築ノ宮さん
ましさかはぶ子
築ノ宮さんのおはなし その1
1.マナー教室
マナー講師が言った。
「バナナを出されたら
フォークで押さえながら両端を切り落とし、
真ん中で切り分けたら、
それらを使って皮をむいて、
一口大に切ってフォークで食べましょう。」
築ノ宮さん、バナナを掴み手で皮をむいて
ぱくぱく。
「つ、築ノ宮さま……、」
マナー講師、ぽかん。
「美味しいですよ、皆様もどうですか。」
にっこり。
普通はデザートにバナナ一本なんて出しません。
プライドにかけてすげえの作るぜ!
by.パティシェ
2.納豆
テレビで、
『納豆は100回ぐらいかき混ぜると美味しいですよ。』
築ノ宮さん、画面を見つめる。
近くのスーパーで3パックの納豆と心太を買いに行く。
夏は心太。黒蜜な。三杯酢はむせるから。
レジの女性方、密かに大騒ぎ。
そして夕ご飯にきっちりと100回かき回して食べるが
よく分からない。
「ふわふわですね。」
そしてテレビで納豆は夜食べた方が良いらしいと聞いて
ニヤニヤする。
3.ボディシート
外から帰ったら渡辺さん(築ノ宮の秘書。ベテラン。)が
「体をお拭きになって下さい。」
と爽やかクール!と書かれたボディシートを渡した。
その日は暑かったので、気を使ってくれたのだろう。
執務室でボディシートで体を拭くと気持ちが良い。
さすが渡辺さんと思ったら、
次に行ったのは冷凍倉庫での仕事だった。
なんか出たとかで調査。
「渡辺さん、次はスースーしないものをお願いします。」
築ノ宮さんは渡辺さんに言った。
4.扇風機
今日は少し暑い。
でもクーラーをつけるほどでもない。
部屋にあるのは扇風機だ。
近づいて顔に風が当たると気持ちが良い。
「あー、あーーーー、あーーー、あーー、」
思わず声を出した。
「我々は宇宙人だーーーー、あーーーー、」
部屋には築ノ宮さん一人。
誰でもやる。
誰でもやるんだと築ノ宮はさんは思う。
一度はやるよね?
5.忙しい人
築ノ宮さんははっきり言って毎日ものすごく忙しい。
我々が想像する忙しさの5倍ぐらいだ。(当社比)
たまの休みにはショッピングモールに行って
思う存分カプセルトイを買うのが趣味。
築ノ宮さん、元々ものすごい金持ち。
その上お金を使う暇もないので貯まる一方。
だからどんなにカプセルトイを買っても痛くもかゆくもない。
一時買わなくなったが(桜色の樹を読むと分かる。暇なら読んでね。)
やっぱりカワイイものが好きなので買っている。
ストレス解消だしぃ。
まあ被ったものを渡辺さんに渡すと
色々な人が持って行くようなのでまあ良いかと思っている。
だが何故か自分がいらないなあと思ったものの方が
人気があるらしい。
どうしてなのかと首をひねる築ノ宮さん。
こんなに可愛いのにと
モズのはやにえのラバーマスコットを見て
にやにやする築ノ宮さん。
私もそれ好きです、欲しいのよ。
5.ティッシュ
『ティッシュを半分に切ってケースに入れると
節約になりますよ。』
テレビでそのようなことを聞くと試したくなる築ノ宮さん。
なのでさっそくティッシュを箱から出して
全部半分に切った。
かなり几帳面に切って、
「美しいですね。」
と満足気。
そしてティッシュを出した箱を半分に切って組み合わせ、
切ったティッシュを入れて出来上がり。
「案外とちゃんと取り出せますね。」
と何枚か切ったティッシュを出して確かめたが、
築ノ宮さん、はっと気が付く。
残った半分は何に入れれば。
余分な箱なんてどこにもない。
使い切ったらすぐに畳んで処分しているのだ。
途方に暮れる築ノ宮さん。
「あの、渡辺さん……。」
翌日渡辺さんが会社に空箱を持って来てくれる事となった。
豪華な執務室の豪勢な机の上で
箱を半分に切ってティッシュを詰める築ノ宮さん。
元々ティッシュケースは置いてあり、
ちゃんと周りに合わせた色のカバーがかけてある。
だが半分に切ったティッシュケースはむき出しのまま。
部屋から浮き上がる花模様。
目立つ、目につく、もうすぐ来客だ。
だが築ノ宮さんは満足げ。
「SDGsですよ。」
まあ良いか、と渡辺さんはお客さんに扉を開けた。
6.スーパー
築ノ宮さんは時々スーパーで買い物をする。
家の近くにペリーペリーと言うスーパーがあり、
ローカルスーパーなので
見たことがないものが売っている。
築ノ宮さん、大金持ち。
実は家政婦さんもいてご飯とか掃除とか
なんでもしてもらっている。
