一億年の友情
「ぐすんっ!おかしくない・・・なんでもう・・・目覚めるのよ・・・・・・」
「良いじゃない。オーリス様が目覚めて私達が損する事なんてないでしょう。」
「私の危機察知が悲鳴をあげるのよ!!」
此処はヤヨイの森。
ディアスティアはヤヨイに愚痴をこぼしにやって来ていた。
この二匹は冬眠中の者達を守護する役割を担っていた同士である為、一億年間交流し続けていた。
その為、一億年来の親友となっていた。
一年に何度も此処に訪れては果物を摘みながら飲み食いするのが、ディアスティアの日常となっていた。
「そんなに怖がる必要性あるかしら?・・・オーリス様は確かにいつか食われるんじゃないか?という恐怖は常にあるけど・・・あの方は馬鹿じゃないのよ。有用な私達を食べる筈ないでしょう。」
「・・・・・・それは分かっているけど、あれのトラウマっていうのは一億年やそこらで消えるほど柔じゃないのよ。」
「そんなに怖いの?実際にあったのは一億年前の冬眠させる時でしょう。」
「・・・私は一方的に見た事はあるのよ。・・・矮小な私なんて眼中になかったのでしょうけどね!」
「いや・・・それは聞いたけど、1度目はともかく、2度目は眼中になくて良かったでしょう。地上を凍らせまくっていたのが貴方だって知っていたら、・・・ディア、喰われてこの場にはいなかったわよ。」
一億一千万年以上前に起きた氷河期で此処らへんが異常に凍った原因はディアスティアだった。
オーリスが深海にたどり着いたのを気配で確認してからずっと、自然と凍りついているように徐々に氷の厚さを増やしていたのだ。
約10000メートルの氷の厚さに安心したディアスティアは氷の上で惰眠を貪りながら、オーリスのいない世界を享受していた。
そんな期間を一千万年ほど楽しんでいたら、氷の奥深くにいるオーリスの気配が爆発的に増大している事に気がついた瞬間、気配を極限にまで氷に溶けこましてやり過ごしていたのだった。
まさか、大地も、氷も、空すらも喰らいつくして地上に再び現れるとは思ってもみていなかった。
もし、この時ヤヨイが言った通り、オーリスがディアスティアに気がついていたら、抵抗虚しく喰われていたのは想像に固かった。
急いで、氷を走らせて反対の極南に行ったのである。
「それにしても、ディアも世界で三番目くらいには強いんだから、そんなに怖がる必要ある?」
「・・・・・・その一番と三番には天と地の差以上の途方もない差がそこにはあるのよ。所詮、私は弱者の中の強者でしかないのよ。」
「貴方の格も中々だと思うけど?」
「ヤヨイには分からないわよ。・・・あのオックートですら、オーリスからしたら弱者でしかないのよ。その下の私なんて餌でしかないのよ。」
こうもディアスティアがオーリスに対してビクビクしているにはトラウマ以外に理由があった。
それはこの星で唯一の鹿という点だった。
「なら、さっさと子供を作りなさいよ。・・・いつも言っているじゃない。素敵な旦那が欲しいって、貴方が言う哺乳類っていうのも誕生しているわよ。」
「私は!ネズミとなんて子作りなんてしたくないのよー!・・・ヤヨイ。貴方は男性になれない?」
「キモい事言わないでよ。それに私の姿は思念体に肉付けされただけで、もし男性になれても生殖機能はないわよ。・・・前世持ちって大変ね。」
ディアスティアはオーリスやオックートと違い、前世の知識だけじゃなく記憶もハッキリと残った状態で転生していた。
その為、魚だった時から魚と交尾なんて無理!と拒否し続けて来たのである。
今でも恐竜やネズミとなんて交尾出来るか!と拒否しているのである。
「貴方達みたいな前世持ちって他にいないのかしら?」
「・・・居たんじゃない?スコーピオンは何匹かそれってぽいのを食べたって言っていたし、オーリスも絶対食べてるだろうから。生き残ったのは私達だけね。」
ディアスティアはどうでも良さそうに答えた。
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