トゥルーレの謎〜世界放浪で嫁探しに旅に出たこと忘れてました〜
海街 鯨
第1話 殺す気ですか?お兄さん。
「いやぁぁぁあぁ!」
「はいはい駄々こねないの〜」
少年は部屋の隅でうずくまっている。弟に背を向かれても、ひょうひょうとした様子で兄はなだめていた。弟の名をコヨーテ。兄をカニスという。
「俺は行きません!断固拒否です!」
「え〜。何がそんなに嫌なの〜手先が器用だから職には困らないでしょ〜」
「知りません!手先うんぬんなら、ここでも十分やっていけますっ!!」
「う〜ん。…………困ったな〜」
ああ言えばこう言うという感じで、コヨーテは先日からずっと駄々をこねていた。
よく見ずともこの兄弟、容姿が瓜二つである。白銀の髪、金色の瞳に縦長の瞳孔。背丈、骨格。唯一違うといえば、兄のほうが甘いフェイスで弟のほうが筋骨隆々という所だろうか。
「コヨーテは聞き分けのいい子なのに…」
「それは昔のはなしでしょぉぉ!それに、兄さんは旅にでてないでしょうが!!」
この兄弟が住む村トゥルーレはとある風習がある。「十五の男子に旅をさせる」という風習だが、旅に出ないという決断をするにはあまりにも厳重すぎて、掟と言った方が楽しかった。
この風習の目的は嫁探しである。と言ってもこの村、トゥルーレは周りを海に囲まれた島の中心に位置しており、トゥルーレ以外の村はない。村だけで子孫を繁栄させるには、なかなか困難であった。
そのため、海を渡って嫁を見つけ妻子とともにトゥルーレに帰ってくることで村を繋ぎ止めようという方法に至ったのだ。そしてできたのが この風習である。
「だから、それは15の僕が旅に出るほど体が強くなかったって前言ったでしょうございます?」
「俺も弱いもん!!!」
「村一番の戦士が何をいう。」
兄弟の後ろから声がした。
「「村長…。」」
コヨーテを蔑むように見つめている。
「カニス。」
「は〜い。」
「兄さん?!」
「ひどいよ…………いや…」
コヨーテはタオルを巻かれその上から縄で縛られ拘束されていた。
「まだ言ってら〜」
「観念しろ。コヨーテ。」
身動きができない状況で小舟に乗せられている。
村長は思いっきり小舟を蹴った。ギリギリ岸に繋ぎ止められた小舟は浅瀬に投げられ自由になった。
どんどんと岸が遠くなる。
「殺す気ですかぁ?!お兄さぁーん!!」
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