それでも築ノ宮さんはスーパーに行く。
面白いから。
その日は閉店間際だったので
お惣菜が安くなっていた。
そこはローカルスーパーなので
お惣菜も個性的。
結構人がいてお惣菜の取り合い。
何となくその中に紛れて築ノ宮さんも
つい買ってしまう。
「もう、築ノ宮様、
そう言うものを買って来られるなら言って下さいよ。」
帰って家政婦さんに見つかり少し愚痴られる。
「すみません、でもなんか美味しそうで。」
一緒に買ったのはプリン。
底をぷちんとするやつ。
「どうですか、一緒に食べませんか。」
と結局家政婦さんも一緒にお惣菜を食べる。
「あら、美味しいわ。」
「でしょ?」
「あのスーパーは私も行きますが、
なかなか革新的なお惣菜を作りますよね。」
「食後にはプリンを食べましょう。」
築ノ宮はにこにこしている。
非常に優しい雇い主ではある。
しかし、午後9時近くにプリンとは。
体重が、と気になる家政婦さん。
築ノ宮さんは太らない
ちぃーーーーっと思いつつ、
築ノ宮さんをがっかりさせたくないので
食べる家政婦さん。
主人思いの大変優しい家政婦さん。
明日のご飯は控えめにしなければと思う家政婦さん。
夕飯もお惣菜もしっかり食べて
どうして築ノ宮さんは太らないのか
彼女には永遠の謎だ。
7.スーパー 2
スーパー・ペリーペリーのマスコットキャラクターは
ブルーベリーのベリーちゃんだ。
ちなみにペリーペリーの由来は
とてものVeryをもじってペリー、
それを二つ重ねてとってもすごいよ!で
ペリーペリーだ。文法無視。
この辺りしかないローカルスーパーだ。
築ノ宮さんは面白いのでたまに買い物に行く。
そしてちらと所々に貼ってある
ベリーちゃんのシールを見る。
欲しいなあと。
築ノ宮さん、小さくてカワイイものが好き。
スーパーの片隅にベリーちゃんのぬいぐるみの
UFOキャッチャーがあり、
3種類ほどのベリーちゃんがいる。
既に全て手元にある。
以前2種類は金に飽かせて必死で取った。
どうしても自力で取りたかったので頑張った。
2種類はどうにか取ったが
あと1種類がどうしても取れない。
築ノ宮さん、ものすごいお金持ち。
何時間も粘る築ノ宮さん。
レジのおばさんが見かねて店長さんに相談。
店長さんはこっそり築ノ宮さんを呼んで
裏でもう1種類を築ノ宮さんにあげた。
いや、贔屓でなくお金使い過ぎなのよ。
店からすれば無問題、一つあげても全然良いの。
全く金持ちはよ、ちっ。
とても嬉しそうな築ノ宮さん。
店長に頭を下げて店長もいい気分。
レジのおばさんにもにっこり微笑んで頭を下げた。
レジのおばさんもいい気分。
築ノ宮さんが嬉しかったらみんな平和。
嬉しくて世界平和。
ベリーちゃんサイコ―!
8.絆創膏
築ノ宮さん、怪我をする。
鼻の頭に擦り傷。
大した事ない。
仕事柄意外と怪我すること多い。
医者「絆創膏を貼りますよ、二、三日そのままにしてくださいね。」
(いたずら坊主みたい。)
渡辺さん「今日のご予定ですが……、」
(いたずら坊主みたい。)
高級車の運転手「出発します。」
(いたずら坊主みたい。)
ヒナトリ「なんだお前、いたずら坊主みたいだな、ゲラゲラ。」
築ノ宮さん「うるさいですね、ただの擦り傷ですよ。」
でも何だかすっきりした築ノ宮さん。
9.アイスクリーム
遊園地で毎夜異常現象が起きるので調査依頼が来た。
何かがいるのは確かだが何故か捕まらない。
「一度私が行きましょうか。」
と築ノ宮さんが出掛けてみる。
その現場に行く途中で築ノ宮さんは聞いた。
「どこで起きるんですか?」
「主に売店です。
売店は沢山あるのですがどこでも
アイスクリームのケースが壊されるんですよ。
なのでアイスが溶けてしまうらしくて。
そしてソフトクリームの機械も壊されるようです。
なので損失が無視できなくなったそうです。」
築ノ宮さんは少し考える。
「あの、スーパーに寄って頂けませんか。」
スーパー・ペリーペリーでアイスを大量に買い、
保冷ケースとドライアイスを借りる。
「急で申し訳ありません。
明日にはお返しに上がりますので。」
築ノ宮さん、ここではちょっとした顔なので
借りる事が出来た。
その荷物を持って遊園地につく。
そこにはあらかじめ白装束の人と遊園地の偉いさんが何人かいる。
もう閉園時間なのでお客さんはいない。
「よく物が壊される売店はどこですか?」
築ノ宮さんが言うと偉いさんが案内をしてくれた。
「では皆さん、アイスはいかがですか?
