第三章 アクティビティ
第1話 快挙
翌朝、目が覚めた時にはイグジストはベッドにいなかった。
ただ、彼の体温がまだ敷布に残っているだけだ。
それでもセーフティブランケットなしでも昨夜は眠れた。そんな自分が信じられない。快挙でしかない。
ベッドを下りて部屋中を呼んで回ったが、彼の姿は見当たらない。
「おはようございます」
「ねえ、イグジストは?」
居間の方の扉を開けて入ってきたのはイグジストではなく側近のアマカだった。
「殿下は政務に就かれておられます。朝食は蓮様とご一緒に過ごしたいとのご要望でしたので、その前に政務に就かれたことと存じます」
「なんだ。一日中することも何もなくて暇すぎで死にそうみたいに言ってたくせに」
「イグジスト様は驚異的な速さで決議を行います。ですので殿下にとって政務は退屈な仕事でしかないでしょう」
アマカは寝所と居間のカーテンを開けながら苦笑した。
「お食事の支度に入ってもよろしいですか?」
「ああ、うん」
「それでは失礼致します」
扉を開け放たれた廊下に向かい、アマカが目くばせすると同時に数人の使用人が入ってきた。
昨夜も使った四人掛けのテーブルに真っ白なクロスをかけて、中央には数種の花束が活けられた生花が飾られた。そして椅子の正面に置き皿と取り皿が二枚重ねで置かれると、純白のナフキンがその上に添えられた。
カトラリーの数は昨夜の夕食よりは数が少ない。また、ワイングラスの代わりに角ばったグラスが右手前方向に用意された。これは水やジュースなどのソフトドリンク用のグラスだろう。
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