変態が逝く! みんなが逃げる!

しょうわな人

第1話 思い出す!?

 俺の名前はカブ·クワガー。


 クワガー伯爵家の三男。


 そう、いわゆる穀潰しと言われる立場だ。


 しかし、俺はそれに甘んじる事なく探索者として登録をし、日々街の為に探索を行っていた。


 探索者とは、街の近くにあるダンジョンに潜り込み素材を入手してそれをギルドで換金して生活を送る者たちの事を言う。


 探索者にはランクがあり、六級から始まり一級まで上り詰めれば貴族よりも贅沢な暮らしができる程の富を得られるのだ。


 俺は俺をバカにする兄上二人を見返す為に、学園卒業後に探索者となった。十八歳に登録して早くも四年。俺は二十二歳となっていた。

 ランクは…… まだ五級だ……


 だってしょうがないじゃん! 怖いんだから!

 

 ダンジョンの中ってモンスターが居るんだぜ!


 それも兎なのに角があったり、槍もってたり、魔法を使ってきたりするのが!!


 俺は四年間、頑張ったけどまだ一階層を攻略できてないんだ。


 そんな俺を見かねて学園時代の同級生パーティーが俺を荷物持ちとして雇ってくれたのが今日。


 そして、五階層まで来てそのパーティーでも倒せないゴブリンキングが出てきて、俺を囮にしてみんな逃げていったのがたった今の事だった……


 死ぬーっ!! これマジで死ぬっ!?


 さっきからニヤニヤとしながら俺が恐怖に震えながらも剣を構えているのを眺めているゴブリンキング。その一撃は岩をも砕くと言われている。


 そんなの食らったら間違いなく死ぬ!


 イヤだ! まだ死にたくないぞ俺は!!


 だけど現実って奴は非情なモンだ。


 何とか一撃を躱した俺だがホッとしたのもつかの間…… 横から飛んできた奴の回し蹴りに肋骨三本をへし折られながら、俺はダンジョンの壁に頭を強打して、その意識を失った……



 気がついたのは奇跡だろう。俺は意識を失ってどれぐらい時間が経ったのかわからないが目を覚ました。


「うん? 天国にしちゃ意識を失う前に見た景色と同じだな?」


 キョロキョロと辺りを見回しギョッとしてしまう。

  

 そこにはボロボロのボロ雑巾になったゴブリンキングが倒れていて、そして俺を見てプルプルと恐怖に震えている女性探索者がいた。俺も名前を知っている、三級探索者のイリアちゃんだ。

 俺と同じく学園を卒業してから探索者に登録して今は二十歳。俺の二個下だからな。

 

 あれよあれよと才覚を表して二年で三級にまで登ったギルド期待の新星である。俺は震えているイリアちゃんに立ち上がりながら声をかけた。


「有難う、イリアちゃんが助けてくれたんだな」


 そう声をかけながら、何とかゴブリンキングを倒したが恐らくは紙一重の勝利だったので今さらながらに恐怖を覚えて震えているんだろうイリアちゃんに近づいて行くと、ズザザザァーと座ったままイリアちゃんが下がった。

 そして思ってもみなかった言葉を投げつけられた。

 

「イヤッ!! 近寄らないで! 変態!!」


 変態、へんたい、ヘンタイ……


 その言葉を耳にした瞬間に、俺は頭痛に見舞われそして……


「おっ、思い出したっ!!」


 俺は前世を思い出していた…… 


 そしてどのようにしてこのゴブリンキングがボロ雑巾になったのかも……


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