第14話 高校時代
高校生の時、一番好きな場所は図書室だった。
小説を読むのが好きで、授業中にこっそり読んで叱られたこともある。
新しい本が出たらわくわくした。古典や時代小説、外国の本でも、物語ならなんでも読んだ。
図書室へ行くと、よく見かける生徒がいる。隣のクラスの男子で
三年間、同じクラスになったことはなかったけれど、いつも、図書室で顔を合わすうちに顔なじみになった。そのうち、西野の方から声をかけて来てくれた。
暁生、と呼ばれるようになるまで、そんなに時間はかからなかった。
暁生は人見知りをする方だったので、声をかけられた時、すごくうれしかったのを覚えている。
自分のようなおとなしい生徒に声をかけてくれる。親切な人だと思っていた。
守は部活にも入っており体格がよかった。暁生のようなほっそりとした体つきとは逆に、背が高かったせいもあり、バレー部のキャプテンもしていた。
いろんな思い出を23歳になっても、暁生は瞬時に思い出すことができた。
その西野守が今、目の前にいる。
暁生は茫然として、高校時代の同級生と対面していた。
「久しぶり」
男らしい声で守が笑顔で自分を見ている。
「びっくりした。まさか、こんなところで会えるなんて」
守が小声で言った。
そう、ここは、図書館である。
暁生は、月に二三回、図書館に通い、小説を借りている。雑誌は時々買うのだが、増えて困るので借りることもしていた。
今まで一度も会うことはなかったのに、たまたま好きな作家の本を手に取っていると、肩を叩かれて振り向くと、守が立っていた。
守は、あの頃と変わっていなかった。
筋肉質の体。短く切った髪の毛。さわやかな顔は、どこから見てもかっこいい。
「なあ、せっかくだからお茶しないか?」
暁生は断ることもできず頷いた。
すると、彼はうれしそうににこっと笑った。
胸がドキッとした。
久しぶりの再会。
高校時代、彼は、暁生が付き合った、たった一人の恋人だった。
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