お好きなものをどうぞ。」
築ノ宮さんは買って来たアイスを出した。
皆は保冷ケースを覗き込んで不思議そうな顔をしている。
だが築ノ宮さんはにこにこ。
皆はとりあえず自分が好きなアイスを取り出し食べ始めた。
そして築ノ宮さんはケースに手をやおら突っ込み、
何かを掴んだ。
そしてぶらーんとぶら下げたのは小さな鬼の腕だった。
そこには小鬼がいた。
皆は恐怖で声を上げたが小鬼は怒ったように言った。
「だって好きなもの取って良いって言っただろ!」
その瞬間皆は驚いたがげらげらと笑い出した。
だがすぐに遊園地の偉いさん達は静かになる。
「あれ?どうして笑ったのか……、」
皆はきょとんとした顔になる。
築ノ宮さんと白装束の人達は知らん顔をしてアイスを食べている。
「早く食べないと溶けてしまいますよ。」
築ノ宮さんがにっこりと笑うと皆は慌てて食べ始めた。
「遊園地の方には白装束からもう何も起きませんと
説明していただきました。
一応鬼の姿は忘れるよう暗示もかけました。」
執務室で渡辺さんが言う。
そこのソファーには小鬼が嬉しそうに
アイスを食べながら座っていた。
その横には築ノ宮さんが同じようにアイスを食べている。
「はい、ありがとうございます。
渡辺さんもどうですか?」
「いえ、私はもう夜中なので食べません。」
小鬼はアイスを食べてしまったようで
築ノ宮さんを見て言った。
「兄ちゃん、もういっこ食べて良い?」
「良いですよ、でもお腹は大丈夫ですか?」
「おいら平気だよ、今まで全然食べられなかったからさ。」
「食べたくてアイスが入った入れ物を壊したのですか?」
「うん、でも全然開けられなくてさ、
あの白くてふわふわのくるくる回す奴は
夜になったら中身が無くて、だから腹が立って壊したよ。」
築ノ宮さんが小鬼の頭を少し押さえた。
「壊してはだめでしょ?」
「でもさあ、」
「それで困った人がいたんですよ。
だめですよ、そんな事をしては。」
「……そうなの?」
子どもは鬼だ。
人とは感覚が違う。
築ノ宮さんは渡辺さんを見た。
「明日、スーパーにお借りしたケースを
丁重にお返し願いますか。」
「はい、同時に今度の会議の時の
お客様用のお菓子を注文してきます。」
「そうしてください。
あのお店には大変お世話になっているので。」
築ノ宮さんは鬼の子を見た。
子どもは次のアイスにかじりついていた。
「明日は私はお休みなのでこの子を聖域に連れて行きます。」
「あら、よろしいんですか?久し振りのお休みでしょ?」
「そうですが、たまには父上に会いたくなって。」
渡辺さんはにっこりと笑う。
「博倫様ですか、それはそれは。よろしくお伝えください。」
「はい、ありがとうございます。」
翌日の早朝、鬼の子は寝ぼけ眼で築ノ宮さんの車に乗せられた。
鬼の子は子ども服を着て帽子をかぶっている。
「眠いよ、兄ちゃん。」
「遠くまで行きますから、車の中で寝て良いですよ。」
「行きたくないよ、おいら。」
と言っても鬼の子はもう逃げられない。
昨夜から築ノ宮さんの
「途中で白くてくるくるしたもの買いましょうか。」
小鬼の目がきらりと輝く。
「ホント?」
「本当ですよ、あれはソフトクリームと言うのです。」
「ソフトクリーム……。」
車は順調に走り、途中でサービスエリアに入った。
築ノ宮さんは鬼の子と手を繋いで売店に行った。
様々な人がソフトクリームを手に持っている。
それを鬼の子が見上げていた。
築ノ宮さんはふっと笑う。
「さあ、どれが良いですか?
