金魚

 何十年振りだろうか。

 帰省した娘家族に連れられて、隣町の祭りにやってきた。

 やぐらから流れる曲が懐かしく、

 ふと 踊りの輪を見ると、

 朝顔が咲いていた。青い朝顔の花咲く、浴衣ゆかた臙脂えんじ色の半幅帯はんはばおびが、尾っぽのように跳ねていた。

 ああ、

 あの下駄の蹴り方。そろった指先。流れる視線。


「じいじ。氷買って」

 と、ねだる孫の声も聞こえないほどに、

 彼女の踊る姿から目が離せない。

 赤い兵児帯へこおびが思い出される。





 それは、ボクの追い求めた金魚だったのかもしれない。



 

 


 ……と。




















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