本の指が俺の指の間に絡めてきていた。
(ちょ、待てっ……これ〝恋人繋ぎ〟というヤツ、では?)
それから薄暗い通路を進んで角を曲がった時だ。
角の向こうに〝絶対〟何かあると思って注意していた俺の首筋に『濡れた何か』が貼りついた。
「わきゃあああああああああっ!? 」
多分、媛乃木の首筋にも同じモノが貼りついたのだろう。前にも増して大きな悲鳴があがった。
確認すれば〝定番〟のコンニャクである。
それを示すと媛乃木がひったくって放り投げた(まあ、後で職員が設置し直すだろう(笑))。
そこからは怪しげな光や声などのギミックで、まあ、無事に通過した。
ただ、困った事に、媛乃木が手だけでなくいつの間にか身体ごと抱きついてきていた。
つまり、俺の右腕は彼女の推定88cmFカップの〝谷間〟に、すっぽり、と挟まっているのだった。
良い匂いがするし、柔らかいし、体温すら感じられて、俺は段々と前屈みになって歩き難くなっていった。
その先に、まるで『お坐りください』とばかりのベンチがあった。
俺は絶対何かのギミックだと思ったが媛乃木が、ほっ、としたように近づいて腰を降ろした。
何も起こらなかったし、彼女もかなり消耗しているようだったので俺も諦めて隣に坐った瞬間 ――
二人の目の前に血だらけの(多分)人形がぶら下がっていた。
「きゃあああっ!? わきゃあああああああああああああっ!? 」
多分一人の体重では反応せずに二人分の体重で反応するギミックだった。
まんまとしてやられたが、問題は媛乃木が泣きながら俺にしがみついてきた事だ。
さっきまで散々俺の右腕を挟んでいた〝二つのけしからん膨らみ〟が正面から抱きついてきたのである。
しかも、俺の首筋に媛乃木の唇が当たって荒い呼気が掛かっている。
俺はこのまま昇天するかと思った。
媛乃木の、匂いも、体温も、柔らかさも、三重苦で俺を責め立ててきたのだった。
それから数分、やがて媛乃木の呼吸が普通に戻り、彼女が恥ずかしそうに言った。
「あ、あと、1分……こうしてても、良い?」
俺の首筋に息を吹き掛けながら言われては断れなかった。
了解の合図に彼女の背を、ぽん、ぽん、叩くと媛乃木が追加の要求をしてきた。
「い、1回だけ、きゅっ、て抱き締めてくれない?」
(姫さま、それは〝ご無体〟でございます!)
と、思ったが俺は両腕を彼女の背に廻して、きゅうっ、と抱き締めた。
脳天が、ぐわん、ぐわん、と揺さぶられるほどの衝撃だった(笑)。
それから、漸く身体を起こした媛乃木が最後にやってくれた。
多分、俺の腿辺りに手を突いて身体を起こすつもりだったのだろう。
しかし、彼女が手を突いたのは、先ほどから歩行困難に陥らされていた〝特殊な状況に至った部位〟であった。
「おほぉうっ!? 」
俺は脳天につけ抜ける痛みというか快感というか、訳も判らず悲鳴を漏らしていた。
俺の悲鳴と掌に感じた違和感から媛乃木が視線を落とす。
「きゃっ!? 」
小さな悲鳴をあげて媛乃木が飛び退いた。
そのまま俺の隣に坐った媛乃木はその手を、ぷる、ぷる、振っていた。
(おいっ!? )
まあ、気持ちは判らんでもない、が。
「ご、ご、ごめんなさいぃ!? 」
媛乃木がそこを、ちら、ちら、見ながら謝ってきた。
まあ、悪気はないのは判るので俺は手を、ひら、ひら、振って答えた。
正直息が詰まって声がでなかったのだ。
「わ、わたしの……せい、よね?」
まあ、色々と彼女の所為だが、どこまで理解しているか判らなかった(笑)。
「えっと、少し…ここで、待つ?……それとも……えと、えと……て、手で…」
何か言い掛けた媛乃木は慌てて立ちあがって後ろを向いた。
「な、な、な、なんでも…にゃい…かりゃ!」
彼女は彼女で〝一杯いっぱい〟だったようである。
俺は少し休んで痛みも治まったので立ちあがって言った。
「行こうか」
手を繋いだ方が良いのか判らなかったが、媛乃木は先ほど、ぷる、ぷる、振っていた方でない手を繋いできた。