白いのはバニラです。茶色はチョコ、イチゴもありますね。
抹茶は、少し苦いかも。」
しばらく鬼の子は写真を見ていた。
「このチョコって美味しいの?」
「美味しいですよ、甘いです。」
「うーん、どうしようかな。白いのも食べたいし。」
「ならミックスはどうですか。」
「ミックス?」
「白と茶色を半分ずつです。」
「……それにしようかな。」
築ノ宮さんはそれを二つ頼んだ。
午前の光は明るい。
二人はベンチに座りそれを食べ始めた。
「でもどうして遊園地にいたのですか?」
ソフトクリームを食べながらちらと
鬼の子は築ノ宮さんを見た。
「あの、親と喧嘩した。」
「喧嘩ですか。」
「うん、だからこっちに来てぶらぶらしてたら
面白そうなところがあったからさ。」
それは遊園地の事だろう。
「みんながなんか食べてるからそれを見てたんだよ。
夜になって食べたいなと思ったら固い箱に入ってるし。
白いの、このソフトは機械の中には中身が無いし。」
築ノ宮さんはふっと笑う。
家庭の問題でこの子は家出をしたのだろう。
人も鬼の世界も変わらない。
「でもやっぱり物を壊してはだめですよ。
それにご両親もきっと心配していますよ。」
「……うん。」
「こちらで一人でいて楽しかったですか?」
鬼の子は少し俯く。
溶けかけたアイスが一滴下に落ちた。
「あんまり……。」
築ノ宮さんが鬼の子の手を少し支えた。
「アイスが溶けていますよ。早く食べた方が良いです。」
「あ、うん。」
鬼の子は急いで食べ始めた。
そして二人は食べ終わる。
「じゃあ行きましょうか。」
築ノ宮さんは立ち上がり、それを鬼の子は見上げた。
「帰りましょう。」
「うん。」
鬼の子ははっきりと返事をした。
車はやがて聖域に着き、二人は桜の樹の下まで歩いた。
そこには鬼の子の両親が待っていた。
少し離れた所で築ノ宮さんと鬼の子はその二人に気が付いた。
鬼の子は一瞬立ち止ったが、
築ノ宮さんは鬼の子の背中をポンと押す。
鬼の子は築ノ宮さんを見た。
築ノ宮さんは笑っている。
すると鬼の子はだっと親の方に走り出した。
その両親は少し泣いているようだった。
そして築ノ宮さんに向かって何度も頭を下げた。
築ノ宮さんもそれを返す。
鬼の子も彼に手を振っている。
そして顔を上げると彼らの姿は消えていた。
桜の樹は緑の葉を茂らし広々としている。
彼はその下に行き腰を下ろした。
静かに風が渡る。
葉が微かな音を立てる。
「私の子どもがいたらあれぐらいの齢だったでしょうか。」
彼は呟いた。
「会えるでしょうかね。ねえ、父上。」
言葉は何もない。
だが爽やかな自然の香りがする。
優しい香りだった。
あとがき
クローズ・西村川を見直しているフプッw最中に
ボロボロと築ノ宮さんの話が出てきました。
いわゆる推敲って苦手なんで、と言うか
途中から逃げたくなります。
何をやっているのか分からなくなるのですよ、情けない事に。
書いている時に一発で文章をキメれば良い話ですが、
そんな能力もないのにだらだら文を書いて、
誤字脱字奇妙な文章だらけで絶対推敲しなければいけないのに、
やりたくないから別の文章を頭で考えているのです。
いわゆるテスト前に家の掃除をするものでしようか。
逃避ですよ。
で築ノ宮さんは大変わたくしの助けになっています。
作家の方がキャラが勝手に動くと言いますが、
それが私には築ノ宮さんです。
動き過ぎてこのような話が出来ました。
そして私は築ノ宮さんのおかげで気が付く事が出来ました。
私は体はボロボロの腰が痛いし持病ありの大人、
心は精神弱々オタクなのですが ダカラ イジメナイデ、
この齢で自分自身について新しい発見があるとは少し驚いています。
それは超絶良い男に納豆を100回かき回せたり、
値引きされた総菜を買わせたりと
妙な事をさせたいと言う欲望があるのです。
格好良い事じゃないの、そう言うの。
ぷっちんなプリンを買わせたりとかいいわねぇ。
本編ではゼリーを買わせてやったわ、ふふふ。
そう言うの想像してにやにやするの。
テレビのバラエティの戦闘中に出て来る忍を連れ歩いて、
スーパーで買い物をした後に荷物持ちして欲しいという願望も
それに含まれるかもしれません。
重い物持ちたくないしな。
なので文章を書き物を表現すると言う事は、
自分の知らない自分を発見する一つの方法かもしれません。
新しい自分は歳に関わらず
いつでもどこにでも現れるのです。
そう言う事で、お暇なら他のものも読んでね。
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