片翼の君へ

aaaaaaaaaaa

片翼の君へ

この前君は私のどこが好きなのって聞いたよね、僕はすぐに顔って笑って返事をしてしまったけれど伝えたかったのはそうじゃないんだ、本当は面と向かって言うべきなのかもしれないけれどうまく言葉にできる自信がないから手紙を書きます。

初めて君に会った時のことを鮮明に覚えている、綺麗な顔だと思った。優しさと思慮深さと諦念が浮かぶ美しい顔だと思った。正直に言うと最初は同い年だなんて思わなくて何個も年が上だとおもって接していたよ。それくらい君は長く人生を歩んでいるように見えた、ある日君の左腕が義手と聞いて僕は妙に納得したんだ、だからかと。


それから僕は片腕で生活してみた、車に乗る、玄関のカギを開ける、顔を洗う、スマホを触る、食事をする、皿を洗う、体を洗う、服を着る、布団をめくる。どれも倍以上の時間がかかった、片腕ではそもそもできないこともあった、世界は腕が二本あることを前提に形作られていることを知った、腕が一本で十分にできることなど数えられるほどしかなかったよ。君の笑顔の価値が違うことを知った。


そしてこの前君が本当は飼育員になりたかったけど諦めたといっていた、その時僕はうまくフォローできなかったけれど実はあの時、君は今までの人生において色々なことに諦めて来たってことを漸く察したんだ。皆の輪に入ること、ドッチボールに混ざること、人に期待されること、人に期待すること、そして恋をすること。優しくて臆病で人に隠れて泣く君は、蔑まれて、気を使われて、気を使って、しようの無い問題に頭が痛くなるほど考えてきたんだろう。

そうして今の君がある。


人の顔には内面が映し出されるという。

普通の人よりも何倍も自分について他者について考えて人生について苦悩してきた君の顔は優しく臆病で美しい、だから君の顔が好きだ。

こんなことを書いたら君は気に障るかもしれないけれど左腕がなかったから宝石のように気高く磨かれた君が形作られたんだよ。


僕は君だから片腕の君が好きなんだ。











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