外に出たら速攻で洗いに行きたそうであった。
それからは殆ど何事もなく出口に着いた。
俺たちが手を繋いでいたのに気づいた二人がまた〝生温かい〟目を向けてきた。
しかし、俺は「トイレ行ってくる」と断ってその場を離れたのだった。
「何か歩き方が変じゃないか?」
背後で川俣の声が聞こえたが、その他は何を言っているのか聞こえなかった。
それから漸く〝ナニ〟も平常を取り戻して、俺が三人のトコに戻ると川俣が呆れたように言った。
「なんだ?…えらく時間が掛かったな?……大きい方か?」
それに舘野が口を挟む。
「白い方じゃないかにょ?」
「白い方って…お、お前なあ!」
「さ~あ?…ヒメち、知ってるかにょ?」
見ると媛乃木は真っ赤になっていた。
(まあ、この歳で知らない訳ないか……でも、あのイケメンとは噂だけであって欲しいものだが)
俺は、ちら、と舘野を見て思った。
(コイツは、当然【済み】だろうな(笑))
「タダち、いま失礼なコト考えてないかにょ?」
(なぜ判った?)
その後、軽く昼食を取ってから、『コーヒーカップ』とか『メリーゴーランド』とか幾つか遊んだ。
どれも一昔前の施設だが、千葉とか大阪とかの遊園地というよりテーマパークと比べると逆に(一周廻って)新鮮に思えたりした。(尤も、俺的には千葉も大阪も映像で見た限りではあったのだが(笑)。)
そして、西日が差し始めた頃、最後は『観覧車』でシメだろう、という話になった。
しかし、席順は突っ込み処満載だった。
俺の右隣に川俣、左隣に舘野、向かいに一人で媛乃木、という布陣となった。
(いや、
媛乃木と俺が『お化け屋敷』から出てくるまでの間、何か策を練っていたに違いなかった。
俺を弄るというよりも、俺をダシにして媛乃木を弄りたかったのだろう。
媛乃木が二人に愛されているのが良く判ったが、向かいに一人で坐らされた彼女の顔色は危ないゾーンに差し掛かっていた。
そして、舘野がそれを〝レッド〟にぶち込んだ。
「シズち、羨ましかったらこっちに坐るにょ♡」
その言葉をどう取ったのか判らないが、媛乃木の行動は想像の遥か斜め上をいったのだった。
「そうね、そうする!」
立ちあがった媛乃木がこちら側に寄ってきた。勿論、それでゴンドラが傾く事はなかったが、あまり芳しくない。
更に、媛乃木の取った行動は俺にとってあまりに芳しくなかった。
彼女は俺の前で、くるり、と向きを変えると、何と〝俺の膝の上に〟坐ったのだ。
『お化け屋敷』での〝胸の暴力〟も大概だったが、今度は〝尻の暴力〟である。
悪い事に、彼女には罪の意識も、意図もないのである。
しかし、嫌でも反応はスル。
媛乃木の柔らかな尻肉に挟まれるようにして、俺の〝困ったちゃん〟が起動を開始した。
―― ずん、ずずずんっ、と伸びあがる。
「ひぃん!? 」
更に彼女の小さな悲鳴がそのシステムに過負荷を掛ける。
―― ずずずん、ずん、ずずんっ!
更に、更に、右からは推定85cmEカップの、左からは推定99cmHカップの脇乳が俺の腕に密着してきたのである。
俺の人生も今日で終幕か ――
命尽きる時に過分な
小一時間後、俺はデ○ーズに居た。
本日の班活動の総括が行われた……らしい。
そして、結論がだされ、川俣がそれを『班活動の計画案』の用紙の『総括欄』に記したモノを俺は見させられている。
『平日の遊園地の実態調査と問題点の洗いだし、並びに改善策の立案』
その『結論』というか『方策』として書かれていたのは一行のみ。
「『○✕遊園地』の改善策 ―― 無理」
「おいっ!」
(良いのか?…コイツらに任せておいてっ?)
俺の心に『赤点』の不安がいや増した。
画して、班活動三回目も無事終了した……のだった。
【つづく】
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